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『天外魔境 ZIRIA』は、1989年6月30日にハドソンから発売されたPCエンジン CD-ROM²用のRPGです。日本をモデルにした架空の国「ジパング」を舞台に、火の一族の末裔である自来也が、綱手や大蛇丸とともに大門教の野望へ立ち向かいます。フィールドを進みながら町で情報を集め、段を上げて敵と戦う王道的なシステムを採用している一方、独特な和風世界や個性的な登場人物によって、ほかのRPGとは異なる雰囲気を作り上げています。
本作は、CD-ROMを媒体に使用した初期の大作RPGとしても知られています。PCエンジン CD-ROM²の大容量を活用し、声優によるキャラクターボイス、アニメーションを取り入れたイベント、CD音源による楽曲など、当時としては規格外の演出を実現しました。坂本龍一が手掛けた楽曲も収録されており、後の『天外魔境II 卍MARU』へつながるシリーズの原点として、ゲーム史の面でも重要な作品です。
ただし、現在のRPGと比べると、エンカウント率の高さやロードの多さ、仲間が一人でも戦闘不能になると全滅する厳しい仕様など、遊びにくさを感じる部分もあります。その一方で、広大なフィールドや長大なダンジョン、白い神獣を解放して術を増やす成長要素などが用意され、歯応えのある冒険を楽しめます。本記事では、『天外魔境 ZIRIA』のストーリーや登場人物、ゲームシステム、評価された点と問題点、移植版、Xbox 360で発売されたフルリメイク版との違いまで詳しく解説します。
『天外魔境 ZIRIA』とは

『天外魔境 ZIRIA』は、1989年6月30日にハドソンから発売されたPCエンジン CD-ROM²用のRPGです。ハドソンとレッドカンパニーが開発を手掛けた「天外魔境」シリーズの第1作であり、後に続くシリーズの世界観や作風の基礎を築いた作品でもあります。
日本をモデルにした架空の国「ジパング」を舞台に、火の一族の末裔である自来也が、大門教によるマサカド復活を阻止するために旅立ちます。ストーリーは悪の勢力に立ち向かう王道的な内容ですが、実在の地名や歴史上の人物、妖怪、伝承などを独自の解釈で組み合わせた世界観が大きな特徴です。
『天外魔境 ZIRIA』の基本情報
| 項目 | 内容 |
| タイトル | 天外魔境 ZIRIA |
| 読み方 | てんがいまきょう ジライア |
| ジャンル | RPG |
| 対応機種 | PCエンジン CD-ROM² |
| 発売日 | 1989年6月30日 |
| 発売元 | ハドソン |
| 開発元 | ハドソン、レッドカンパニー |
| 発売時価格 | 7,200円(税抜) |
| シリーズ | 天外魔境シリーズ |
| 主人公 | 自来也(ジライア) |
ゲームの基本システムは、フィールドや町を移動しながら情報を集め、敵と遭遇するとコマンドを選んで戦うオーソドックスな形式です。段と呼ばれるレベルを上げ、装備や道具を整え、新しい術を覚えながら物語を進めていきます。
システムだけを見ると当時の一般的なRPGに近い作りですが、広大なフィールド、多数の町やダンジョン、音声付きのイベントなどが用意されており、全体のボリュームは非常に大きくなっています。分かりやすいゲームシステムと、CD-ROM²ならではの豪華な演出を組み合わせた点が、本作の魅力といえるでしょう。
天外魔境シリーズの第1作
本作は「天外魔境」シリーズの原点にあたる作品です。主人公のジライアをはじめ、ツナデ、オロチ丸、ホテイ丸、マントーなど、後のシリーズでも重要な存在となるキャラクターが登場します。
外国人が想像した日本という考え方をもとに作られた「ジパング」には、江戸、筑波、富士、信濃など、日本を連想させる地域が数多く登場します。しかし、実際の日本史を忠実に再現しているわけではなく、武将や剣豪、妖怪、神獣などが同じ世界に存在する独特な和風ファンタジーとなっています。
シリアスな場面だけでなく、勘違いや言葉遊びを使った会話、個性的な町の住人、大げさな言動を見せる敵など、コミカルな描写が多いことも特徴です。重い設定を持つ物語でありながら、明るいやり取りを挟むことで、長い冒険を飽きずに進められるように作られています。
CD-ROMを活用した大作RPG
『天外魔境 ZIRIA』は、CD-ROMを媒体として使用した初期の家庭用RPGとしても知られています。PCエンジン CD-ROM²の大容量を利用し、キャラクターボイス、アニメーションを使ったイベント、CD音源による楽曲など、当時のROMカセット作品では実現が難しかった演出を数多く取り入れました。
イベントではキャラクターが画面内を動き、声優の音声に合わせて物語が進行します。現在では珍しくない演出ですが、1989年当時の家庭用ゲームでは非常に新鮮であり、ゲームの登場人物がアニメ作品のように話して動くこと自体が大きな見どころでした。
音楽面では坂本龍一が音楽プロデュースに参加し、メインテーマを含む3曲を手掛けています。そのほかにも小久保隆をはじめとする複数の作曲家が参加し、和風の旋律と異国的な雰囲気を組み合わせた楽曲によって、ジパングの世界を表現しています。
一方で、CD-ROM²用ソフトの開発技術が十分に確立されていなかった時期の作品であるため、読み込みが頻繁に発生するという弱点もあります。それでも、映像、音声、音楽、物語を一体化させた本作の作りは、後の大作RPGを先取りしたものといえるでしょう。
王道的な物語と独特な世界観が魅力
物語の目的は、復活しつつあるマサカドを再び封印し、大門教の野望を阻止することです。主人公が仲間を集めながら各地の敵を倒し、最終決戦へ向かう流れは王道的で分かりやすく、難しい設定を理解していなくても冒険へ入り込みやすくなっています。
その一方で、ガマ、ナメクジ、ヘビの三すくみを取り入れた火の一族、海外の宗教を思わせる大門教、外国人宣教師のホテイ丸など、一般的な和風RPGには見られない要素も数多く登場します。
基本部分は遊びやすい王道RPGでありながら、世界観や登場人物、映像と音声の演出によって強い個性を持たせていることが、『天外魔境 ZIRIA』が長く語り継がれている理由のひとつです。
『天外魔境 ZIRIA』のストーリー

『天外魔境 ZIRIA』の物語は、日本をモデルにした架空の国「ジパング」の東部にあたる坂東地方を舞台に展開します。かつてジパングは、マサカドと呼ばれる強大な存在によって滅亡の危機にさらされました。マサカドは自らの理想郷を築くため、各地を破壊し、多くの人々の命を奪っていきます。
ジパングが闇に包まれようとしたとき、突如として現れたのが「火の一族」と呼ばれる者たちでした。火の一族の勇者たちはマサカドとの長い戦いに挑み、3つの玉の力を使って、その魂を地中深くに封印します。ジパングは平和を取り戻しましたが、激しい戦いによって火の一族の多くが命を落とし、その存在は次第に人々の記憶から忘れられていきました。
それから長い年月が流れた西暦17XX年、坂東地方では「大門教」と呼ばれる集団が勢力を拡大していました。大門教の教祖である邪神斎は、坂東を治めるショーグンに取り入り、各地で布教を進めていきます。表向きは人々を救う宗教として活動していましたが、その真の目的は、かつて封印されたマサカドを復活させ、ジパング全土を支配することでした。
火の一族の末裔・ジライアが旅立つ
主人公の自来也(ジライア)は、火の一族に属するガマ族の末裔です。筑波山に住むガマ仙人のもとで育てられ、剣術や術を学びながら暮らしていました。ジライアは、自分が火の一族の血を引く者であることを知り、大門教によるマサカド復活を阻止するために旅立ちます。
しかし、マサカドを封印するためには、ジライア一人の力だけでは足りません。かつてマサカドと戦った3人の火の勇者と同じように、ガマ族、ナメクジ族、ヘビ族の末裔が力を合わせる必要があります。ジライアの最初の目的は、坂東各地に散らばる2人の火の一族を見つけ出すことです。
物語の序盤では、ジライアは各地で大門教によって苦しめられている人々と出会います。大門教の幹部たちは、土地を支配するだけでなく、動物や怪物を操り、人々を捕らえ、魂を奪うなどの悪事を繰り返していました。ジライアは目の前で起きている事件を解決しながら、仲間と大門教に関する情報を集めていきます。
ナメクジ族の綱手が仲間になる
旅の途中でジライアが出会うのが、ナメクジ族の末裔である綱手(ツナデ)です。ツナデは怪力を持つ少女で、斧を使った力強い攻撃を得意としています。細かいことを気にしない明るい性格で、真面目に旅を進めようとするジライアとのやり取りには、コミカルな場面も多く描かれています。
ツナデは火の一族として重要な力を持っていますが、ナメクジ族であるため塩を苦手としています。こうした弱点は単なる設定として使われるだけでなく、物語や会話の中にも取り入れられています。シリアスな場面が続く中でも、ツナデの言動によって雰囲気が和らぐことがあり、パーティーのムードメーカーとしても活躍します。
戦闘では高い攻撃力と成長の早さが特徴で、ジライアとは異なる役割を担います。PCエンジン版では術を使用できませんが、その分、物理攻撃で敵に大きなダメージを与えられるキャラクターです。ジライアとツナデが協力することで、旅の戦力は大きく向上します。
ショーグンに仕える大蛇丸
もう一人の火の一族が、ヘビ族の末裔である大蛇丸(オロチ丸)です。オロチ丸は江戸のショーグンに育てられ、その配下として行動していました。そのため、火の一族としてジライアたちと戦うべきか、育ての親であるショーグンに従うべきかという迷いを抱えています。
オロチ丸は落ち着いた性格で、ジライアやツナデよりも冷静に状況を判断する人物です。一方で、看板娘に変装してジライアたちの前に現れるなど、意外な一面も見せます。真面目な役割を持ちながらも、天外魔境らしいユーモアを持つキャラクターです。
PCエンジン版では弓を使用し、敵を攻撃するだけでなく術も扱えます。ジライア、ツナデ、オロチ丸の3人がそろうことで、かつてマサカドを封印した火の勇者と同じ形が整い、本格的な反撃が始まります。
ガマ・ナメクジ・ヘビの三すくみ
ジライア、ツナデ、オロチ丸は、それぞれガマ族、ナメクジ族、ヘビ族の末裔です。この3つの種族には、ガマはヘビに弱く、ヘビはナメクジに弱く、ナメクジはガマに弱いという三すくみの関係があります。
PCエンジン版では、三すくみが戦闘の属性として強く反映されているわけではありません。主にキャラクターの性格や会話、種族ごとの設定に使われています。3人が集まった場面では、それぞれの苦手意識や相性が会話に表れ、物語をにぎやかにしています。
この三すくみは、江戸時代の読本などで知られる自来也、綱手、大蛇丸の関係をもとにしたものです。古い物語の登場人物をそのまま使うのではなく、火の一族という設定を加え、RPGの仲間として再構成している点も本作の特徴です。
坂東各地を支配する大門教十三人衆
ジライアたちの前に立ちはだかるのが、大門教十三人衆です。十三人衆は大門教の幹部として坂東各地へ送り込まれ、それぞれの土地で異なる悪事を働いています。人々を捕らえて魂を奪う者、動物を操って町を襲わせる者、食料や水を利用して人々を苦しめる者など、その方法はさまざまです。
十三人衆は単に強い敵として配置されているのではなく、それぞれに個性的な外見や性格、話し方が用意されています。恐ろしい姿を持つ者がいる一方で、欲深い商人や頭の弱い大猿など、笑いを誘う敵も登場します。
中でもマントーは、強力な術を持ちながらも考えが浅く、失敗を繰り返す憎めない敵です。本作で初登場した後も多くのシリーズ作品に登場し、天外魔境を代表する名物キャラクターとなりました。
ジライアたちは十三人衆を倒しながら、各地に封印された白い神獣を救い出していきます。神獣を解放することで新しい巻物を入手でき、使える術も増えていきます。物語の進行とキャラクターの成長が結び付いているため、地域を救うことがそのまま次の戦いへの準備になります。
大門教の本拠地・江戸を目指す
各地の大門教十三人衆を倒したジライアたちは、やがて坂東地方の中心である江戸を目指します。江戸ではショーグンが大門教の影響を受けており、町や城にも危機が迫っていました。
ショーグンは民を守ろうとする思いを持ちながらも、邪神斎に利用され、大門教の勢力拡大を許してしまいます。また、ショーグンに育てられたオロチ丸にとって、江戸での戦いは自分の過去や忠義と向き合う重要な局面となります。
邪神斎はマサカド復活の準備を進めており、ジライアたちが江戸へ近づくほど、敵の妨害も激しくなります。大門教十三人衆の幻王丸や水王丸をはじめとする強敵が立ちはだかり、火の一族の力を試す戦いが続きます。
マサカド復活をめぐる最終決戦
物語の終盤では、邪神斎が進めてきたマサカド復活計画の全貌が明らかになります。ジライア、ツナデ、オロチ丸は、かつてマサカドを封印した火の勇者の末裔として、ジパングの命運を懸けた戦いへ挑みます。
最終目的は、大門教の野望を阻止し、復活したマサカドを倒すことです。序盤から続いてきた火の一族の因縁、ショーグンとオロチ丸の関係、各地で出会った人々とのつながりが終盤の展開へ集約されていきます。
物語の流れ自体は、仲間を集め、各地を支配する敵を倒し、最後に大きな悪へ立ち向かう王道的な内容です。しかし、奇妙な敵や歴史上の人物を思わせる登場人物、独特な言葉遣い、コミカルなイベントを組み合わせることで、『天外魔境 ZIRIA』ならではの物語に仕上がっています。
シリアスな設定を持ちながら、重苦しさだけで進まないことも本作の魅力です。個性的な仲間や敵との会話を楽しみながら、長い冒険の末にマサカドとの決戦へ到達する構成は、天外魔境シリーズの原点にふさわしいものとなっています。
『天外魔境 ZIRIA』のゲームシステムと特徴
『天外魔境 ZIRIA』は、町や村で情報を集め、広大なフィールドを移動しながらダンジョンを攻略していくオーソドックスなコマンド式RPGです。映像や音声を取り入れた豪華な演出が注目されやすい作品ですが、ゲームの基本部分は分かりやすく、敵を倒して段を上げ、装備や道具を整えながら少しずつ行動範囲を広げていきます。
一方で、仲間が一人でも戦闘不能になると敗北扱いになる仕様や、全滅時に所持金が半分になるペナルティなど、現在のRPGと比べても厳しい部分があります。広いマップ、高いエンカウント率、長大なダンジョンも組み合わさっており、準備をせずに進むと苦戦しやすい作品です。
広大なフィールドを移動するBダッシュ
本作のフィールドは非常に広く、町から次の目的地まで長い距離を歩く場面があります。その移動を快適にするため、Bボタンを押しながら方向キーを入力すると、通常より速く移動できるBダッシュが用意されています。
現在では多くのRPGにダッシュ機能が採用されていますが、1989年当時の家庭用RPGでは、通常移動とは別に高速移動を用意している作品はまだ多くありませんでした。広い世界を冒険するゲームだからこそ、移動速度を上げられる仕組みが早い段階から取り入れられています。
ただし、フィールドでは敵との遭遇率が高く、ダッシュを使っていても何度も戦闘に入ることがあります。目的地まで急いでいるときでも戦闘を避け続けるのは難しいため、回復用の道具や術を準備してから遠出することが大切です。
素早さ順に行動するターン制戦闘
敵と遭遇すると、コマンドを選択して戦うターン制の戦闘へ移行します。選択した順番のまま行動するのではなく、基本的には敵味方の素早さをもとに行動順が決まります。そのため、回復を選んでいても、回復役が動く前に敵の攻撃を受けてしまう場合があります。
戦闘では通常攻撃のほか、術、道具、キャラクター固有の行動などを使い分けます。敵の攻撃力が高い場面では、単純に攻撃を続けるだけでなく、回復や補助を早めに選ぶ判断が必要です。
