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1994年11月にアーケード版がリリースされた『バーチャファイター2』(以下、VF2)は、当時セガの看板ともいえる人気3D格闘ゲームでした。
その移植となるセガサターン版VF2は早い段階で発表されたものの、実際の発売日はセガサターン本体発売(1994年11月)の約1年後、1995年12月1日となります(北米版は同年11月30日)。
アーケードで一大ムーブメントを巻き起こしたタイトルの家庭用移植とあって、当時のファンたちは発売を今か今かと待ち望んでいたと言われます。
機種 | セガサターン |
発売元 | セガ |
発売日 | 1995年12月1日 |
価格 | 7,480円 |
ジャンル | 対戦型格闘ゲーム |
移植の意義はセガサターンの普及という観点からも非常に大きいものでした。VF2は日本国内でセガサターン初のミリオンヒット(累計約130万本)を記録し、本体販売の牽引役となりました。
世界累計でも180万本以上の出荷を達成し(2003年時点)、ライバル機プレイステーションの『鉄拳』シリーズなどと競う中でセガサターンの存在感を示すタイトルとなりました。
家庭でVF2を練習してからゲームセンターの対戦に臨むプレイヤーも多く現れたとも伝えられ、アーケードファン層の取り込みにも成功しています。
アーケード版VF2はセガの高性能基板「Model2」(アーケードゲーム用のシステム基板)を用い、当時最先端の3Dグラフィックス表現と滑らかな60fps動作を実現していました。
一方、セガサターンのハード性能はModel2には遠く及ばず複雑なアーキテクチャでもあったため、移植は容易ではないと見られていました。
実際、移植開発は難航したようですが、セガ(AM2研)の開発チームはこの技術的挑戦に果敢に取り組みました。
結果としてサターン版VF2は704×480ドットの高解像度表示と滑らかな60fps動作を実現しつつ、アーケード版に迫る完成度で家庭への移植を果たします。
グラフィック面では背景の一部オブジェクトを簡略化(アーケード版の豪華な3D背景を2D画像に置換)するなどの省略はあったものの、キャラクターモデルの再現度や操作感は申し分なく、当時としては驚異的な「ほぼ完璧な移植」と評価されました。
こうした技術的偉業により、VF2のセガサターン移植は家庭用ゲーム機でハイエンド3D格闘を楽しむ道を切り開いたのです。
ゲームシステム

基本ルールと操作体系
VF2はリング上で1対1の対戦を行う3D格闘ゲームです。
相手の体力をゼロにするか、リングから場外へ落とす(リングアウト)ことでラウンド勝利となり、規定ラウンドを先取した側が勝者となります。
操作系は非常にシンプルで、方向レバー+3ボタン(パンチ・キック・ガード)を組み合わせて多彩な技を繰り出します。
パンチ(P)は発生が速く連打やつなぎ技に有用、キック(K)はリーチや威力で優れ、ガード(G)は相手の攻撃を防御します。
レバーとの組み合わせで投げ技(相手近距離で方向+P+G)や特殊行動(しゃがみガード、ジャンプなど)も可能です。
またVF2は高さ判定が導入されており、上段攻撃は相手のしゃがみ状態に空振りし、中段攻撃は立ガードでのみ防げるなど、打撃の高さとガード姿勢の駆け引きが重要になります。
3Dならではの特徴
初代『バーチャファイター』で確立したとおり、本作でもキャラクターの位置関係は基本的に向かい合った2D平面上での攻防ですが、ステージ(リング)に壁はなく360度に空間が開けているため、常に背後のリングアウトの危険を意識した立ち回りが求められます。
攻撃を当てて吹き飛ばした相手をそのまま場外へ落とす「リングアウト勝ち」は本シリーズならではの戦術です
また3D表現を活かしたモーションの滑らかさや位置取りの駆け引きも魅力で、攻撃方向によって側面や背後から当てるといった戦略も存在します(側面から当てれば相手のガードを崩しやすい等)。