敵キャラクターは戦闘中にアニメーションするため、当時のRPGとしては見た目にもにぎやかな戦闘となっています。一方で、敵との遭遇率が高いこともあり、何度も同じ敵と戦っているとテンポの遅さを感じることがあります。豪華な演出と戦闘時間の長さが表裏一体になっている点は、本作を遊ぶうえで覚えておきたい特徴です。
レベルにあたる「段」を上げて成長
『天外魔境 ZIRIA』では、一般的なRPGのレベルにあたる数値を「段」と呼びます。敵を倒して経験値を獲得し、一定の値に達すると段が上がり、体力や攻撃力などの能力が成長します。
段が上がったときの能力上昇は完全なランダムではなく、キャラクターごとにあらかじめ決められています。そのため、同じキャラクターを同じ段まで育てた場合、能力に極端な差が生まれることはありません。
キャラクターによって成長速度にも違いがあり、ツナデは比較的段が上がりやすく、途中でジライアの段を追い越すこともあります。キャラクターごとに武器や役割が異なるため、単純に段の高さだけで強さが決まるわけではありません。
終盤になると敵から得られる経験値が増えるため、苦戦している場合は無理に先へ進まず、周辺で段を上げてから再挑戦する方法が有効です。こちらの段が敵より大幅に高いと、敵が逃げ出したり、敵の攻撃が当たりにくくなったりするため、育成による効果を実感しやすくなっています。
白い神獣を解放して巻物を入手
ジパング各地には、「白ガマ」「白ヘビ」「白ザル」など、人語を理解し神通力を持つ白い神獣が存在します。しかし、大門教の幹部によって封印されている神獣も多く、ジライアたちは各地の事件を解決しながら神獣を救い出していきます。
白い神獣を解放すると巻物を受け取ることができ、新しい術が使えるようになります。町でお金を支払って術を購入するのではなく、物語やダンジョンの攻略を通して能力が増えていく仕組みです。
巻物には攻撃、回復、補助、移動など、さまざまな効果があります。新しい術を手に入れることで、それまで通れなかった場所へ進めるようになったり、強敵との戦いを有利に進められるようになったりします。
PCエンジン版では、ジライアとオロチ丸が主に術を担当し、ツナデは術を使えません。ツナデは物理攻撃を中心に戦うため、術を使える2人との役割がはっきり分かれています。
キャラクターごとに異なる特殊コマンド
火の一族の3人には、それぞれ性格を反映した特殊コマンドが用意されています。ジライアは「ぬすむ」、ツナデは「うそなき」、オロチ丸は「ながしめ」を使用できます。
- ジライアの「ぬすむ」は、敵から道具などを奪う行動
- ツナデの「うそなき」は、泣くふりをして敵へ影響を与える行動
- オロチ丸の「ながしめ」は、敵を惑わせるような特殊行動
特殊コマンドは通常攻撃や術とは異なり、必ずしも安定した効果を得られるものではありません。しかし、キャラクターの性格や個性が戦闘にも反映されているため、天外魔境らしい遊び心を感じられる要素です。
各地の剣豪から剣技を習得
旅の途中では、各地に住む剣豪と出会うことがあります。剣豪との戦いや修行を乗り越えると、ジライアは新しい剣技を習得できます。
剣豪の中には、塚原卜伝を思わせるボクデン、宮本武蔵をモデルにしたと考えられるムサシ、柳生十兵衛を連想させるジュウベイ、千葉周作をもとにした千葉シュウサクなどが登場します。歴史上の人物をそのまま登場させるのではなく、ジパングの住人として独自にアレンジしている点が特徴です。
習得できる剣技には「ボクデン斬り」「ムサシ斬り」「ジュウベイ斬り」「シュウサク斬り」などがあります。ただし、PCエンジン版ではコマンドとして自由に選択できる技ではなく、通常攻撃時にランダムで発動します。
強力な攻撃ではあるものの、必要な場面で確実に使うことはできません。そのため、必殺技というよりも、一定確率で発生する会心の一撃に近い仕組みです。
仲間が一人でも倒れると全滅
本作の戦闘で特に注意したいのが、仲間のうち一人でも戦闘不能になると、パーティー全体が敗北扱いになることです。一般的なRPGでは、残った仲間で戦闘を継続できる場合が多いものの、『天外魔境 ZIRIA』では一人の脱落がそのまま全滅につながります。
この仕様により、体力が少なくなった仲間を放置して攻撃を続ける戦い方は危険です。敵をあと一撃で倒せそうな場合でも、先に回復を選ばなければ敗北する可能性があります。
特にボス戦では、一人に攻撃が集中すると短いターンで全滅することがあります。回復術や回復道具を早めに使い、全員の体力を高めに維持することが重要です。
全滅すると所持金が半分になる
戦闘で全滅すると宿屋へ戻され、所持している「両」が半分になります。経験値や物語の進行状況まですべて失うわけではありませんが、装備や道具を購入するためのお金が大きく減ってしまいます。
高額な装備を購入するためにお金を貯めている途中で全滅すると、立て直しに時間がかかります。危険な地域へ向かう前には、預かり所へお金を預けておくと被害を抑えられます。
長いダンジョンでは、奥まで進んでから無理をせず、一度町へ戻る判断も必要です。全滅ペナルティが厳しいからこそ、道具の準備、段上げ、撤退の判断が攻略の一部となっています。
「しらべる」は目の前の場所を調査
町やダンジョンでは、「しらべる」コマンドを使って目の前の場所を確認できます。ただし、キャラクターが立っている足元ではなく、向いている方向の一歩先を調べる仕様です。
宝箱や分かりやすい対象を調べる場合は大きな問題になりませんが、床や壁に隠された仕掛けを探すイベントでは、正しい位置と向きを合わせる必要があります。対象の上に立って調べても反応しないため、現在のゲームに慣れていると操作を間違えやすい部分です。
特に床下へ続く隠し通路を見つける場面では、入口の一歩手前に立ち、正しい方向を向いて調べなければなりません。イベントが進まない場合は、同じ場所を向きを変えながら調査する必要があります。
広い世界と厳しい戦闘がやり応えにつながる
『天外魔境 ZIRIA』のシステムは、コマンド式戦闘や段による成長など、基本的には王道的なRPGです。しかし、広大なフィールド、高いエンカウント率、一人の戦闘不能で全滅する仕様、所持金半減のペナルティなどが組み合わさり、簡単には進めないバランスになっています。
一方で、白い神獣を助けて術を増やす仕組みや、各地の剣豪から剣技を学ぶ要素など、冒険の成果がキャラクターの成長につながる楽しさがあります。苦戦する場所でも、段を上げ、装備や道具を整えてから再挑戦すれば、少しずつ突破できるようになります。
移動や戦闘のテンポには古さを感じる部分があるものの、広いジパングを自分の足で巡り、仲間を育てながら強敵を倒していく達成感は、本作ならではの魅力です。
『天外魔境 ZIRIA』の主要キャラクター
『天外魔境 ZIRIA』には、主人公のジライアをはじめ、ツナデやオロチ丸、大門教に立ち向かう協力者など、個性的な人物が数多く登場します。物語の中心となるのは、ガマ族、ナメクジ族、ヘビ族の血を受け継ぐ3人の火の勇者です。
3人は同じ火の一族でありながら、性格や戦い方が大きく異なります。ジライアは攻撃と術を使い分ける主人公、ツナデは力を生かした物理攻撃役、オロチ丸は弓と術を扱う支援役として活躍します。キャラクター同士の会話にはガマ、ナメクジ、ヘビの三すくみも取り入れられており、重い物語の中でもコミカルなやり取りを楽しめます。
火の一族の主要キャラクター一覧
| キャラクター | 一族 | 武器 | 特徴 | 声優 |
| 自来也(ジライア) | ガマ族 | 刀 | 攻撃と術を使い分ける主人公 | 岩田光央 |
| 綱手(ツナデ) | ナメクジ族 | 斧 | 怪力を生かした物理攻撃が得意 | 渡辺菜生子 |
| 大蛇丸(オロチ丸) | ヘビ族 | 弓 | 術も使える冷静な仲間 | 塩沢兼人 |
上記の声優はPCエンジン版の配役です。ツナデは資料によってOVA版やXbox 360版の江森浩子と混同されやすいため、機種ごとの声優を分けて記載する必要があります。Xbox 360版ではツナデを江森浩子、オロチ丸を子安武人が担当しています。
自来也(ジライア)
自来也は本作の主人公で、ガマ族の血を引く火の一族の末裔です。幼い頃から筑波山に住むガマ仙人に育てられ、マサカドの復活を阻止するため、大門教との戦いへ旅立ちます。
戦闘では刀を装備し、通常攻撃に加えて巻物を使った術も使用できます。物語序盤では一人で戦う期間があるため、攻撃、回復、道具の使用など、状況に応じた判断が必要です。オロチ丸が仲間になるまでは、術を使える中心的なキャラクターとしてパーティーを支えます。
固有の特殊コマンドは「ぬすむ」です。敵から道具などを奪うことができますが、毎回成功するとは限りません。各地にいる剣豪と出会うことで、「ボクデン斬り」「ムサシ斬り」などの剣技も習得します。
PCエンジン版のジライアは、主人公へプレイヤー自身を重ねる形式を意識しているため、会話する場面が少なくなっています。音声付きのイベントを特徴とする作品でありながら、ジライア本人はオープニングなど一部の場面を除いてほとんど話しません。
2006年に発売されたXbox 360版では、この部分が大きく変更されています。ジライアがイベント中に頻繁に会話するようになり、月姫を守ろうとする姿や、敵に対する怒りなど、主人公としての感情が明確に描かれました。
綱手(ツナデ)
綱手はナメクジ族の血を引く火の一族で、怪力を自慢とする少女です。大きな斧を武器として使用し、高い攻撃力を生かして敵へ大きなダメージを与えます。
細かいことを気にしない明るい性格で、難しい話を理解できずに周囲を困らせることもあります。一方で、仲間を思う気持ちは強く、危険な場面でも物おじせずに行動します。物語が重くなりすぎないよう、会話をにぎやかにする役割も担っています。
ナメクジ族であるため、塩を苦手としています。この設定は物語やキャラクター同士の会話にも使われており、敵が塩に関係する仕掛けを利用する場面もあります。
PCエンジン版では術を使用できませんが、段が上がりやすく、物理攻撃役として成長します。戦闘不能者が一人出るだけで全滅となる本作では、体力と攻撃力を持つツナデの存在が重要です。
固有コマンドの「うそなき」は、泣くふりをして敵へ影響を与える特殊行動です。安定した攻撃手段ではありませんが、ツナデの性格を反映したコミカルなコマンドとなっています。
Xbox 360版では術を使えるようになり、物理攻撃だけでなく巻物による支援も可能になりました。キャラクターデザインも描き直され、PCエンジン版とは異なる印象の人物として表現されています。
大蛇丸(オロチ丸)
大蛇丸はヘビ族の血を引く火の一族です。江戸のショーグンに育てられ、その配下の密偵として行動しています。火の一族として大門教と戦う立場にありながら、育ての親であるショーグンへの忠義も抱えており、二つの立場の間で迷います。
ジライアやツナデよりも冷静で、物事を落ち着いて判断する人物です。物語の序盤から直接仲間になるわけではなく、各地で看板娘などに変装しながら、ジライアたちの行動を見守ります。
PCエンジン版では弓を武器として使用し、通常攻撃と術の両方を扱います。ツナデが物理攻撃を中心に戦うのに対し、オロチ丸は術を使って攻撃や支援を行えるため、仲間になった後は戦術の幅が広がります。
固有コマンドは「ながしめ」です。敵を惑わせるような行動で、オロチ丸の容姿や落ち着いた性格を生かしたものとなっています。
Xbox 360版では武器が弓から槍へ変更され、ショーグンではなく大老の柳沢吉保に拾われたという設定が加えられています。さらに、ヘビ族の蛇姫との関係も大きく描かれ、オロチ丸が自分の一族や信じるものと向き合う物語が強化されました。
ホテイ丸
ホテイ丸は、外国からジパングへやって来た宣教師です。英語を交えた独特な日本語を話し、発明品や知識を使ってジライアたちを助けます。
大門教も異国から伝わった宗教を思わせる集団ですが、ホテイ丸は人々を支配しようとする邪神斎たちとは異なり、ジライアたちの味方として行動します。異国文化を取り入れたジパングの世界を象徴する人物の一人です。
担当声優は青野武です。本作だけの人物ではなく、後の天外魔境シリーズにも登場し、主人公たちを支える役割を担います。
ガマ仙人
ガマ仙人は筑波山に住む仙人で、ジライアの育ての親です。ジライアへ修行をつけ、火の一族としての役目や、大門教が進めるマサカド復活について伝えます。
物語の始まりに深く関わる人物であり、ジライアが旅へ出るきっかけを作ります。PCエンジン版では宮内幸平、Xbox 360版では八奈見乗児が声を担当しています。
雲切
雲切は、坂東各地に拠点を持つ盗賊集団の親分です。火の一族ではありませんが、大門教の卑劣な行動を許せないという理由から、ジライアの旅を手助けします。
かつてガマ仙人のもとで修行しており、ジライアにとっては兄弟子にあたる人物です。各地にある雲切の里は、長い冒険を進めるうえで重要な場所となります。
Xbox 360版では、盗賊行為を理由にガマ仙人から破門されたという設定が追加されました。それでも師への恩義を忘れず、ジライアを助ける義理堅い人物として描かれています。
水戸黄門
水戸黄門は、水戸城を追われて土浦へ逃れてきた元副将軍です。スケさんとカクさんを連れており、日本の時代劇で知られる水戸黄門をもとにした人物として登場します。
本作では歴史上の人物や有名な物語をそのまま再現するのではなく、ジパングの世界に合わせて自由に組み合わせています。水戸黄門の登場も、史実とフィクションが混ざり合った本作らしい要素です。
月姫
月姫は江戸のショーグンの娘で、江戸に迫る危機をジライアたちへ知らせる人物です。PCエンジン版では物語を進める重要人物の一人ですが、主人公との関係が深く描かれる場面は限られています。
Xbox 360版ではメインヒロインとしての役割が強化されました。ジライアが月姫を守ろうとする場面が増え、二人の関係が物語の軸の一つとなっています。PCエンジン版とリメイク版のシナリオの違いを知るうえで、特に注目したい人物です。
江戸のショーグン
江戸のショーグンは坂東地方を治める人物で、オロチ丸の育ての親でもあります。民の平和を願いながらも邪神斎に利用され、大門教の勢力拡大を許してしまいました。
自分の誤りに気づいた後は大門教へ反旗を翻しますが、邪神斎たちに返り討ちにされてしまいます。ショーグンの存在は、大門教が単純な武力だけではなく、政治的な立場を利用して勢力を伸ばしていたことを示しています。
Xbox 360版では、大門教を利用して坂東地方の支配を強めようとしていたという設定に変更されました。PCエンジン版よりも野心的な人物として描かれており、オロチ丸との関係にも違いが生まれています。
個性的な人物が長い冒険を盛り上げる
『天外魔境 ZIRIA』では、火の一族だけでなく、各地の城主、仙人、剣豪、盗賊、宣教師など、さまざまな立場の人物がジライアたちと関わります。味方になる人物だけでなく、敵に利用されている者や、最初はジライアと対立する者も登場します。
主要人物には音声が用意され、短い登場場面でも強い印象を残します。また、町の住人にも土地や事件に合わせた台詞が設定されており、各地域を訪れるたびに異なる雰囲気を楽しめます。
王道的な物語を支えているのは、ジライア、ツナデ、オロチ丸の関係だけではありません。旅先で出会う人物や、何度も登場する協力者が物語へ変化を与えることで、長い冒険にもメリハリが生まれています。
大門教十三人衆と主な敵キャラクター
『天外魔境 ZIRIA』でジライアたちの前に立ちはだかるのが、大門教十三人衆です。大門教の幹部たちは坂東各地へ送り込まれ、城主を操ったり、人々を捕らえたり、食料や水を利用したりしながら勢力を広げています。
十三人衆は単に地域ごとに配置されたボスではなく、それぞれに異なる外見、性格、目的が用意されています。恐ろしい怪物へ変身する者がいる一方、金に執着する商人や、失敗を繰り返す大猿など、コミカルな敵も登場します。
各地域で起きている事件を解決し、十三人衆を倒しながら江戸を目指すことが、本作の基本的な物語の流れです。ここでは、PCエンジン版に登場する大門教十三人衆と、物語の中心となる敵を紹介します。
大門教十三人衆一覧
| キャラクター | 主な登場地域 | 特徴 | PCエンジン版声優 |
| ゴーモン | 筑波国 | 人々を捕らえて魂を抜き取る | 田中康郎 |
| タマモ姫 | 盤毛国 | 城主を誘惑し、狐を操る | 片石千春 |
| ダンジョウ | 陸羽国 | 鼠を操り、人々を米不足に追い込む | 矢田耕司 |
| カーメンカーメン | 陸奥国 | ミイラを操り、水を汚染する | 塩屋浩三 |
| マントー | 陸奥国 | 強力な術を持つが失敗の多い大猿 | 塩屋浩三 |
| 信玄 | 信濃国 | 伝説の武将・武田信玄を名乗る偽物 | 銀河万丈 |
| イト姫 | 富士国 | 人々を捕らえ、富士山の地下で働かせる | 江森浩子 |
| 南蛮屋 | 富士国 | 金を何よりも重視する欲深い商人 | 大竹宏 |
| ヤシャ姫 | 相模国 | ツナデとオロチ丸を捕らえる | 鶴ひろみ |
| ムテキオー | 相模国 | 圧倒的な力でジライアを敗北させる | 戸谷公次 |
| 水王丸 | 千葉国 | からくり兵の製造工場を支配する | 塩屋翼 |
| 幻王丸 | 武蔵国 | 四天王を従える邪神斎の長男 | 森功至 |
| 邪神斎 | 江戸 | マサカド復活を進める大門教の教祖 | 加藤精三 |
PCエンジン版では邪神斎を含む13人が大門教十三人衆として扱われています。Xbox 360版ではコウモリ夜太が新たに十三人衆へ加わり、邪神斎は十三人衆を率いる宗主という立場へ変更されました。
ゴーモン
ゴーモンは筑波国で最初に立ちはだかる大門教十三人衆の一人です。水戸城から黄門一行を追い出し、狸たちを利用して周辺の人々を襲わせています。
捕らえた人々を拷問し、魂を抜き取っていることが物語の中で語られます。序盤の敵でありながら、大門教が人々をどのように扱っているのかを強く印象付ける人物です。
Xbox 360版では「強門」という表記に変更され、ムカデ族に属する人物という設定が追加されました。変身後はキングワームとなり、PCエンジン版よりも出自や種族が詳しく描かれています。
タマモ姫
タマモ姫は盤毛国に登場し、白河城の大トノを誘惑して支配しています。狐を操って各地で悪事を働かせ、人々を苦しめていました。
ジライアたちに倒された後も怨念を残し、白河の関所へ大岩を落として道をふさぎます。そのため、一行は別の道を探して移動しなければなりません。
Xbox 360版では「玉藻姫」と表記され、変身後はキュウビとなります。日本の伝承で知られる玉藻の前や九尾の狐を意識したキャラクターとして、より分かりやすく再構成されています。
ダンジョウ
ダンジョウは陸羽国で暗躍する大門教十三人衆です。鼠を操って米を食い荒らさせ、人々を深刻な食料不足へ追い込んでいます。
米を求めて大門教へ入信した人々を米沢城に集め、魂を抜き取るという悪事も行っています。さらに、鬼族の王であるあくろう王の息子を人質に取り、ジライアたちと戦わせます。
ダンジョウは米沢城の地下にある魔神像から力を得ているため、像を破壊しない限り何度でも復活します。単純に本人を倒すだけでは決着せず、力の源を探して破壊する必要がある敵です。
カーメンカーメン
カーメンカーメンは陸奥国に登場する敵で、大僧正のような姿をしています。正体はミイラの怪物で、月山にある古寺を拠点として活動しています。
ミイラを操って人々を襲わせるだけでなく、地域の水を毒で汚染していました。関西弁で話し、「かめへん、かめへん」を口癖とするなど、名前と話し方を組み合わせたコミカルな特徴も持っています。
Xbox 360版では丁寧な口調へ変更されており、PCエンジン版とはキャラクターの印象が異なります。
マントー
マントーは、天外魔境シリーズを代表する名物キャラクターです。陸奥国で神獣の白ザルを封印し、ほかの猿たちを支配して悪事を働いています。
大きな猿の姿をしており、非常に強力な「馬鹿」の術を使います。しかし、本人の頭が弱いため術を十分に使いこなせず、ほかの十三人衆や町の人々からも軽く扱われています。
敵でありながら憎みきれない言動が多く、本作以降も天外魔境シリーズの多くの作品へ登場します。恐ろしい敵ばかりが続く中で、笑いを生み出す存在として強い印象を残しました。
Xbox 360版では「萬頭」と表記され、声優を千葉繁が担当しています。ほかの十三人衆が倒された後も逃げ延びるため、十三人衆の中で唯一生き残った人物として描かれました。
信玄
信玄は信濃国に登場し、かつて国をまとめた伝説の人物・武田信玄が復活した姿を名乗っています。しかし、その正体はドーマンと呼ばれる大門教十三人衆です。
ツナデたちに関係するなめくじ玉を奪い、ジライア一行を塩山のピラミッドへ誘い込みます。歴史上の人物を思わせる姿と、古代遺跡のようなピラミッドを組み合わせた設定は、史実にとらわれないジパングらしさを表しています。
担当声優はPCエンジン版とXbox 360版のどちらも銀河万丈です。リメイク版でも同じ声優が続投した敵の一人となっています。
イト姫
イト姫は富士国に登場する大門教十三人衆です。神獣の白リュウが持つ力を弱めるため、富士山の地下神殿を破壊しようと企んでいます。
その作業を進めるため、多くの人々を捕らえ、富士山の地下で強制的に働かせていました。最初は穏やかな言葉でジライアたちを大門教へ誘いますが、拒絶されると態度を一変させて戦いを挑みます。
Xbox 360版では「糸姫」と表記され、土蜘蛛一族の姫という設定が追加されました。変身後はアラクネーとなり、蜘蛛をもとにしたキャラクターであることがより明確になっています。
南蛮屋
南蛮屋は富士国で商売を行う、欲深い大門教十三人衆です。金を何よりも大切にしており、ジライアたちに対しても商人として接してきます。
PCエンジン版ではツナデを気に入り、1,000両で売ってほしいと持ちかけます。ここで要求を受け入れる選択をすると、その後の戦闘でツナデとオロチ丸が参加しなくなるため、軽い会話に見えて戦いへ影響するイベントです。
南蛮屋が運営する店では道具を購入できますが、PCエンジン版では役に立ちにくい品が多く並んでいます。Xbox 360版では攻撃に使える道具も追加され、店としての実用性が高められました。
ヤシャ姫
ヤシャ姫は相模国に登場し、ツナデとオロチ丸を捕らえて獄門島へ送ります。仲間を失ったジライアが一人で行動する展開を作る重要な敵です。
Xbox 360版では「蛇姫」という名前に変更され、オロチ丸の姉という設定が追加されました。単なる敵ではなく、ヘビ族の未来や、自分が信じるもののために大門教へ協力している人物として描かれています。
敗北した後は、オロチ丸が火の勇者として成長したことを認め、自分が信じる道を進むよう言い残します。リメイク版で大きく物語が追加されたキャラクターの一人です。
ムテキオー
ムテキオーは相模国で登場し、初めて戦ったジライアを圧倒的な力で倒します。敗北したジライアは獄門島へ送られ、仲間と離れた状態で行動することになります。
それまで順調に進んできたプレイヤーへ強制的な敗北を経験させる敵であり、物語の緊張感を高める存在です。
Xbox 360版では通常時の名前が鬼道仙となり、変身後にムテキオーとなります。鬼族の国を作らせるという大門教の誘いに乗り、協力しているという理由も加えられました。
水王丸
水王丸は千葉国に登場する大門教十三人衆で、邪神斎の次男です。くるり城の地下にある工場を任され、からくり兵を大量に製造しています。
工場では多くの人々が働かされており、役に立たなくなった者を水王丸が食い殺していることも語られます。大門教の中でも、特に残酷な行動を取る人物です。
工場での戦いでは倒しても逃亡し、神獣の白ガマが封印されているヤブシラズの森で再び対決します。変身後はクラーケンとなり、ジライアたちとの決着に挑みます。
幻王丸
幻王丸は武蔵国を守る大門教十三人衆で、邪神斎の長男です。水王丸の兄にあたり、泥黒鬼、暗鉄鬼、銀老鬼、金剛鬼の四天王を配下に置いています。
四天王との戦いでは、ジライアたちの体力を減らしたり、術を封じたりするなど、さまざまな方法で妨害します。単純な力だけでなく、戦う前から不利な状況を作る厄介な敵です。
当初は江戸の近くまで進んできたジライアたちを余裕の態度で迎えますが、四天王が倒されるにつれて冷静さを失っていきます。大門教の最終防衛線を任される、終盤の強敵です。
邪神斎
邪神斎は大門教を率い、マサカド復活を進めている張本人です。坂東地方を治めるショーグンに近づき、大門教を広めながら江戸の支配を進めていました。
PCエンジン版では大門教十三人衆の一人として数えられ、変身後はルシフェラーとなります。表向きは宗教の教祖として活動していますが、実際にはジパングを支配するために人々の魂や各地の力を利用しています。
後のシリーズでは、邪神斎がもともと大和地方のイヒカの民である「トキ」という人物だったことや、大門教という名前が「デーモン教」に由来することも語られます。
Xbox 360版では大門教十三人衆から外れ、組織を率いる宗主として登場します。また、ルシフェラーへ変身する設定も変更され、PCエンジン版とは異なる立場の敵として描かれました。
マサカド
マサカドは、かつてジパングを滅亡寸前まで追い込んだ強大な存在です。過去の火の勇者によって地中深くへ封印されましたが、大門教はその力を利用するため、復活を進めています。
PCエンジン版では最終ボスとして登場し、ジライア、ツナデ、オロチ丸の3人が火の一族の末裔として戦いを挑みます。物語の冒頭から名前が語られている存在であり、長い冒険の最後に立ちはだかる敵です。
Xbox 360版では、マサカドがジパングで破壊と殺戮を行った理由が新たに描かれています。また、最終ボスは異国から来た大門教の神・バールダイモンへ変更され、マサカドの扱いもPCエンジン版とは異なります。
個性的な敵が地域ごとの物語を作り出す
大門教十三人衆は、それぞれ異なる方法で土地を支配しているため、地域を移動するたびに新しい事件が発生します。食料不足、水の汚染、人質、強制労働、からくり兵の製造など、同じ展開を繰り返さないように工夫されています。
残酷な敵だけでなく、マントーや南蛮屋のような笑いを生み出す人物もいるため、物語が暗くなりすぎません。恐ろしさとコミカルさが混在していることが、大門教十三人衆の特徴です。
ジライアたちは十三人衆を倒すたびに地域を解放し、白い神獣や人々の力を借りながら成長していきます。個性の強い敵との戦いを積み重ね、最後に邪神斎とマサカドへたどり着く流れが、『天外魔境 ZIRIA』の長い冒険を支えています。
CD-ROM²を活用した映像・音声・音楽
『天外魔境 ZIRIA』を語るうえで欠かせないのが、PCエンジン CD-ROM²の大容量を活用した映像・音声・音楽です。ゲームシステム自体はオーソドックスなコマンド式RPGですが、イベントでキャラクターが声を出して動き、CD音源による楽曲が流れる演出は、1989年当時の家庭用ゲームとして非常に大きなインパクトを持っていました。
本作は、CD-ROMを媒体として使用した世界初のRPGとされています。当時の家庭用ゲームはROMカセットが中心であり、表示できる映像や収録できる音声には大きな制限がありました。『天外魔境 ZIRIA』はCD-ROM²の容量を生かし、従来のRPGでは実現が難しかったアニメーション、キャラクターボイス、生音に近い音楽を組み込んでいます。
現在の視点では、音声付きのイベントやアニメーションムービーは珍しくありません。しかし、本作が発売された時点では、ゲームのキャラクターが声優の演技に合わせて動き、物語を進めていくこと自体が新鮮でした。ゲームとアニメを組み合わせたような演出は、天外魔境シリーズの方向性を決めただけでなく、後の大作RPGを先取りした要素ともいえます。
CD-ROMを媒体に使用した初期の大作RPG
PCエンジン CD-ROM²は、ゲームデータをCD-ROMへ収録することで、ROMカセットよりも多くの映像、音声、音楽を扱える周辺機器でした。『天外魔境 ZIRIA』は、その特徴を分かりやすく示した代表的なRPGです。
広大なフィールド、多数の町やダンジョン、個性的な敵、音声付きのイベントなど、さまざまな要素が盛り込まれています。単に物語が長いだけではなく、各地域へ移動するたびに新しい人物や事件が登場するため、冒険全体に大きなボリュームを感じられます。
CD-ROM²用ソフトがまだ少なかった時期に発売されながら、音声や映像を目立たせるだけでなく、長編RPGとして成立させている点も本作の特徴です。新しい媒体の実験作というだけではなく、シリーズの第1作として十分な内容を備えていました。
本作と『イースI・II』は、PCエンジン CD-ROM²を代表する作品として知られています。ゲーム機へCD-ROMを導入することで何が可能になるのかを、プレイヤーへ分かりやすく示した作品でした。
アニメーションを取り入れたビジュアルシーン
物語の重要な場面では、通常のフィールド画面とは異なるビジュアルシーンが挿入されます。キャラクターの表情や動きを大きく表示し、音声と組み合わせながら物語を見せる形式です。
静止画を切り替えるだけでなく、キャラクターが画面内を動くアニメーションも使用されています。現在のアニメムービーほど滑らかな映像ではありませんが、当時の家庭用RPGとしては豪華な表現でした。
ジライアたち火の一族だけでなく、大門教十三人衆や各地の協力者にも印象的な登場場面が用意されています。敵が姿を現す場面や正体を明かす場面では、映像と音声を使った演出によって、戦闘前の緊張感を高めています。
ゲーム中のすべてがアニメーションで描かれるわけではありませんが、重要な場面に絞ってビジュアルシーンを挿入することで、物語の区切りを分かりやすくしています。地域ごとの事件を解決したときや、新しい人物と出会ったときに映像が入るため、長い冒険にも変化が生まれます。
声優を起用したキャラクターボイス
『天外魔境 ZIRIA』では、主要キャラクターや敵に声優を起用しています。主人公のジライアを岩田光央、オロチ丸を塩沢兼人、信玄を銀河万丈、ヤシャ姫を鶴ひろみ、邪神斎を加藤精三が担当するなど、多数の声優が参加しました。
登場人物の台詞を音声で聞けることにより、文章だけでは伝わりにくい性格や感情も分かりやすく表現されています。大門教十三人衆は外見だけでなく、独特な話し方や口調にも個性があり、短い登場場面でも強い印象を残します。
特にカーメンカーメンの関西弁や、ホテイ丸の英語を交えた日本語などは、文字だけでなく音声が加わることで個性が際立ちます。恐ろしい敵、落ち着いた人物、コミカルな人物の違いが声の演技によって伝わるため、長い物語を飽きずに楽しめます。
一方で、PCエンジン版のジライアは、主人公へプレイヤー自身を重ねる形式を意識しているため、台詞を話す場面が限られています。音声演出を大きく取り入れた作品だけに、主人公がほとんど話さない点を惜しく感じる場合もあります。
この点はXbox 360版で変更され、ジライアが物語の中で積極的に会話するようになりました。PCエンジン版とリメイク版を比べると、キャラクターボイスの使い方や主人公の描き方にも大きな違いがあります。
坂本龍一が手掛けた3曲を収録
音楽面では、坂本龍一が音楽プロデュースに参加し、メインテーマを含む3曲を作曲しています。CD-ROM²では録音した音源をそのまま再生できるため、当時のゲーム機内蔵音源とは異なる迫力のある音楽を楽しめました。
すべてのBGMを坂本龍一が作曲したわけではなく、ゲーム中の音楽には小久保隆、成田忍、荒殿卓、越水淳、松本かよ、山口高志なども参加しています。そのため、記事では「坂本龍一が全曲を担当した」と誤解されないように書き分ける必要があります。