VF2ではまだ任意の横ステップ移動はできませんが、相手の攻撃をかわす際に微妙に軸をずらす動きや、一部の技で相手の背後に回り込む演出など、3Dならではの立体的な攻防が表現されています。
主要キャラクター紹介

VF2には新規参戦の2名を含む全11体(ボスキャラ1体を含む)のファイターが登場します。
ここでは各キャラクターの概要と代表的な必殺技を紹介します。キャラクターごとの戦闘スタイルや能力傾向も異なるため、最後に攻撃力・防御力・スピードの比較表も示します。
- 結城 晶(ゆうき あきら / Akira Yuki) – 八極拳を使う主人公格の中国武術家。近距離での打撃と投げ技を主体としたオールラウンダーですが、コマンド入力はシビアで上級者向けのキャラです。代表技は、高威力の二段突き攻撃「崩撃雲身双虎掌」(通称アキラスペシャル)、肩から体当たりする「鉄山靠」、素早い上段二段突きの浮かせ技など、どれも決まれば強力ですが高度な入力とタイミングが要求されます。
- パイ・チェン(Pai Chan) – 詠春拳がベースの中国拳法使いでラウの娘。素早い連続攻撃と機動力が持ち味で、反面一発の攻撃力は低めです。初心者にも扱いやすく、リーチの長い蹴り技「連環転身掃」、下段から崩す「掃腿(そうたい)」による連続コンボ、軽快な多段蹴りとスピードを活かしたコンビネーションが豊富です。
- ラウ・チェン(Lau Chan) – パイの父で虎燕拳の達人。鋭い打撃の手数と高い攻撃力を誇り、中~上級者に人気のキャラです。隙の少ない高速中段突き「連掌」、奇襲に使える飛び蹴り「鳳凰脚」、下段から素早く攻め立てる「連掌旋風腿」などが代表技。全体的に技の発生が早く、攻撃に特化した性能でラッシュをかけるのが得意です。
- ウルフ・ホークフィールド(Wolf Hawkfield) – 元プロレスラーのカナダ人キャラクター。巨体と怪力を活かした投げ技主体のパワーファイターです。ダメージの大きい投げ「ジャイアントスイング」は相手を掴んで遠心力をつけて投げ飛ばす豪快な技で、リングアウトも狙えます。その他、後方から抱え上げて叩きつける「ジャーマンスープレックス」、カウンター狙いの「ショルダーアタック」も強力。動きは重いですが一発逆転力に優れ、投げ間合いに持ち込めれば猛威を振るいます。
- ジェフリー・マクワイルド(Jeffry McWild) – 漁師でもある南国出身の黒人ファイター。相手を担ぎ上げる投げ「パワーボム」や、頭突き攻撃「ヘッドバット」、カウンターを取りやすい「スマッシュアッパー」などパワフルな技が揃います。ウルフ同様に重量級で機動力は低いですが、リーチの長い打撃と高威力の投げを兼ね備え、接近戦で圧倒的な火力を発揮します。
- 影丸(かげまる / Kage-Maru) – 戦う忍者という異色の存在。素早い身のこなしとトリッキーな技で翻弄する上級者向けキャラです。後方宙返り蹴りの「水車蹴り」は奇襲や避けに使え、相手を空中に放り投げコンボを叩き込む「弧延落」は決まれば爽快な大ダメージ投げです。総じてテクニカルな反面、使いこなせれば多彩な攻めが可能です。
- サラ・ブライアント(Sarah Bryant) – ジークンドー(截拳道)をベースにしたアメリカ人女性キャラ。華麗な連続蹴り技とバランスの取れた性能で人気があります。後方に宙返りしつつキックを叩きこむ「サマーソルトキック」は彼女の代名詞で、対空・切り返しに優秀です。素早い膝蹴り連打から回し蹴りにつなぐ「ニーキック」、連続中段蹴りの「ミラージュキック」なども持ち、攻守の切り替えがスピーディです。扱いやすさと奥深さを兼ね備えています。
- ジャッキー・ブライアント(Jacky Bryant) – サラの兄で、同じくジークンドー使いのアメリカ人レーサー。操作性が良く初心者にもおすすめのオールラウンドキャラです。上段から踵を落とす「かかと落とし」や素早い蹴り「サイドフックキック」で中距離から攻め、虎の尾を踏むような飛び蹴り「バックナックル」で奇襲するといった多彩な戦法が可能。攻撃の発生が速くスキも少ないため、徹底した横綱相撲で相手を封じ込める戦い方が強力です。