坂本龍一が手掛けた楽曲は、作品の壮大さを印象付ける重要な要素です。一方で、通常の町や戦闘、ダンジョンなどで流れる楽曲も、和風の旋律と異国的な雰囲気を組み合わせ、ジパングの奇妙で華やかな世界を表現しています。
PCエンジン版の音楽は、後に発売された関連CDにも一部収録されました。また、Xbox 360版では多くのBGMがアレンジされていますが、坂本龍一が手掛けた楽曲は引き続き使用されています。
ゲーム音楽へ生音を取り入れた意味
1980年代の家庭用ゲームでは、ゲーム機に搭載された音源を使ってBGMを鳴らす方法が一般的でした。使用できる音色や同時に鳴らせる音の数に制限があり、作曲者はその範囲で楽曲を作る必要がありました。
CD-ROM²では、録音した音楽をCDから直接再生できます。これにより、実際の楽器や人の声を含む音源をゲーム中で使用できるようになりました。『天外魔境 ZIRIA』は、その利点をRPGの物語や世界観へ組み込んだ作品です。
イベントシーンで映像と声が流れ、さらにCD音源の音楽が加わることで、ゲームの重要な場面がアニメ作品のように演出されます。単に音質が良くなっただけではなく、物語の見せ方そのものが変化した点に大きな意味があります。
こうした映像、音声、音楽を一体化させる方法は、後にCD-ROMを採用したゲーム機が増えるにつれて一般的になっていきます。本作は、その流れを早い段階で示したRPGの一つです。
多数の人物が暮らすジパング
『天外魔境 ZIRIA』には、主要キャラクターだけでなく、町や村の住人、城の兵士、旅人など、多数の人物が登場します。当時の紹介では、NPCを含めて約3,000人の登場人物が用意されたとされることもありました。
もちろん、約3,000人すべてが物語の中心へ関わるわけではありません。町を歩いている住人や、短い台詞だけを話す人物なども含めた数です。それでも、訪れる地域ごとに異なる住人が配置され、それぞれに台詞が用意されていることが、世界の広さを感じさせます。
住人の台詞からは、現在その地域で何が起きているのか、大門教がどのような悪事を働いているのかを知ることができます。また、物語の進行によって台詞が変化する場合もあり、事件を解決したことを住人の反応から確認できます。
音声が付いているのは主に重要人物ですが、名前のない住人にも地域ごとの特徴が表れています。主要人物だけでなく、町全体でジパングの世界を表現していることも、本作のボリューム感につながっています。
豪華な演出と引き換えに増えたロード
CD-ROM²の大容量によって豪華な映像や音声を収録できた一方、データを読み込むためのロードが必要になりました。ROMカセットは必要なデータへ素早くアクセスできますが、CD-ROMは場面に応じてディスクからデータを読み込まなければなりません。
本作では町やダンジョンへの移動、イベントの開始などで読み込みが発生します。CD-ROM²用ソフトの開発経験が十分に蓄積されていなかったこともあり、ロード回数の多さは問題点として挙げられています。
当時のプレイヤーは、ロード時間のないROMカセット作品に慣れていました。そのため、現在のディスクゲームと比べて極端に長い読み込みではなくても、場面が切り替わるたびに待つことを負担に感じやすい状況でした。
さらに、敵との遭遇率が高く、戦闘ではアニメーションが表示されるため、全体のテンポが遅く感じられる場面があります。映像を動かす豪華さと、ゲーム進行に時間がかかる問題が同時に存在しています。
SUPER CD-ROM²版では読み込み方法を調整
後に配布されたSUPER CD-ROM²版では、ゲーム内容を変更せず、読み込み方法が調整されています。通常のCD-ROM²版よりロードが発生する回数を減らした一方、一回ごとの読み込み時間は長くなりました。
ロードそのものをなくした移植ではありませんが、細かく何度も読み込む通常版とは異なる感覚でプレイできます。物語、戦闘、登場人物などの内容は基本的に同じです。
PSPやPS3向けに配信されたゲームアーカイブス版では、実機のCD-ROM²版より読み込みの負担が軽く感じられる場合があります。オリジナル版を遊ぶ手段を比較する際は、収録内容だけでなくロードの違いも重要なポイントです。
技術だけで終わらない演出が魅力
『天外魔境 ZIRIA』の映像や音声は、CD-ROM²の性能を見せるためだけに加えられたものではありません。声優の演技によって敵の性格を伝え、アニメーションによって重要な場面を印象付け、音楽によってジパングの壮大さを表現しています。
ロードや戦闘テンポなど、初期のCD-ROM作品ならではの弱点は残っています。それでも、映像、声、音楽を組み合わせて長編RPGを描いた本作は、当時の家庭用ゲームとして大きな挑戦でした。
現在では一般的になった演出を1989年の段階で取り入れ、王道的なRPGへ組み込んだことが、『天外魔境 ZIRIA』の歴史的な価値です。ゲームシステムの古さだけでなく、家庭用RPGの表現を広げようとした作品として見ることで、本作ならではの魅力が分かりやすくなります。
『天外魔境 ZIRIA』の評価された点
『天外魔境 ZIRIA』は、PCエンジン CD-ROM²の大容量を活用した映像や音声だけでなく、独特な世界観、個性的なキャラクター、長編RPGとしてのボリュームなど、さまざまな点が評価されている作品です。ゲームシステムの基本は分かりやすいコマンド式ですが、その中に当時としては珍しい演出や要素を数多く取り入れています。
新しい媒体を使用した技術的な作品でありながら、映像や音声を見せることだけに偏っていない点も特徴です。ジライアが仲間を集め、大門教十三人衆と戦いながらマサカドの復活を阻止する物語が用意されており、一本のRPGとして長く遊べる内容に仕上がっています。
外国人から見た日本を表現した独特な世界観
本作の大きな魅力は、日本をモデルにしながら、現実の日本とは異なる架空の国「ジパング」を作り上げていることです。筑波、富士、信濃、江戸など、日本の地名を連想させる地域が登場しますが、歴史や地理を忠実に再現した作品ではありません。
ジパングには、武田信玄、水戸黄門、宮本武蔵、柳生十兵衛などを思わせる人物だけでなく、仙人、神獣、鬼族、ミイラ、宣教師、ピラミッドなどが同じ世界に存在しています。本来なら時代や文化の異なる要素を自由に組み合わせることで、一般的な時代劇や和風RPGとは違う世界を表現しています。
作品の原作として表記されているのは、P.H.チャダの著書『FAR EAST OF EDEN』です。しかし、P.H.チャダとその著書は実在せず、作品のために用意された架空の人物と文献です。
外国人の研究者が日本について記した本を原作とする形を取ることで、間違った日本観や大げさな異国趣味も含めて作品の設定として成立させています。単に変わった日本を描くのではなく、架空の原作まで作り込んでいることが、ジパングの世界をより印象的なものにしています。
王道的で分かりやすいストーリー
物語は、火の一族の末裔であるジライアが仲間を集め、各地を支配する大門教十三人衆を倒し、最後に邪神斎とマサカドへ立ち向かうという王道的な内容です。敵の目的や主人公が旅をする理由が分かりやすく、複雑な設定をすべて理解していなくても物語を進められます。
各地域には、その土地を支配する大門教十三人衆と、被害を受けている人々がいます。町で情報を集め、ダンジョンを攻略し、敵を倒して地域を救うという流れが繰り返されるため、次に何をすればよいのかも把握しやすくなっています。
基本的な構成は分かりやすい一方、各地域の事件は同じ内容ではありません。食料不足、水の汚染、人質、強制労働、からくり兵の製造など、十三人衆によって異なる問題が発生します。地域ごとに目的や展開を変えることで、長い冒険にも変化を持たせています。
物語には暗い事件も多く登場しますが、ツナデの言動、オロチ丸の変装、ホテイ丸の話し方、マントーの失敗など、笑える場面も用意されています。シリアスとコミカルのバランスが取られており、重苦しい展開だけが続かないことも魅力です。
個性的なキャラクター同士のやり取り
ジライア、ツナデ、オロチ丸の3人は、同じ火の一族でありながら性格が大きく異なります。ジライアは旅の中心となる主人公、ツナデは明るく力強い物理攻撃役、オロチ丸は冷静で複雑な立場を持つ人物として描かれています。
3人はそれぞれガマ族、ナメクジ族、ヘビ族に属しており、ガマはヘビに弱く、ヘビはナメクジに弱く、ナメクジはガマに弱いという三すくみの関係を持っています。この設定はキャラクター同士の会話にも使われ、仲間でありながら苦手意識を見せる場面が笑いにつながります。
敵側にも個性的な人物がそろっています。残酷な悪事を働く者だけでなく、金に執着する南蛮屋や、強力な術を持ちながら失敗を繰り返すマントーなど、単純な悪役では終わらないキャラクターが登場します。
町や村に暮らす住人にも、その地域で起きている事件や生活を感じさせる台詞が用意されています。主要人物だけでなく、名前のない住人にも個性を持たせることで、ジパングに多くの人々が暮らしていることを表現しています。
声優とアニメーションを生かした演出
主要人物や敵キャラクターには音声が用意され、重要な場面ではアニメーションを取り入れたビジュアルシーンが流れます。現在のRPGでは一般的な表現ですが、1989年当時の家庭用ゲームでは大きな特徴でした。
敵の外見が変化する場面や、新しい人物が登場する場面では、通常のフィールド画面とは異なる演出が使われます。声優の演技とキャラクターの動きを組み合わせることで、文章だけで進むRPGよりも人物の性格を伝えやすくしています。
大門教十三人衆は、話し方や声にも特徴があります。カーメンカーメンの口調や、マントーの間の抜けた言動、邪神斎の威圧感などが音声によって表現され、短い登場場面でも強い印象を残します。
映像や音声を単なる宣伝材料として使うのではなく、物語やキャラクターの表現に結び付けている点が評価できます。CD-ROM²という新しい媒体の特徴を、RPGの面白さへ取り込んだ作品です。
坂本龍一が参加した音楽
音楽面では、坂本龍一が音楽プロデュースに参加し、メインテーマを含む3曲を作曲しています。CD音源を利用することで、ゲーム機の内蔵音源だけでは表現しにくかった音色や演奏を収録しました。
ゲーム中のすべてのBGMを坂本龍一が担当したわけではありませんが、著名な音楽家が家庭用RPGへ参加したこと自体が、当時としては大きな話題でした。
通常の町、戦闘、ダンジョンなどの楽曲には、小久保隆をはじめとする複数の作曲家が参加しています。和風の旋律だけに限定せず、神秘的な音や異国的な雰囲気を取り入れることで、現実の日本とは異なるジパングの世界を表現しています。
当時のRPGとして大きなボリューム
本作は坂東地方を舞台としていますが、冒険できる範囲は広く、多数の町、村、城、洞窟、山、地下施設などが登場します。地域ごとに異なる事件が用意され、大門教十三人衆を倒しながら少しずつ江戸へ近づいていきます。
フィールドが広いことに加え、ダンジョンも長く、特に終盤の江戸城は十分な準備が必要です。一度入れば簡単に最後まで進める構造ではなく、何度か町へ戻り、段を上げながら攻略することになります。
現在のRPGと比べると移動や戦闘に時間がかかる部分はありますが、その長さが冒険の規模にもつながっています。町から町へ移動し、初めて訪れる地域で情報を集め、新しい敵や人物と出会う過程をじっくり楽しめます。
白い神獣の解放、巻物の収集、剣豪からの剣技習得など、メインストーリーを進めながら新しい能力を手に入れる要素も用意されています。単に長いだけでなく、冒険を続けることで戦い方が増えていく点も特徴です。
厳しい難易度が生み出す達成感
『天外魔境 ZIRIA』は、シリーズの中でも難しい作品として挙げられることがあります。敵との遭遇率が高く、ダンジョンも長いため、段や装備が不足したまま先へ進むと苦戦します。
さらに、仲間が一人でも戦闘不能になると全滅し、所持金が半分になる厳しいルールがあります。敵を倒せそうな状況でも、仲間の体力が減っている場合は先に回復しなければなりません。
一方で、十分に段を上げると敵の攻撃を受けにくくなり、弱い敵が逃げ出すこともあります。終盤は獲得できる経験値も増えるため、段上げを行い、回復道具や術を準備すれば攻略しやすくなります。
難しい場面を運だけで突破するのではなく、段上げ、装備、道具、お金の管理によって少しずつ有利にできるバランスです。厳しい全滅条件があるからこそ、長いダンジョンや強敵を倒したときに大きな達成感を得られます。
王道RPGと新しい表現を両立
『天外魔境 ZIRIA』のゲーム部分は、コマンドを選んで戦い、経験値を集めて段を上げる王道的なRPGです。極端に複雑な操作を覚える必要がなく、基本的な遊び方は分かりやすくなっています。
その一方で、声優による音声、アニメーション、CD音源、架空の原作、外国人から見た日本という設定など、当時のRPGには少なかった要素を取り入れています。
ゲームシステムまで大きく変えるのではなく、遊び方は王道のまま、物語や演出で新しさを見せていることが本作の強みです。新しい媒体に慣れていないプレイヤーでも、一般的なRPGと同じ感覚で遊び始められます。
後のシリーズへつながる原点
本作で得られた制作経験や反省点は、正統続編となる『天外魔境II 卍MARU』へ生かされました。ロード、戦闘テンポ、ゲームバランスなどを見直しながら、映像、音声、音楽を使った天外魔境らしい演出は受け継がれています。
また、本作に参加した広井王子や桝田省治は、その後もさまざまな作品を手掛けています。広井王子は後に『サクラ大戦』などへ関わり、桝田省治は『リンダキューブ』や『俺の屍を越えてゆけ』などで独自の作風を発展させていきました。
本作がそれらの作品へ直接つながったと単純に断定することはできませんが、長編ゲームの物語、個性的な人物、映像と音声を組み合わせた見せ方など、後の活動につながる要素を確認できます。
技術と内容の両方で印象を残した作品
『天外魔境 ZIRIA』は、CD-ROM²の性能を分かりやすく示した作品であると同時に、独立したRPGとしても十分な内容を持っています。豪華な演出だけでなく、長い物語、多数の登場人物、厳しい戦闘、個性的な敵などが組み合わされています。
ロードや戦闘テンポなど、現在遊ぶと気になる部分はあります。それでも、ジパングという独特な世界を自分の足で巡り、仲間とともに大門教へ立ち向かう冒険は、本作でしか味わえないものです。
王道的なRPGの遊びやすさを残しながら、映像、音声、音楽によって物語の見せ方を広げたことが、『天外魔境 ZIRIA』の評価につながっています。天外魔境シリーズの原点としてだけでなく、家庭用RPGの表現が大きく変わろうとしていた時代を知る作品としても価値があります。
PCエンジン版『天外魔境 ZIRIA』の問題点
『天外魔境 ZIRIA』は、CD-ROM²の大容量を活用した映像や音声、広大な世界、個性的なキャラクターなどが高く評価された作品です。一方で、PCエンジン CD-ROM²が登場して間もない時期に開発されたため、読み込みや戦闘テンポを中心に、現在遊ぶと不便に感じやすい部分も残されています。
特に注意したいのは、ロードの多さ、高いエンカウント率、仲間が一人でも倒れると全滅する厳しい仕様です。それぞれ単独でもゲームの進行へ影響しますが、複数の要素が重なることで、町から次の目的地へ移動するだけでも時間がかかる場合があります。
ただし、これらの問題点の中には、当時の技術やゲームバランスを考えると避けにくかったものもあります。単純に遊びにくい作品と判断するのではなく、CD-ROMを使った家庭用RPGがまだ発展途上だった時期の作品であることを踏まえて見る必要があります。
ロードの回数が多い
PCエンジン版で最も気になりやすい点のひとつが、ロードの多さです。町や建物へ出入りするとき、イベントが始まるときなど、さまざまな場面でディスクからデータを読み込みます。
当時の家庭用RPGはROMカセットで発売されることが多く、場面が切り替わっても待ち時間がほとんどありませんでした。そのため、現在のディスクゲームでは短いと感じる程度のロードでも、当時のプレイヤーにとっては目立ちやすい問題でした。
『天外魔境 ZIRIA』は、PCエンジン CD-ROM²本体の開発と近い時期に制作されています。開発側にもCD-ROMを使ったゲーム制作の経験が十分に蓄積されておらず、どのデータを先に読み込むか、どの場面でロードを挟むかといった調整が難しかったと考えられます。
音声やアニメーションを収録できることはCD-ROM²の大きな利点ですが、それらを表示するためには読み込みが必要です。豪華なイベントを実現した代わりに、ゲームの進行が細かく止まりやすくなっています。
後に配布されたSUPER CD-ROM²版では、読み込み方法が見直されました。一回のロード時間は長くなったものの、ロードが発生する回数は減らされています。ゲーム内容は同じですが、通常版とは読み込みの感覚が異なります。
敵とのエンカウント率が高い
フィールドやダンジョンでは、敵と頻繁に遭遇します。目的地までの距離が長いこともあり、町から次の町へ移動するだけで何度も戦闘へ入る場合があります。
本作にはBダッシュが用意されているため、歩く速度そのものは遅くありません。しかし、敵との遭遇を避ける機能ではないため、ダッシュ中でも戦闘は発生します。移動速度が上がっても、戦闘回数によって目的地まで時間がかかることがあります。
高いエンカウント率は、段を上げるうえでは役立ちます。敵を探し回らなくても自然に経験値を稼げるため、物語を進めながらキャラクターを育てられます。
一方で、長いダンジョンでは戦闘のたびに体力や術を消費します。目的地へ到達する前に回復手段が不足し、町へ戻らなければならないこともあります。特に終盤はダンジョンそのものが長いため、戦闘回数の多さが難易度へ大きく影響します。
戦闘アニメーションでテンポが遅くなりやすい
敵キャラクターが戦闘中に動くことは、当時のRPGとして大きな見どころでした。攻撃や被弾に合わせて表示が変化するため、静止画だけの戦闘よりも迫力があります。
しかし、敵との遭遇率が高い本作では、毎回のアニメーションが戦闘時間の長さにもつながっています。新しい敵と戦うときは演出を楽しめますが、同じ敵との戦闘が繰り返されると、進行が遅いと感じやすくなります。
特に段上げを目的として同じ地域を歩く場合、戦闘の開始から終了までにかかる時間が積み重なります。豪華な演出と快適なテンポを両立することが難しかった、初期のCD-ROM作品らしい問題点です。
戦闘演出を簡略化する設定などは用意されていないため、基本的には毎回のアニメーションを見ながら進めることになります。レトロRPGに慣れていない場合は、移動よりも戦闘に時間がかかる印象を受けるかもしれません。
仲間が一人でも倒れると全滅する
PCエンジン版では、仲間のうち一人でも戦闘不能になると、パーティー全体が敗北扱いになります。残った仲間だけで戦い続けることはできません。
そのため、敵を倒すことだけでなく、全員の体力を維持することが重要です。あと一度攻撃すればボスを倒せそうな場面でも、体力が減った仲間を先に回復しなければ、敵の攻撃によって全滅する危険があります。
戦闘は素早さをもとに行動順が決まるため、回復を選んでも敵が先に動く場合があります。体力が残り少なくなってから回復するのではなく、早めに術や道具を使用する判断が必要です。
通常の敵との戦闘でも、一人に攻撃が集中すると敗北につながります。ボス戦だけでなく、長いダンジョンを進む際にも緊張感が続く仕様です。
全滅すると所持金が半分になる
戦闘で全滅すると宿屋へ戻され、所持している「両」が半分になります。経験値まで失うわけではありませんが、装備や道具を購入するためのお金が大きく減ってしまいます。
本作では仲間一人の戦闘不能が全滅につながるため、所持金を失う機会も多くなりがちです。高額な装備を購入するためにお金を貯めている途中で敗北すると、再び稼ぎ直さなければなりません。
危険な地域や初めて入るダンジョンへ向かう前には、預かり所へお金を預けておくことが重要です。持ち歩く金額を減らしておけば、全滅した場合の損失を抑えられます。
厳しいペナルティではありますが、預かり所を利用し、無理をせず町へ戻れば対策できます。段上げや道具の準備だけでなく、所持金の管理も攻略の一部となっています。
「しらべる」コマンドの位置が分かりにくい
本作の「しらべる」コマンドは、ジライアが立っている足元ではなく、向いている方向の一歩先を調査します。宝箱や人物など、目に見える対象を調べる場合は大きな問題になりません。
しかし、床や壁に隠された仕掛けを探す場面では、正しい位置に立ち、正しい方向を向かなければ反応しません。調べたい場所の上に立ってコマンドを使用しても、別のマスを調べることになります。
序盤から中盤には、床下へ続く隠し通路の入口を探す場面があります。このイベントでは、入口がある場所の一歩手前に立ち、向きを合わせて調べる必要があります。
現在のRPGではキャラクターの足元や周囲をまとめて調べる仕様も多いため、操作に慣れていないとイベントの進め方が分からなくなる可能性があります。町の住人から得た情報を確認しながら、周囲の床を向きを変えて調べることが必要です。
ジライアがほとんど話さない
『天外魔境 ZIRIA』はキャラクターボイスを大きな特徴としていますが、主人公のジライアが話す場面は限られています。オープニングなど一部を除き、基本的には無口な主人公として物語が進みます。
主人公へプレイヤー自身を重ねる形式は、当時のRPGでは珍しくありません。主人公が余計な発言をしないことで、プレイヤーが自分の意思で冒険している感覚を持ちやすくなります。
一方で、ツナデ、オロチ丸、ホテイ丸、大門教十三人衆などが音声付きで個性的な会話を見せるため、ジライアだけ存在感が弱く感じられる場合があります。
特に感情を表す重要な場面でも、周囲の人物が会話を進めることが多く、主人公が何を考えているのか分かりにくい部分があります。この点はXbox 360版で大きく見直され、ジライアが積極的に話すようになりました。
剣技を自由に選んで使用できない
ジライアは各地の剣豪と出会うことで、「ボクデン斬り」「ムサシ斬り」「ジュウベイ斬り」「シュウサク斬り」などの剣技を習得します。
新しい技を覚える要素は成長を実感しやすく、各地の剣豪を探す目的にもなります。しかし、習得した剣技を戦闘コマンドから自由に選ぶことはできません。
剣技は通常攻撃を行った際に一定の確率で発動します。強力な攻撃ではあるものの、必要な場面で狙って使えないため、必殺技というより会心の一撃に近い存在です。
ボス戦で発動すれば有利になりますが、プレイヤーが戦術へ組み込むことは難しくなっています。せっかく複数の剣技を習得しても、それぞれを使い分ける楽しさが少ない点は惜しい部分です。
防具の効果を実感しにくい
PCエンジン版では、防具を変更しても敵から受けるダメージの違いを実感しにくいという意見があります。武器を新しくした場合は攻撃力の変化が分かりやすい一方、防具は性能の差が見えにくくなっています。
資料の中には、防具の防御値が正しく設定されていないのではないかという説もあります。ただし、公式に確認された仕様とは限らないため、記事では不具合と断定しない方が安全です。
装備品と道具の所持枠に関わる場合は、防具を持つよりも回復道具を優先した方がよいと感じる場面もあります。特に長いダンジョンでは、被ダメージの軽減よりも、回復できる回数を増やす方が攻略しやすい場合があります。
防具をまったく装備しなくてもよいと断定することはできませんが、価格に対して効果が分かりにくい装備があることは、プレイヤーを迷わせる要因となっています。
終盤のダンジョンが長い
本作には広いフィールドだけでなく、長いダンジョンも数多く登場します。特に終盤の江戸城は規模が大きく、十分な準備をせずに入ると途中で回復手段が不足しやすくなっています。
敵との遭遇率も高いため、道順を探している間にも体力や術を消費します。一度で最後まで進もうとすると全滅の危険が高く、何度か町へ戻りながら攻略することになります。
終盤では敵から得られる経験値が増えるため、戦闘を繰り返すことで段を上げやすくなります。段が十分に上がると敵の攻撃が当たりにくくなり、弱い敵が逃げることもあるため、育成によって負担を減らせます。
長いダンジョンは冒険の規模を感じさせる要素でもありますが、ロード、エンカウント率、戦闘アニメーションと組み合わさることで、攻略に多くの時間が必要です。
現在遊ぶ場合はテンポの違いに注意
『天外魔境 ZIRIA』の問題点は、ゲームが進行できなくなるような致命的なものばかりではありません。段を上げる、お金を預ける、回復道具を準備する、危険を感じたら町へ戻るといった方法で対策できる部分も多くあります。
一方で、ロードや戦闘アニメーションは、プレイヤー側の工夫だけでは短縮できません。現在のRPGの速い進行に慣れている場合は、町やダンジョンを移動するだけでも時間がかかると感じる可能性があります。
本作を遊ぶ際は、短時間で物語を進めるよりも、段上げや町の探索を含めてじっくり楽しむ方が向いています。移動や戦闘の長さも、当時の大作RPGらしい部分として受け入れられるかどうかで評価が変わります。
問題点があっても挑戦する価値はある
ロードの多さ、高いエンカウント率、厳しい全滅条件など、PCエンジン版には遊びにくさが残されています。特に現在の快適なRPGと比べると、同じ場所を何度も往復することや、戦闘に時間がかかることが気になりやすいでしょう。
しかし、これらの問題点を含めても、音声やアニメーションを使った演出、広大なジパング、個性的な登場人物、歯応えのあるダンジョンなど、本作でしか味わえない魅力があります。
CD-ROM²が登場して間もない時期に、これだけ大規模なRPGを完成させたこと自体が大きな挑戦でした。現在遊ぶ場合は不便な部分を理解したうえで、シリーズの原点や当時の技術を体験する作品として楽しむのがおすすめです。
『天外魔境 ZIRIA』の移植版・収録版・リメイク版

『天外魔境 ZIRIA』は、1989年に発売されたPCエンジン CD-ROM²版を原点として、SUPER CD-ROM²、携帯電話、PSP、PS3、Xbox 360などへ展開されました。ただし、すべてが同じ内容を収録した単純移植ではありません。
PCエンジン版をほぼそのまま収録した作品がある一方、Xbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』は、ストーリー、グラフィック、戦闘システム、キャラクター設定を大きく作り直したフルリメイクです。さらに、2010年に配信された『天外魔境 ZIRIA Premium Edition』は、Xbox 360版をもとに携帯電話向けへ再構成されています。
作品ごとに内容や特徴が異なるため、オリジナル版を遊びたいのか、システムを一新したリメイク版を遊びたいのかによって選択肢が変わります。ここでは、『天外魔境 ZIRIA』が展開された主な機種と、それぞれの違いを紹介します。
『天外魔境 ZIRIA』の主な移植・収録作品一覧
| 作品・配信版 | 対応機種 | 発売・配信年 | 主な特徴 |
| 天外魔境 ZIRIA | PCエンジン CD-ROM² | 1989年 | シリーズ第1作となるオリジナル版 |
| 天外魔境 ZIRIA | SUPER CD-ROM² | 1992年 | キャンペーンで配布された非売品版 |
| 天外魔境 ZIRIA | iアプリ | 2004年 | PCエンジン版を携帯電話向けに移植 |
| 天外魔境 ZIRIA | EZアプリ | 2005年 | PCエンジン版をもとにした携帯アプリ版 |
| 天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜 | Xbox 360 | 2006年 | シナリオやシステムを作り直したフルリメイク |
| 天外魔境 ZIRIA | Vアプリ | 2006年 | 携帯電話向けに配信された移植版 |
| PC Engine Best Collection 天外魔境コレクション | PSP | 2008年 | PCエンジン版を収録したオムニバス作品 |
| 天外魔境 ZIRIA Premium Edition | iアプリ | 2010年 | Xbox 360版をもとに2Dで再構成 |
| 天外魔境 ZIRIA | PSP・PS3 | 2010年 | ゲームアーカイブスで配信されたPCエンジン版 |
発売年や配信年だけを見ると同じ作品が何度も移植されているように見えますが、内容は大きく3種類に分けられます。PCエンジン版を移植した作品、Xbox 360で作り直したフルリメイク版、そのXbox 360版を携帯電話向けに再構成した『Premium Edition』です。
SUPER CD-ROM²版
SUPER CD-ROM²版『天外魔境 ZIRIA』は、PCエンジンDuo購入者を対象としたキャンペーンで配布された非売品です。1992年10月から12月にかけて実施されたキャンペーンで、対象者の先着30,000名に配布されました。
応募する際には、購入日が記載されたPCエンジンDuoの保証書のコピーを送り、送料や手数料として380円分の切手を同封する必要がありました。そのため、店頭で通常販売されたソフトではありませんが、完全に無料で受け取れる形式でもありませんでした。
ゲーム内容は1989年に発売されたCD-ROM²版と基本的に同じです。新しいストーリーやキャラクター、追加ダンジョンなどは収録されておらず、オリジナル版をSUPER CD-ROM²向けに調整したものとなっています。
主な違いは読み込み方法です。通常版よりもロードが発生する回数は減っていますが、一回あたりの読み込み時間は長くなっています。細かく何度も読み込む通常版と、回数を減らしてまとめて読み込むSUPER CD-ROM²版では、プレイ中の感覚が異なります。
ディスク、説明書、ケースの裏面には非売品であることが記載され、通常版とはパッケージデザインも異なります。ゲーム内容だけを楽しみたい場合は大きな違いがありませんが、PCエンジンの実機ソフトを集めている場合は、通常版と合わせてコレクションの対象となる作品です。
携帯電話向けの『天外魔境 ZIRIA』
2000年代には、PCエンジン版をもとにした携帯電話向けアプリも配信されました。2004年にFOMA 90xシリーズ向けのiアプリ版、2005年にBREW対応機種向けのEZアプリ版、2006年にボーダフォンライブ向けのVアプリ版が登場しています。
携帯アプリ版はPCエンジン版を基礎としながら、携帯電話の画面や操作方法に合わせて調整された作品です。PCエンジン版で使われていたビジュアルシーンも、各通信サービスで利用できる動画形式を使って再現されました。
家庭用ゲーム機の作品を携帯電話で遊べるようにした移植ですが、当時の端末性能や通信環境に合わせた変更も加えられています。携帯電話向けにテンポや操作を調整しながら、ストーリーや世界観の規模を保っている点が特徴です。
これらは現在のスマートフォン向けアプリではなく、フィーチャーフォン向けに提供された作品です。サービス終了や対応端末の減少によって、現在ではプレイ環境を整えることが難しくなっています。
PSP『天外魔境コレクション』
2008年7月31日には、PSP用ソフト『PC Engine Best Collection 天外魔境コレクション』が発売されました。PCエンジンで発売された天外魔境シリーズの作品をまとめたオムニバスソフトです。