- 舜帝(しゅんでい)(Shun) – 中国拳法の酔拳使いで、酒杯を手に酔いどれスタイルで戦う翁(おきな)キャラ。独特の飲酒システムを持ち、試合中に酒を飲む(特定の技を当てる)ことで「飲酒ポイント」を増やし、一部技の性能を強化できます。ふらついた姿勢から不規則な攻撃を繰り出すため相手にすると厄介ですが、自身もスキが多く上級者向けです。代表技は、地面に寝転がって蹴るトリッキーな下段技、酔った勢いで繰り出す高速パンチ、そして飲酒行動そのものも重要な“技”と言えます。飲酒量が増えるほど攻撃力が上がり、一発逆転も狙えるロマンのあるキャラクターです。
- リオン・ラファール(Lion Rafale) – 蟷螂拳を使うフランス出身の少年ファイター。リーチは短めですが、小刻みで連続性の高い攻撃が持ち味でスピードに優れます。構えを低くして繰り出す上段避けの突進技、逆立ちになってキックを放つユニークな中段技、素早い下段蹴りから上段掌底につなぐ連係技などが代表的です。軽量級ゆえに吹き飛ばされやすい欠点はありますが、ヒットアンドアウェイ戦法やフェイントを駆使して相手を翻弄できます。
以上のように、それぞれのキャラクターが個性的な技セットと戦術を持っています。なお、アーケード版では乱入ボス扱いだったメタリックな人型兵器デュラル(Dural)も、サターン版では特定のコマンド入力により使用可能な隠しキャラとして登場します(攻撃力・防御力ともに全キャラ中トップクラスですが、対戦バランス上公式大会では使用禁止とされています)。
初心者におすすめのキャラクター
上記の中ではジャッキーやパイ、ラウあたりが操作も比較的簡単で初心者に向いています。
ジャッキーは扱いやすさと奥深さを兼ね備えた設計で、「初心者向けにデザインされたキャラ」とも言われ、ラウはシンプルなコマンドで強力な連係が可能なうえ火力も高く、基本を覚えるのに適したキャラです。
パイもスピードがあり多少のミスをごまかしやすいため、まず最初の1人として選ぶプレイヤーが多く見られました。
一方、晶(アキラ)やシュン、影丸などは高度なテクニックやキャラ特性の理解が要求されるため、上級者向けと言えます。
まずは扱いやすいキャラでゲームの基礎に慣れ、ゆくゆく難しいキャラに挑戦するのがおすすめです。
キャラ能力比較表
攻撃力・防御力・スピードという観点で各キャラクターのおおよその傾向を整理すると下表のようになります(★の数が多いほどその能力が高いことを示す、5段階評価)。
キャラクター | 攻撃力 | 防御力 | スピード |
---|---|---|---|
結城 晶 (Akira) | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
パイ・チェン (Pai) | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ |
ラウ・チェン (Lau) | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ |
ウルフ (Wolf) | ★★★★★ | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
ジェフリー (Jeffry) | ★★★★★ | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
影丸 (Kage) | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
サラ (Sarah) | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ |
ジャッキー (Jacky) | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
シュン (Shun) | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
リオン (Lion) | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ |
デュラル (Dural) | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
※デュラルは隠しキャラのボス性能であり、通常対戦での使用は想定しないこととします。
発売地域ごとの相違点
VF2のセガサターン版は日本を皮切りに北米・欧州など世界各地域で発売されましたが、地域ごとに発売時期やパッケージデザイン、市場での売上実績などに違いが見られます。
発売日とパッケージデザインの違い

日本国内版は前述のとおり1995年12月1日に発売され、当時の標準的なCDケース仕様で提供されました。
ジャケットアートにはVF2の登場キャラクター達が描かれ、タイトルロゴが大きくあしらわれています。

一方、北米版(英題: Virtua Fighter 2)は日本版より一日早い1995年11月30日にリリースされました。
北米セガサターンのパッケージは大型の長方形ケースが採用されており、VF2北米初回版では銀色のホログラム調パッケージが採用された点が大きな特徴です。
これは当時セガが自社のキラータイトルであったVF2(および同時期発売のSEGA Rally)に施した特別仕様で、店頭でひときわ目立つようデザインされたものです。
欧州版も基本的に北米版と同様のデザインコンセプトですが、各地域のレーティングマークがパッケージ表面に配置されています。
発売日は欧州では1996年1月にずれ込み、例えばイギリスでは1月5日、ドイツやフランスでは1月26日に発売されました。
パッケージアート自体は北米版と共通ですが、ケース仕様は欧州向けサターン共通のプラスチック製ロングボックスとなっています。
ゲーム内容の差異:
基本的にゲーム内容そのものは全地域版で大きな差はありません。
登場キャラクターや使用可能なモード、隠し要素も各地域版で共通です。強いて言えば、各リージョンの本体規格に合わせ表示解像度や動作周波数が異なる程度です(北米版はNTSC形式で60fps動作、欧州版はPAL形式のため上下に黒帯が入る代わりに解像度が多少高くなり50fps動作になります)。
また、ごく細かな調整として北米版ではデフォルト難易度が日本版よりやや低めに設定されているとの指摘もありますが、体感できる差ではありません。
ステージ背景やキャラクター表現における表現規制も特に報告されておらず、VF2は写実的な格闘ゲームではありますが流血や過度な暴力表現がないため、レーティングも日本では全年齢、北米ではティーン(13歳以上対象)、欧州では3+(3歳以上対象)と各地域で低い年齢区分となりました。
ただしドイツ版のみ当時のUSK基準で16歳以上対象とされています(ゲーム内容は同一です)。
売上実績の違い
日本国内においてセガサターン版VF2は累計約130万本を売り上げ、セガサターン史上初のミリオンセラーとなりました。
一方、北米市場では推定34万本程度、欧州市場では26万本程度と、日本ほどの爆発的ヒットには至りませんでした。
当時のセガサターン本体のシェアが地域によって異なっていたこともあり、VF2は日本でこそ社会現象的な人気を博しましたが、北米・欧州では競合ハード(PS1)の人気ソフトと拮抗するポジションとなっています。
それでも各地域でセガサターンを代表するタイトルの一つであることに違いはなく、例えば北米ではVF2がメガヒットしたことから年末商戦期に本体との同梱版が発売されたり、欧州でもサターン普及に貢献したタイトルとしてセガから公式に挙げられています。
その他の差異
日本版と海外版でゲーム中のボイス言語に若干の違いがあります。
日本版ではキャラクターの勝利時の台詞が日本語音声(一部中国人キャラは中国語)でしたが、北米版ではそれらに英語字幕が付加されています(音声自体は日本語のまま)。
また取扱説明書の内容やレイアウトも地域により異なり、日本版では技表やコマンド一覧がカラーページで詳しく掲載されていましたが、北米・欧州版マニュアルでは白黒印刷で簡素な技表に留まります。
パッケージ裏面のスクリーンショットやキャッチコピーも各言語に合わせて編集されています。