『天外魔境 ZIRIA』だけでなく、『天外魔境II 卍MARU』『天外魔境 風雲カブキ伝』『カブキ一刀涼談』も収録されています。シリーズの初期作品を一つのソフトで遊べるため、『ZIRIA』から続編までまとめて体験したい人に向いた内容です。
収録されている『天外魔境 ZIRIA』は、Xbox 360版のようなリメイクではなく、PCエンジン版をもとにした移植です。グラフィックやシナリオ、戦闘システムも基本的にオリジナル版に準じています。
PCエンジン本体やCD-ROM²を用意しなくても遊べることが大きな利点でした。また、携帯機であるPSPへ収録されたことで、長編RPGを少しずつ進めやすくなっています。
PSP・PS3のゲームアーカイブス版
2010年10月20日には、PCエンジンアーカイブスの一作品として、PSPとPS3向けに『天外魔境 ZIRIA』が配信されました。内容はPCエンジン版をもとにしたもので、Xbox 360版のシナリオや3Dグラフィックは収録されていません。
ゲームアーカイブス版では、実機のCD-ROM²版で気になりやすかった読み込みの負担が軽くなっています。オリジナルのグラフィックやシステムを保ちながら、実機版より快適に進めやすいことが特徴でした。
単体で『ZIRIA』だけを遊びたい場合はゲームアーカイブス版、ほかのPCエンジン版シリーズもまとめて遊びたい場合はPSPの『天外魔境コレクション』という選択肢がありました。
ただし、ゲームアーカイブスの販売状況や新規購入の可否は変わる可能性があります。記事内で現在の購入方法を案内する場合は、PlayStation Storeの最新情報を確認したうえで記載する必要があります。
Xbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』
2006年3月23日に発売された『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』は、PCエンジン版をXbox 360向けに作り直したフルリメイクです。単にグラフィックを変更しただけではなく、ストーリー、キャラクター設定、戦闘、術、イベントなどが大幅に再構築されています。
PCエンジン版は、開発途中で当初のシナリオやゲームシステムを大きく変更して完成した作品でした。Xbox 360版では、製品版で削除・変更された原案の一部を取り入れ、シリーズの設定も加えながら物語を作り直しています。
グラフィックは2Dから3Dへ変更され、戦闘画面にはジライアたち味方キャラクターも表示されます。通常攻撃や術には専用のモーションが用意され、戦闘ボイスや仲間同士の連携技も追加されました。
PCエンジン版ではほとんど話さなかったジライアも、Xbox 360版ではイベント中に頻繁に会話します。月姫がメインヒロインとして描かれ、ジライアが彼女を守るために行動する場面も増えました。
奥義、召喚、陣形、連携技などが加わり、PCエンジン版にあった「ぬすむ」「うそなき」「ながしめ」といった固有コマンドは削除されています。ツナデも巻物を使えるようになり、3人それぞれが術を使用できる戦闘バランスへ変更されました。
物語やゲームシステムが大きく異なるため、Xbox 360版はオリジナル版の上位互換ではありません。PCエンジン版の内容をそのまま豪華にした作品ではなく、同じ登場人物や基本設定を使った別の『ZIRIA』として楽しむ作品です。
iアプリ『天外魔境 ZIRIA Premium Edition』
2010年6月16日には、iアプリ向けに『天外魔境 ZIRIA Premium Edition』が配信されました。こちらはPCエンジン版ではなく、Xbox 360版『遥かなるジパング』をもとに作られた作品です。
Xbox 360版の3Dグラフィックをそのまま移植するのではなく、携帯電話向けに2Dグラフィックへ描き直しています。一方で、Xbox 360版で再構築されたストーリー、ゲームシステム、アニメーションムービーなどは引き継がれました。
主要キャラクターだけでなく、村や町にいる住人にも新しいボイスが追加され、作品全体のフルボイス化が進められています。携帯電話向けRPGでありながら、音声演出へ力を入れた作品です。
物語は全12章に分けて配信され、追加ダンジョンや機能の拡張も行われました。Xbox 360版を携帯電話向けに縮小しただけではなく、端末に合わせて作り直した「リメイク版のリメイク」といえる内容です。
オリジナル版とリメイク版の選び方
『天外魔境 ZIRIA』の原点を体験したい場合は、PCエンジン版をもとにした移植作品が適しています。2Dグラフィック、キャラクター固有コマンド、厳しい全滅条件など、1989年版ならではのゲームバランスを楽しめます。
- シリーズ第1作の内容をそのまま体験したい場合はPCエンジン版系統
- 初期の天外魔境シリーズをまとめて遊びたい場合はPSP『天外魔境コレクション』
- 再構築された物語や3D戦闘を楽しみたい場合はXbox 360版
- Xbox 360版の物語を2Dで楽しみたい場合は『Premium Edition』
PCエンジン版とXbox 360版では、同じジライア、ツナデ、オロチ丸が登場しても、人物の描かれ方や物語上の役割が異なります。どちらか一方だけで作品のすべてを理解できるというより、二つを遊ぶことで、『ZIRIA』が当初目指していた世界と、1989年に完成した作品の違いを比較できます。
現在遊ぶ場合は販売・配信状況の確認が必要
『天外魔境 ZIRIA』は複数の機種へ展開されましたが、携帯アプリ版など、すでにサービスが終了している作品もあります。過去にダウンロード販売されていた作品でも、現在は新規購入できない場合があります。
また、SUPER CD-ROM²版やPSP版、Xbox 360版は中古市場で探すことになります。中古価格は在庫や状態によって変わるため、記事内で価格を紹介する場合は確認した日付を記載する必要があります。
オリジナル版を実機で遊ぶ場合は、PCエンジン本体だけでなく、CD-ROM²または対応する本体とシステムカードなどが必要です。ソフトを購入する前に、手持ちの本体で起動できるか確認しておきましょう。
移植版やリメイク版は、それぞれに異なる価値があります。歴史的なオリジナル版を体験するのか、遊びやすさや物語を強化したXbox 360版を選ぶのか、自分が重視する部分に合わせて選ぶことが大切です。
Xbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』の変更点
『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』は、2006年3月23日にXbox 360向けに発売されたフルリメイク作品です。1989年のPCエンジン版をそのまま3D化した移植ではなく、シナリオ、キャラクター設定、戦闘システム、グラフィックなどを大幅に作り直しています。
PCエンジン版の基本となる世界観や、ジライア、ツナデ、オロチ丸が大門教と戦う構図は受け継がれています。しかし、開発時に変更・削除された原案の要素を取り入れて物語を再構築しているため、イベントの流れや人物同士の関係、最終的に戦う敵まで異なります。
そのため、Xbox 360版はPCエンジン版の完全な上位互換ではありません。同じ題材を使いながら、別の方向から『ZIRIA』の物語を描いた作品として見ると、両作品の違いを楽しみやすくなります。
Xbox 360版の基本情報
| 項目 | 内容 |
| タイトル | 天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜 |
| ジャンル | RPG |
| 対応機種 | Xbox 360 |
| 発売日 | 2006年3月23日 |
| 発売元 | ハドソン |
| 開発元 | ハドソン、レッド・エンタテインメント、スティング |
| 発売時価格 | 6,800円(税抜) |
| レーティング | CERO:全年齢対象 |
| 作品形態 | PCエンジン版をもとにしたフルリメイク |
ゲーム部分の開発には、『天外魔境II MANJI MARU』のゲームキューブ・PlayStation 2版を手掛けたスティングが参加しています。脚本は『天外魔境 風雲カブキ伝』や『天外魔境ZERO』などにも関わった荒井弘二、音楽はPCエンジン版にも参加した小久保隆が担当しました。
原案の要素を取り入れてシナリオを再構築
PCエンジン版は、開発途中でゲームシステムやシナリオが大きく変更されました。当初はアクション要素を含む戦闘が検討され、物語にも製品版では使用されなかった設定や台詞が存在していました。
Xbox 360版では、PCエンジン版をそのまま再現するのではなく、開発途中で変更された原案の一部を取り入れて物語を再構築しています。PCエンジン版のタイトル画面後に流れるデモでのみ使用されていた台詞が、ゲーム本編のシナリオへ組み込まれている点も特徴です。
大門教がジパングで活動する理由や、火の一族を構成する種族、マサカドが破壊と殺戮を行った背景なども詳しく描かれます。オリジナル版では説明が少なかった部分に新しい物語を加えることで、登場人物の行動や対立の理由が分かりやすくなりました。
一方で、シナリオが大幅に変わっているため、PCエンジン版で印象的だったイベントが同じ形で登場するとは限りません。物語の大まかな目的は共通していますが、展開や結末は別の作品に近い内容です。
ガマ族・ナメクジ族・ヘビ族の設定を強化
PCエンジン版では、ジライアのガマ族、ツナデのナメクジ族、オロチ丸のヘビ族は、火の一族を構成する分類として描かれていました。Xbox 360版では、この3種族が「化体成山」と呼ばれる半獣の人々であるという設定が追加されています。
化体成山は、動物の性質や力を持つ人々です。ジライアたちは見た目こそ人間に近いものの、それぞれガマ、ナメクジ、ヘビの血を受け継いでいます。
ガマはヘビに弱く、ヘビはナメクジに弱く、ナメクジはガマに弱いという三すくみも、PCエンジン版より明確な属性として扱われます。キャラクター同士の会話だけでなく、種族の歴史や対立にも関わる設定へ発展しました。
また、敵側にもムカデ族や土蜘蛛一族など、化体成山に属する人物が登場します。これにより、火の一族だけが特別な存在なのではなく、ジパングにはさまざまな半獣の種族が暮らしていることが示されます。
ジライアが物語の中で積極的に話す
PCエンジン版のジライアは、プレイヤーが感情移入する無口な主人公として描かれていました。音声付きのイベントが多数用意されている一方、ジライア本人が話す場面は限られています。
Xbox 360版ではこの方針が変更され、ジライアがイベントの中で積極的に会話するようになりました。仲間への思い、大門教に対する怒り、月姫を守ろうとする決意などが台詞として表現されます。
主人公の考えや性格が明確になったことで、物語の中心人物としての存在感も強まりました。プレイヤー自身を投影する主人公というより、ジライアという一人のキャラクターの物語を追う作品へ変化しています。
ジライアの声はPCエンジン版と同じく岩田光央が担当しています。同じ声優が演じながら台詞量が大幅に増えているため、オリジナル版とは違ったジライアの人物像を楽しめます。
月姫がメインヒロインとして登場
PCエンジン版の月姫は、江戸のショーグンの娘として、江戸に迫る危機をジライアたちへ知らせる人物でした。物語の重要人物ではありますが、ジライアとの関係が深く描かれる場面は多くありません。
Xbox 360版では月姫の出番が増え、メインヒロインとして扱われます。ジライアが月姫を守ろうとする場面や、二人が互いを意識する描写が追加されました。
月姫の存在によって、マサカド復活を阻止するという大きな目的だけでなく、ジライア個人が戦う理由も分かりやすくなっています。無口だった主人公が感情を見せるようになったことと合わせて、物語の人物関係を強化する変更です。
月姫の声は、PCエンジン版では鶴ひろみ、Xbox 360版では神田朱未が担当しています。設定だけでなく、担当声優も変更されたキャラクターです。
オロチ丸と蛇姫の関係を追加
PCエンジン版のヤシャ姫は、ツナデとオロチ丸を捕らえて獄門島へ送る大門教十三人衆の一人です。Xbox 360版では名前が蛇姫へ変更され、オロチ丸の姉という設定が加えられました。
蛇姫は単純に大門教へ従う敵ではなく、ヘビ族の未来や一族への思いを抱えています。大門教に協力してマサカド復活を進める理由も、物語の中で描かれます。
オロチ丸にとっては、自分の姉と戦うことになるため、PCエンジン版よりも重い対立となりました。戦いの後には、蛇姫がオロチ丸の成長を認め、自分が信じるもののために戦うよう言い残します。
この変更により、オロチ丸はショーグンへの忠義だけでなく、ヘビ族や姉との関係にも向き合うことになります。リメイク版では、火の一族3人の中でも特に人物背景が深く描かれたキャラクターです。
キャラクターデザインを一新
Xbox 360版では、ジライア、ツナデ、オロチ丸をはじめとする登場人物のデザインが描き直されています。PCエンジン版の特徴を残しながら、2000年代の作品に合わせたデザインへ変更されました。
ジライアは主人公らしい力強い外見となり、ツナデは明るく活発な性格が伝わるデザイン、オロチ丸は冷静で端正な雰囲気を強めています。
大門教十三人衆も、変身前と変身後の姿が3Dグラフィックに合わせて作り直されました。キングワーム、キュウビ、アラクネー、クラーケンなど、怪物としての姿も分かりやすく表現されています。
ただし、キャラクターデザインの印象と、ゲーム中の3Dモデルの出来は別に評価する必要があります。一部の人物はポリゴンモデルや表情に違和感があるという意見もあり、見た目については好みが分かれやすい部分です。
グラフィックを2Dから3Dへ変更
PCエンジン版では、フィールド、町、ダンジョン、戦闘を2Dグラフィックで表現していました。Xbox 360版ではゲーム全体が3D化され、立体的なジパングを移動します。
町やダンジョンをさまざまな角度から見られるようになり、建物や地形の高さも表現されました。PCエンジン版では小さなキャラクターとマップで描かれていた場所が、より具体的な空間として作り直されています。
イベントシーンでは3Dキャラクターによる会話だけでなく、一部の重要な場面にアニメーションムービーも使用されています。PCエンジン版のビジュアルシーンをそのまま高画質化するのではなく、リメイク版の物語に合わせて新しく制作されています。
3D化によって表現力は高まりましたが、カメラが主人公に近く、周囲を確認しにくい場面もあります。グラフィックの強化が、そのまま移動の快適さにつながっているわけではありません。
味方が表示される3D戦闘
Xbox 360版の戦闘は、PCエンジン版と同じくコマンドを選択するターン制です。ただし、戦闘画面は完全な3Dとなり、敵だけでなくジライアたち味方キャラクターも表示されます。
通常攻撃、術、奥義などには専用のモーションが用意され、キャラクターが敵へ近づいて攻撃する様子を確認できます。戦闘中の掛け声や台詞も追加され、視覚と音声の両方で演出が強化されました。
PCエンジン版では敵の姿を正面から見る形式だったため、味方側の動きは表示されませんでした。Xbox 360版ではパーティー全体が画面内で動くため、仲間と一緒に戦っている感覚が分かりやすくなっています。
戦闘の基本はコマンド式のままなので、アクション操作を求められることはありません。オリジナル版の分かりやすさを残しながら、演出と戦術を増やしたシステムです。
奥義・召喚・陣形・連携技を追加
戦闘には、新たに奥義、召喚、陣形、連携技などが追加されました。通常攻撃と術を中心に戦うPCエンジン版よりも、状況に応じて選べる行動が増えています。
- 奥義はキャラクターごとの強力な攻撃や能力を使用するシステム
- 召喚は神獣などの力を借りて戦闘を有利にするシステム
- 陣形は仲間の配置によって能力や戦い方を変えるシステム
- 連携技は複数の仲間が協力して攻撃するシステム
これらの要素により、単純に攻撃と回復を繰り返すだけでなく、仲間の組み合わせや行動順を考えた戦いができるようになりました。
特に連携技は、ジライア、ツナデ、オロチ丸が3人で戦うリメイク版の特徴を生かした要素です。仲間同士のつながりが、物語だけでなく戦闘にも反映されています。
固有コマンドを削除
PCエンジン版にあったジライアの「ぬすむ」、ツナデの「うそなき」、オロチ丸の「ながしめ」は、Xbox 360版では削除されています。
これらはキャラクターの性格を表した個性的な行動でしたが、効果が安定しにくく、戦術へ組み込みにくい面もありました。リメイク版では奥義や連携技などへ置き換えることで、戦闘中に使いやすい行動を増やしています。
ゲームとしての戦術は広がっていますが、PCエンジン版にあった遊び心のあるコマンドがなくなったことを寂しく感じる場合もあります。システムの便利さを優先した変更といえるでしょう。
ツナデも巻物を使える
PCエンジン版のツナデは術を使用できず、斧による物理攻撃を中心に戦うキャラクターでした。Xbox 360版では、ジライアやオロチ丸と同じように巻物を使用できるようになっています。
これにより、ツナデも攻撃だけでなく、回復や補助を担当できます。敵や状況に合わせて3人の役割を変更できるため、パーティー全体の戦術が広がりました。
一方で、ツナデが物理攻撃だけを得意とする明確な役割は弱くなっています。オリジナル版の分かりやすい役割分担を残すのではなく、全員が複数の行動を選べる方向へ調整されています。
巻物の名称をシリーズに合わせて変更
Xbox 360版では、巻物の名称が後のシリーズ作品に合わせて変更されています。PCエンジン版で使われていた名称の一部が、『天外魔境II 卍MARU』などで知られる名称へ統一されました。
たとえば、「粉火」は「鬼火」、「涼風」は「青松」、「雲切」は「宿木」などに変更されています。効果や入手方法にも調整が加えられており、名称だけを置き換えたわけではありません。
シリーズ作品を遊んできた人にとっては、見慣れた術名で理解しやすくなっています。一方で、PCエンジン版独自の名称は失われているため、オリジナル版との違いが目立つ部分です。
敗北条件と所持金半減を変更
PCエンジン版では、仲間のうち一人でも戦闘不能になると全滅扱いになり、所持金が半分になります。この厳しい仕様は、本作の難易度を高める大きな要因でした。
Xbox 360版では、敗北条件が「ジライアが瀕死状態になること」へ変更されています。ツナデやオロチ丸が倒れても、ジライアが戦える状態であれば戦闘を続けられます。
さらに、敗北時に所持金が半分になるペナルティも廃止されました。PCエンジン版より立て直しやすくなり、長いダンジョンやボスへ挑戦する負担が軽減されています。
ただし、主人公のジライアが倒れると敗北するため、ジライアの体力管理は重要です。全員を均等に守るPCエンジン版から、主人公を中心に戦うバランスへ変化しました。
預かり所の使い勝手を改善
PCエンジン版では、預かり所へお金を預ける際に使いにくさを感じる場面がありました。Xbox 360版では、1両単位で自由に預けられるようになっています。
敗北時の所持金半減はなくなりましたが、お金を管理しやすくなったことで、装備や道具の購入計画を立てやすくなりました。細かな変更ではあるものの、長編RPGを進めるうえで便利な改善です。
Xbox Liveと実績に対応
Xbox 360版はXbox Liveに対応し、オンライン要素も用意されていました。闇闘鬼会の順位戦で得た成績を、オンラインランキングへ登録できます。
また、Xbox 360の実績システムにも対応しています。物語の進行、戦闘、収集など、ゲーム内の条件を満たすことで実績を解除できます。
実績解除によって得られるゲーマースコアを使い、オンラインショップ「足下商店」でゲーム中に使用できる道具を購入する仕組みもありました。
これらのオンライン機能は、現在のサービス状況によって利用できない可能性があります。現在遊ぶ場合は、本編を進めるためにオンライン接続が必要なのか、利用できる機能が残っているのかを確認しておく必要があります。
ミニゲームやクリア後要素を追加
Xbox 360版には、本編以外にもミニゲームやクリア後のおまけが用意されています。物語を進めるだけでなく、寄り道ややり込みを楽しめる内容が増えました。
闇闘鬼会の順位戦など、戦闘を利用した追加要素もあり、育てたキャラクターの強さを試せます。オリジナル版よりも、本編クリア後まで遊び続けられる構成です。
追加要素の中にはXbox Liveを利用するものも含まれるため、現在ではすべてを発売当時と同じ形で楽しめるとは限りません。それでも、本編そのものには多くの追加イベントやシステムが収録されています。
最終ボスをバールダイモンへ変更
PCエンジン版では、物語の最後に復活したマサカドが立ちはだかります。Xbox 360版ではマサカドの過去や行動の理由が詳しく描かれ、最終ボスも変更されました。
Xbox 360版の最終ボスは、異国から来た大門教の神・バールダイモンです。大門教の背景や邪神斎の立場が再構成されたことで、物語の最後に戦う相手もPCエンジン版とは異なります。
この変更は、Xbox 360版が単純な再現ではないことを示す大きな要素です。マサカドを倒して終わるPCエンジン版と、大門教の神へ戦いを挑むXbox 360版では、物語の意味も変化しています。
PCエンジン版とXbox 360版の違い一覧
| 比較項目 | PCエンジン版 | Xbox 360版 |
| グラフィック | 2D | 3D |
| シナリオ | 製品版向けに再構成 | 原案要素を加えて大幅に再構築 |
| ジライアの台詞 | 一部を除いて少ない | 全編で頻繁に話す |
| 月姫 | 江戸の重要人物 | メインヒロイン |
| 火の一族 | ガマ・ナメクジ・ヘビの分類 | 化体成山という半獣の種族 |
| 戦闘画面 | 敵を正面から表示 | 味方を含む3D戦闘 |
| 追加システム | なし | 奥義・召喚・陣形・連携技 |
| 固有コマンド | ぬすむ・うそなき・ながしめ | 削除 |
| ツナデの術 | 使用できない | 使用できる |
| 敗北条件 | 仲間一人の戦闘不能で全滅 | ジライアが瀕死になると敗北 |
| 敗北時の所持金 | 半分になる | 半減しない |
| オンライン要素 | なし | ランキング・実績・足下商店 |
| 最終ボス | マサカド | バールダイモン |
Xbox 360版は別作品として楽しめるフルリメイク
Xbox 360版は、PCエンジン版の弱点を改善しながら、物語やキャラクター設定にも大きな変更を加えています。主人公が話すようになり、月姫や蛇姫との関係が詳しく描かれたことで、人物を中心とした物語が強化されました。
戦闘では奥義、召喚、陣形、連携技が加わり、敗北条件も緩和されています。PCエンジン版より遊びやすくなった一方、固有コマンドの削除など、オリジナル版独自の要素がなくなった部分もあります。
グラフィック、物語、戦闘のすべてが作り直されているため、PCエンジン版を遊んだ人でも新しい作品として楽しめます。反対に、Xbox 360版だけを遊んでも、1989年版の内容をそのまま体験したことにはなりません。
シリーズの原点を知りたい場合はPCエンジン版、原案を取り入れた新しい物語や3D戦闘を楽しみたい場合はXbox 360版が向いています。両方を比較すると、『天外魔境 ZIRIA』が開発当初に目指していた内容と、実際に発売された作品の違いも見えてきます。
Xbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』の問題点と評価
Xbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』は、PCエンジン版の物語やシステムを大幅に作り直したフルリメイクです。3Dグラフィック、仲間との連携技、奥義、召喚、陣形などが追加され、主人公のジライアや月姫を中心とした人物描写も強化されています。
PCエンジン版にあった厳しい全滅条件や所持金半減のペナルティも見直され、長編RPGとして遊びやすくなりました。一方で、3D化したことによるカメラの見づらさや、一部のキャラクターモデルに違和感があるなど、リメイク版ならではの問題も残されています。
オリジナル版を忠実に再現した作品ではないため、PCエンジン版と同じ内容を期待すると印象が異なる可能性があります。しかし、別の形で『天外魔境 ZIRIA』の物語を楽しめる作品として見ると、多くの追加要素を備えた丁寧なリメイクです。
移動時のカメラが主人公に近い
Xbox 360版で特に気になりやすいのが、移動時のカメラです。カメラがジライアの近くに配置されているため、周囲の地形や進行方向を一度に確認しにくい場面があります。
広い場所では大きな問題にならなくても、曲がり角の多い町や複雑なダンジョンでは、画面に映っていない方向を何度も確認しなければなりません。目的地や通路を探す際に、キャラクターを動かしながら周囲を見渡す必要があります。
PCエンジン版は画面を上から見下ろす2D形式だったため、周囲の通路や建物の配置を把握しやすくなっていました。Xbox 360版では立体的な景色を楽しめる一方、マップ全体の見通しは悪くなっています。
3D化によって建物や地形の高さを表現できるようになりましたが、探索のしやすさという点では、必ずしもPCエンジン版より快適になったとはいえません。
エリア移動後に方向を見失いやすい
建物から外へ出たときや、ダンジョン内で別のエリアへ移動したときには、画面が切り替わった直後の方向が分かりにくい場合があります。
場面によっては、ジライアが画面手前を向いた状態で表示されます。そのまま方向キーを入力すると、先ほど通ってきた入口へ戻ってしまうことがあり、どちらへ進めばよいのか迷いやすくなっています。
特に同じような景色が続くダンジョンでは、自分がどの方向から入ってきたのかを把握しにくくなります。エリアを移動した直後は、周囲の目印や地形を確認してから進む方が安全です。
ゲームの進行が止まるほどの問題ではありませんが、長いダンジョンを探索する際には、小さな迷いやすさが積み重なって負担になります。
一部の3Dモデルは評価が分かれやすい
主要キャラクターのデザインはXbox 360版向けに描き直され、ジライア、ツナデ、オロチ丸などはPCエンジン版より現代的な外見になりました。
一方で、設定画やイラストの印象と、ゲーム中に表示される3Dモデルの印象が異なるキャラクターもいます。顔の形、表情、体の動きなどに違和感を持つ可能性があり、人物の見た目については評価が分かれやすい部分です。
2006年に発売されたXbox 360初期の作品であることを考えると、当時の3D表現として理解できる部分もあります。それでも、キャラクターを大きく映すイベントシーンでは、モデルの作りが気になりやすくなっています。
ただし、すべてのキャラクターに問題があるわけではありません。敵の変身後の姿や、巨大な怪物、各地域の背景など、3D化によって迫力を増した要素もあります。
PCエンジン版の面影が薄い
Xbox 360版は、グラフィックだけでなく、物語、人物設定、戦闘システム、術の名称なども変更されています。そのため、PCエンジン版の内容をそのまま豪華にした作品ではありません。
オリジナル版にあった「ぬすむ」「うそなき」「ながしめ」などの固有コマンドは削除され、奥義や連携技へ置き換えられました。ジライアの台詞や月姫の役割も大きく変わり、最終ボスもマサカドからバールダイモンへ変更されています。
PCエンジン版を忠実に再現したリメイクを期待している場合は、変化の大きさに戸惑う可能性があります。特に、オリジナル版の簡潔な物語や2Dグラフィック、独特な固有コマンドを好む人にとっては、別作品に近く感じられるでしょう。
反対に、同じ物語をそのまま繰り返すのではなく、新しい『ZIRIA』として楽しみたい場合は、多くの変更が長所になります。リメイク作品に何を求めるかによって評価が変わる部分です。
戦闘は分かりやすいが新鮮さは控えめ
Xbox 360版の戦闘は、3Dグラフィックや連携技などを取り入れながらも、基本はオーソドックスなターン制です。アクション操作を必要とせず、コマンド式RPGに慣れていれば遊び方を理解しやすくなっています。
一方で、Xbox 360の性能を使った新しいゲームシステムを期待すると、戦闘そのものに目新しさを感じにくい可能性があります。奥義、召喚、陣形、連携技は追加されていますが、根本的な遊び方は従来型のRPGです。
これは欠点だけではなく、PCエンジン版の分かりやすさを残した結果でもあります。複雑なリアルタイム戦闘へ変更せず、キャラクターや術を選びながらじっくり戦えることは、本作の遊びやすさにつながっています。
革新的な戦闘を求める作品ではなく、王道的なコマンド式RPGを丁寧に作り直した作品として見るのが適しています。
PCエンジン版より遊びやすくなった部分
Xbox 360版では、PCエンジン版で厳しかった仕様が複数見直されています。特に大きいのが、敗北条件と所持金のペナルティです。
- 仲間一人の戦闘不能で全滅する仕様を廃止
- ジライアが瀕死になるまで戦闘を継続可能
- 敗北時に所持金が半分になるペナルティを廃止
- 預かり所で1両単位からお金を預けられる
- ツナデも巻物を使えるように変更
- 奥義や連携技など、戦闘中の選択肢を追加
PCエンジン版では、敵の攻撃が一人に集中するだけで全滅する危険がありました。Xbox 360版では仲間が倒れても戦闘を続けられるため、ボスの行動を確認しながら立て直す余裕があります。
所持金が半分にならないことも大きな改善です。強敵へ何度か挑戦しても金銭的な損失が少なく、失敗を恐れずに進みやすくなりました。
こうした変更によって、PCエンジン版の高い難易度が緩和され、新しくシリーズへ触れる人でも進めやすいバランスになっています。
仲間との連携を生かした戦闘
Xbox 360版では、ジライア、ツナデ、オロチ丸の3人が協力して攻撃する連携技を使用できます。PCエンジン版ではキャラクターごとの行動が中心でしたが、リメイク版では仲間同士のつながりが戦闘にも反映されています。
連携技には専用の演出が用意され、複数のキャラクターが同時に動いて敵へ攻撃します。通常攻撃や術よりも見た目が華やかで、3D化した戦闘の特徴を感じやすい要素です。
陣形を変更することで、キャラクターの役割や戦い方も調整できます。攻撃を重視するのか、守りや回復を優先するのかを考えながら、敵に合わせて編成を変えられます。
全員が巻物を使えるようになったため、PCエンジン版より役割の自由度も高くなっています。ツナデを物理攻撃だけでなく回復や補助に回すなど、状況に応じた戦い方が可能です。
人物の背景が詳しく描かれる
Xbox 360版では、ジライアが頻繁に話すようになっただけでなく、仲間や敵の過去、戦う理由も詳しく描かれます。
オロチ丸と蛇姫の関係、マサカドがジパングを破壊した理由、ショーグンが大門教を利用しようとした背景など、PCエンジン版では簡潔だった設定が掘り下げられました。
敵側の人物にも、大門教へ協力する事情が加えられています。単に地域を支配する悪役として登場するのではなく、種族や一族の未来を考えて行動する者もいます。
物語の説明が増えたことで、登場人物の行動を理解しやすくなりました。PCエンジン版の簡潔なテンポを好む場合は長く感じる可能性がありますが、人物を中心とした物語を楽しみたい人には大きな魅力です。