総じてゲームプレイに直結しない周辺部分でのローカライズ上の違いが見られる程度で、ゲーム本編はどの地域版でも同等の内容を楽しむことができます。
開発秘話・反響・影響
開発秘話・技術的挑戦
セガサターン版VF2の開発は、当時としても極めて野心的なプロジェクトでした。
開発を担当したのはアーケード版を生み出したセガAM2研のチームで、鈴木裕氏(VFシリーズの生みの親)らが全面的に監修しました。
最大の課題は前述のようにModel2基板の性能差をどう埋めるかという点。
開発陣はまずグラフィック表示に関して、サターンの高解像度インターレース表示モードを活用し描画解像度を704×480に引き上げました。
これによりポリゴンの輪郭が滑らかになり、キャラクターの刺繍や細部模様までも忠実に再現することに成功。
一方でポリゴン数そのものはアーケードに比べ削減せざるを得ず、特に背景は完全な3Dから事前にレンダリングした2D画像に置き換えるという大胆な手法が取られています。
さらに照明効果(ライティング)も省略し、全ポリゴンの明るさを一定にすることで処理を軽減しています。
これら数々の工夫によって、制作者たちは目標だった毎秒60フレームでの動作を達成しました。「アーケード版(Model2基板)が厳密には57.5fps駆動だったのに対し、サターン版はテレビ信号に合わせ60fpsで動作するため、ある意味アーケードより滑らかになっている」と当時指摘されたこともあるほどです。
また、わずか1年程の開発期間で完成にこぎつけるために、前作『バーチャファイターリミックス』で培われたノウハウやエンジンの一部流用も行われています。
当時の開発スタッフのインタビューによれば、「ポリゴン表示とアニメーションの最適化に社内の英知を結集した」と語られており、特にデータ読み込みの効率化や内部演算の並列処理などサターン独自のハード特性を限界まで引き出す工夫が凝らされています。
結果としてVF2の移植度は「完全移植」と謳われ、雑誌メディアも「もはや業務用と見分けがつかない出来」と絶賛されました。
当時のゲーム誌『セガサターンマガジン』では開発者インタビュー記事にて技術的裏話が多数掲載され、限界への挑戦ぶりが語られています。
メディアレビューとファンの反応
1995年末にVF2サターン版が発売されると、各ゲーム誌・評論家から軒並み高い評価を得ました。
週刊ファミ通のクロスレビューでは満点に近いスコアが付き、レビュアーからは「これぞ格闘ゲームの新基準」「家庭用の常識を超えたグラフィックと再現度」と賞賛されました(当時のファミ通満点=40点に対しVF2は平均で38~39点を獲得したとの記録があります)。
特に評価が高かったのはアーケード版さながらの滑らかな動きと美麗なビジュアルです。
発売日当日の秋葉原などゲームショップでは朝から行列ができ、購入後自宅に帰ったファンたちが画面写真をSNS(当時はパソコン通信や草の根BBS)にアップして「本当にサターンで動いている!」と驚きをもって報告し合ったというエピソードも残っています。
当時のファンの証言として、「パイやラウの衣装の刺繍までしっかり再現されていて感動した」「背景の簡略化など些細な違いにケチをつける人は皆無だった」という声があり、移植度の高さがいかに衝撃的だったかが窺えます。
また操作感についても「入力遅延が感じられずアーケードと同等」「ジョイスティックを用意すれば自宅がそのままゲームセンターになる」と評され、周辺機器のアーケードスティック(バーチャスティックなど)は品薄になるほど売れました。
一方で細かな不満点としては「一部キャラクターのポリゴンが簡略化されて角ばっている」「背景が静止画で味気ない」といった指摘もゼロではありませんでした。
しかしそうした声も「贅沢な要求」と受け止められる程度には、当時の基準で本作の完成度は突出していたのです。
総合的に見てサターン版VF2は「移植の手本」「家庭用格闘ゲームの金字塔」と称えられ、後年のメディアが選ぶ歴史的名作ランキングにおいてもしばしば上位に選出されています。
後続への影響:
VF2がもたらした影響は多方面に及びます。
ゲーム業界全体を見ると、VF2のヒットに刺激を受けて他社からも3D格闘ゲームが次々とリリースされました。
ナムコの『鉄拳2』など、ポリゴン技術を駆使したタイトル開発が加速した一因にVFシリーズの成功があります。
またVF2自体もその後のシリーズ発展に大きく寄与しました。VF2の時点で完成度が高まったゲームシステムは、後に派生作品『バーチャファイターキッズ』(キャラを2頭身化したコミカルアレンジ版)や他ゲームとのクロスオーバー作『ファイターズメガミックス』などにも流用・発展していきます。
VF2のキャラクターやステージは後年の様々なゲームでオマージュされ、例えば格闘ゲーム以外では『シェンムー』シリーズにミニゲームとしてVF2風のゲームが登場したり、近年では『龍が如く 極2』のゲーム内でVF2のアーケード版がそのまま遊べる形で収録されるなど、レトロゲームとして現在まで親しまれています。
さらにeスポーツ的な観点では、VF2は日本における対戦格闘ブームをさらに押し上げたタイトルでもあります。
ゲームセンターでのプレイヤー大会や攻略ビデオの発売、専門雑誌での連載攻略記事など、競技シーンを盛り上げる動きが活発化しました。
VF2の熱狂をきっかけにプロの「バーチャファイター使い」がメディアに登場し始めたのもこの頃です。そうした草創期の盛り上がりが現在の格闘ゲームコミュニティにも連なっていると言えるでしょう。
総じて、セガサターン版『バーチャファイター2』は技術面・市場面の双方で後世に与えた影響が大きく、家庭用3D格闘ゲームの礎を築いた作品として語り継がれています。
まとめ
1990年代中盤、3D格闘ゲームという新ジャンルの黎明期において、セガサターン版『バーチャファイター2』は家庭用ゲーム史に残る一作となりました。
アーケードの最先端ゲームを家庭に完璧に近い形で送り届けたその意義は計り知れません。
グラフィック表現や滑らかな挙動は当時のプレイヤーに鮮烈な印象を与え、セガサターンのキラータイトルとしてプラットフォーム自体の成功にも寄与しました。「バーチャ2が遊びたいからサターンを買う」——そんな声が多く聞かれたことが、本作の歴史的存在感を物語っています。
現代においてVF2を楽しむ方法もいくつか存在します。
オリジナルのセガサターン実機とソフトを用意するのが当時と同じ体験ですが、入手が難しい場合は後年の復刻版を利用する手があります。
2004年にはPlayStation 2用ソフト『SEGA AGES 2500シリーズ Vol.16 バーチャファイター2』としてVF2が移植発売されました。
このPS2版はアーケード版2.1をベースに細かな調整が施されたもので、自宅で手軽にVF2の対戦を楽しめます。
また、2012年にはXbox 360およびPlayStation 3向けに配信版VF2(オンライン対戦対応)がリリースされました。
こちらはアーケード版を忠実に再現した内容で、ネットワーク対戦が可能でした(※残念ながら2024年現在、配信版VF2は配信終了により新規入手不可となっています)。
そのほかにもセガのコレクション系タイトルにVF2が収録された例があり、たとえば『龍が如く』シリーズの一部作品ではゲーム内のミニゲームとしてVF2(アーケード版)を遊ぶことができます。
最新ハードでVF2自体の単独配信は行われていませんが、こうした形で名作として度々現行機に姿を現している点からも、その根強い人気がうかがえます。
そして2020年代の現在でも、VF2はレトロゲームファンのコミュニティで大会が開かれたり攻略情報が共有されたりと、現役さながらの盛り上がりを見せています。
当時を知らない新世代のゲーマーがVF2に触れる機会も増え、ポリゴンならではのゲーム性や奥深い駆け引きが再評価されています。
もし興味があれば、公式の復刻版やアーケードアーカイブス的な展開に注目しつつ、レトロゲーム配信や動画などでVF2の世界に触れてみてください。
四半世紀を経ても色褪せない名作『バーチャファイター2』は、これからも格闘ゲーム史に輝き続けることでしょう。