アニメムービーと戦闘ボイスを追加
PCエンジン版では、重要なイベントにアニメーションを取り入れたビジュアルシーンが使用されていました。Xbox 360版では、一部の場面が新しいアニメムービーとして描き直されています。
リメイク版のシナリオに合わせた新しい映像が制作されているため、PCエンジン版の場面を高画質化しただけではありません。月姫や蛇姫など、役割が変化した人物にも新しい演出が加えられています。
戦闘中には、通常攻撃や術に合わせてキャラクターが声を出します。物語のイベントだけでなく、日常的な戦闘でも声を聞けるようになり、キャラクターの存在感が強まりました。
同じ台詞を繰り返し聞く場面はあるものの、3人が協力して戦っていることを音声でも実感できます。
クリア後まで遊べる追加要素
Xbox 360版には、ミニゲーム、実績、順位戦、クリア後のおまけなどが用意されています。本編を進めるだけでなく、寄り道ややり込みを楽しめることも評価できる点です。
闇闘鬼会の順位戦では、育てたキャラクターを使って戦い、成績を競えます。発売当時はXbox Liveを通じてランキングへ登録することもできました。
実績解除も用意されているため、物語を一度クリアするだけでなく、条件を満たしながらゲームを遊び込む目的が生まれます。
オンライン機能については、現在すべてを発売当時と同じ状態で利用できるとは限りません。ただし、本編やオフラインで楽しめる追加要素だけでも、PCエンジン版より内容が増えています。
声優の変更と続投
Xbox 360版では、一部の声優がPCエンジン版から変更されています。一方で、同じ役を引き続き担当した声優もいます。
| キャラクター | PCエンジン版 | Xbox 360版 |
| 自来也 | 岩田光央 | 岩田光央 |
| 綱手 | 渡辺菜生子 | 江森浩子 |
| 大蛇丸 | 塩沢兼人 | 子安武人 |
| 月姫 | 鶴ひろみ | 神田朱未 |
| ホテイ丸 | 青野武 | 青野武 |
| 信玄 | 銀河万丈 | 銀河万丈 |
| 水王丸 | 塩屋翼 | 塩屋翼 |
| 邪神斎 | 加藤精三 | 加藤精三 |
| マサカド | 野田圭一 | 野田圭一 |
ジライア役の岩田光央は続投していますが、Xbox 360版では台詞が大幅に増えています。同じ声優でありながら、PCエンジン版では見えにくかったジライアの性格をより詳しく表現しています。
オロチ丸役は塩沢兼人から子安武人へ変更されました。声の違いだけでなく、武器や人物背景も変更されているため、PCエンジン版とは異なる人物像として受け止めやすくなっています。
BGMは一部を残してアレンジ
Xbox 360版では、PCエンジン版の楽曲をもとに、多くのBGMがアレンジされています。3Dグラフィックや新しいイベントに合わせて音楽も作り直され、リメイク版独自の雰囲気が加わりました。
PCエンジン版の音楽へ関わった小久保隆が再び担当しているため、元の作品と大きく離れすぎない音作りとなっています。
坂本龍一が手掛けた楽曲は、Xbox 360版でも引き続き使用されています。シリーズの原点を象徴する音楽を残しながら、新しいBGMと組み合わせています。
オリジナル音源をそのまま聞きたい場合はPCエンジン版、アレンジされた音楽と3D映像を合わせて楽しみたい場合はXbox 360版が適しています。
オリジナル版を遊んだ人にも新しい展開がある
Xbox 360版はストーリーが大幅に変更されているため、PCエンジン版の展開を知っていても、そのまま同じ順番で物語が進むわけではありません。
蛇姫とオロチ丸の関係、月姫の役割、化体成山の設定、バールダイモンの登場など、リメイク版独自の内容が数多く用意されています。
PCエンジン版を遊んだ人は、どの設定が残され、どの部分が変更されたのかを比較しながら楽しめます。同じ場面や人物が別の意味を持って登場することもあり、単なる懐かしさだけでは終わりません。
オリジナル版を知らなくても物語は理解できますが、両方を遊ぶことで、開発当初の原案と製品版の違いをより深く知ることができます。
Xbox 360版の総評
Xbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』は、PCエンジン版を忠実に再現するのではなく、原案や後のシリーズ設定を加えて新しく作り直した作品です。
カメラの見づらさや、一部の3Dモデルに違和感があるなど、快適さや表現面で気になる部分は残されています。また、戦闘は王道的なターン制であり、Xbox 360ならではの革新的なシステムを期待すると、目新しさは控えめです。
その一方で、主人公の台詞、人物の背景、3D戦闘、連携技、アニメムービー、クリア後要素など、多くの部分が丁寧に作り直されています。PCエンジン版の厳しい敗北条件も緩和され、新規プレイヤーでも遊びやすくなりました。
PCエンジン版と同じ内容を求める人よりも、登場人物や世界観を使った新しい『ZIRIA』を楽しみたい人に向いています。オリジナル版を遊んだ人にも、初めてシリーズへ触れる人にも勧めやすい、王道的な和風RPGです。
『天外魔境 ZIRIA』の開発経緯と制作秘話
『天外魔境 ZIRIA』は、最初からPCエンジン用RPGとして企画された作品ではありません。もともとは、東洋の文化を混ぜ合わせた実写映画の企画として始まり、その後にアニメ作品として再構築され、最終的に家庭用ゲームとして発売されました。
さらに、ゲーム化が決定してからも順調に完成したわけではありません。PCエンジン CD-ROM²本体の開発と近い時期に制作が進められたため、ハードの仕様変更やゲームシステムの見直しが繰り返されました。
開発途中には、現在の製品版とは大きく異なるアクション要素を含んだ戦闘も制作されていました。しかし、完成直前に問題が見つかり、最終的にはコマンド式RPGとして作り直されています。
こうした何度もの変更を経て完成したのが、1989年に発売された『天外魔境 ZIRIA』です。ここでは、本作がどのように生まれ、どのような修正を経て製品版へたどり着いたのかを紹介します。
実写映画の企画から始まった『天外魔境』
『天外魔境』の企画は、レッドカンパニーの広井王子が考案した、東洋のさまざまな文化を混ぜ合わせたチャンバラ活劇として始まりました。当初はゲームではなく、実写映画として制作することが想定されていたとされています。
作品の設定構築には、あだちひろしが参加しました。主人公には、江戸時代の読本『自来也説話』や『児雷也豪傑譚』に登場する自来也が選ばれ、その関係者である綱手、大蛇丸も主要人物として設定されました。
自来也、綱手、大蛇丸には、ガマ、ナメクジ、ヘビの三すくみがあります。この関係は後にゲーム版へ引き継がれ、火の一族を構成する3人の勇者として物語の中心に置かれました。
作品名の「天外魔境」は、小栗虫太郎の小説『人外魔境』を意識して付けられたとされています。現実の日本とは異なる、奇妙で異国的な東洋世界を表す名称として採用されました。
映画企画は1986年頃に持ち込まれましたが、実現には至りませんでした。しかし、そこで作られた世界観や人物設定は失われず、その後のアニメ企画やゲーム版へ引き継がれていきます。
アニメ企画として再構築
実写映画の企画が成立しなかった後、『天外魔境』はアニメ作品として再構築されました。東京ムービー新社との企画が進められ、映像作品としての世界観やキャラクターデザインが検討されます。
この時期に、アニメーターの辻野寅次郎がレッドカンパニーへ参加しました。辻野が別の映像企画として考えていた鬼動丸というキャラクターのデザインが、自来也の外見へ取り入れられています。
アニメ企画も最終的には実現しませんでしたが、そこで作られたデザインや映像的な発想は、ゲーム版のビジュアルへ活用されました。
その後、ゲーム版の関連作品としてOVA『天外魔境 自来也おぼろ変』が制作されたため、形を変えながらもアニメ化は実現しています。
ハドソンとの出会いでゲーム化が決定
アニメ企画が進まなくなった後、東京ムービー新社を通じてハドソンが紹介され、『天外魔境』をゲームとして制作する話が始まりました。
レッドカンパニーにとって、本格的な家庭用ゲームの企画へ参加するのは初めてでした。また、『天外魔境』はもともと映画やアニメを想定した大規模な企画だったため、当時の一般的なゲームソフトへ収めるには内容が多すぎるという問題もありました。
そこで注目されたのが、ハドソンが開発を進めていたPCエンジン CD-ROM²です。ROMカセットより多くのデータを収録できるCD-ROMであれば、映像、音声、音楽を含む『天外魔境』の世界をゲームとして表現できる可能性がありました。
正式にゲーム化が決まったのは1987年頃とされます。この段階ではPCエンジン自体も発売前であり、CD-ROM²がどのような性能を持つのかも完全には固まっていませんでした。
本体とソフトを近い時期に開発する状況だったため、通常のゲーム制作とは異なり、ハードの仕様変更に合わせてゲーム側も修正する必要がありました。
CD-ROM²の開発と同時に制作
『天外魔境 ZIRIA』の制作は、PCエンジン CD-ROM²の開発と並行して進められました。レッドカンパニーへCD-ROM開発用の機材が持ち込まれ、ハドソンのスタッフも制作へ参加しています。
しかし、開発途中でハードの仕様が変更されると、それまで作っていたゲームデータやプログラムを調整しなければなりません。CD-ROMを使った家庭用ゲームの制作経験もほとんどなかったため、読み込み、音声、映像の扱いを試しながら開発が進められました。
PCエンジンのスプライト機能、CD-ROMの容量、音声再生など、新しい技術をどのようにRPGへ組み込むかも課題でした。結果として、本作は発売までに複数回の大きな作り直しを経験しています。
製品版にはロードの多さなどの問題が残りましたが、音声付きイベント、アニメーション、CD音源などを長編RPGへ組み込んだことは、開発当時として大きな挑戦でした。
ジパングの地形は古い日本地図を参考に制作
ゲームの舞台となるジパングは、現実の日本をそのまま使った地形ではありません。16世紀の地理学者アブラハム・オルテリウスが作成した日本地図を参考にしながら、独自の形へ再構成されています。
古い時代に海外で描かれた日本地図は、現在の正確な日本列島とは形が異なります。その不正確さが、外国人から見た間違った日本という本作のコンセプトに合っていました。
地名には筑波、信濃、富士、相模、千葉、武蔵、江戸など、日本の地域を思わせる名称が使われています。しかし、配置や文化は現実と異なり、仙人、神獣、ピラミッド、大門教などが混在する世界です。
単に日本の地名を並べるのではなく、古い海外の日本観を地形にまで反映していることが、ジパングの独特な雰囲気につながっています。
第1バージョンは頭身の高いキャラクターで制作
開発初期の第1バージョンでは、PCエンジンのスプライト機能を生かし、頭身の高いキャラクターを画面内で動かす構想がありました。
当時のファミコン作品では、表示できるキャラクターの大きさや数に制限がありました。PCエンジンの性能を示すため、より大きく見栄えのするキャラクターを使用しようとしていたと考えられます。
しかし、プログラムやゲーム全体の構成に問題が見つかり、設定を含めて見直されました。頭身の高いキャラクターを使用したバージョンは製品化されず、次の開発段階へ移ります。
第2バージョンはアクションRPGとして制作
第2バージョンでは、戦闘にアクション要素を取り入れたアクションRPGとして制作が進められました。敵と遭遇すると別の画面やウインドウが表示され、デフォルメされたキャラクターを操作して攻撃や回避を行う形式だったとされています。
通常のフィールドやコマンド画面はRPGに近い一方、戦闘が始まるとアクションへ切り替わる仕組みです。現在発売されているPCエンジン版とは、戦闘の遊び方が大きく異なります。
このバージョンは完成に近づいていたものの、問題点が相次いで見つかり、そのまま発売することはできませんでした。結果として、アクション戦闘を残すのではなく、ゲーム全体を大きく作り直す判断が下されます。
開発に長い時間をかけた戦闘を変更することは大きな決断でしたが、最終的には多くの人が理解しやすいコマンド式RPGへ移行しました。
桝田省治が制作へ参加
当初の発売予定を過ぎても完成の見通しが立たない状況の中、桝田省治が制作へ参加しました。桝田省治は、後に『リンダキューブ』や『俺の屍を越えてゆけ』などを手掛けるゲームクリエイターです。
参加の経緯には複数の説明がありますが、完成時期が決まらない本作の状況を確認したことがきっかけとなり、外部の立場から制作スタッフへ加わったとされています。
桝田省治が一から物語のすべてを書いたわけではありません。あだちひろしが作成していたシナリオや原案をもとに、ゲームとして進行しやすい形へ修正する役割を担いました。
映画やアニメを想定して作られた物語は、プレイヤーが主人公を操作し、自分で町やダンジョンを進むRPGへそのまま入れることが難しい部分があります。そこで、目的地、事件、敵との戦いを順番に体験できる形へ再構成されました。
暗い事件や人物の死など、物語へ緊張感を与える場面も加わり、華やかで奇妙なジパングの世界に重さが生まれています。
戦闘をコマンド式へ変更
桝田省治が参加した後、戦闘はアクション形式から、コマンドを選択するオーソドックスな方式へ変更されました。
プレイヤーは攻撃、術、道具などを選び、素早さをもとに敵味方が行動します。現在の製品版で採用されている戦闘システムは、この大幅な変更を経て完成したものです。
当時は『ドラゴンクエスト』をはじめとするコマンド式RPGが広く知られていました。映像や音声に新しい技術を使いながら、ゲーム部分は多くのプレイヤーが理解しやすい形式へ整えられています。
この変更によって、アクション戦闘を前提に作られていたイベントやシナリオも修正されました。開発途中の要素の一部は削除され、製品版には使用されていない設定や台詞が残ることになります。
削除された原案は小説版やXbox 360版へ活用
製品版へ向けた作り直しでは、当初用意されていたシナリオや設定の一部が削除されました。すべてをゲーム内へ収録することはできず、変更前の原案は別の形で使われています。
あだちひろしによる小説版では、ゲーム版で詳しく描かれなかった人物や出来事が補われています。ゲームと小説のどちらか一方が原作という関係ではなく、共通する原案を使った別の作品として制作されました。
また、2006年のXbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』では、PCエンジン版で変更・削除された原案の一部を取り入れ、シナリオが再構築されています。
PCエンジン版のタイトル画面後に流れるデモには、本編では使用されなかった台詞も含まれていました。Xbox 360版では、そのような原案の要素が物語の中へ組み込まれています。
そのため、PCエンジン版とXbox 360版は、単純な旧作と新作の関係ではありません。開発途中で分かれた異なる『ZIRIA』の形を確認できる作品です。
CD-ROMの容量があってもイベントを削除
CD-ROMは当時のROMカセットと比べて大容量でしたが、好きなだけ映像や音声、イベントを収録できたわけではありません。
新しい媒体で容量に余裕があると考え、さまざまなイベントを追加していった結果、最終的にはデータ量が増え、一部を削らなければならなくなったとされています。
特に東北地方に関係するイベントが削除されたという話もあります。ただし、製品版にも陸羽国や陸奥国など東北を連想させる地域は登場するため、どの場面がなくなったのかは明確ではありません。
大容量のCD-ROMを採用しながら、それでも収まりきらないほど多くの内容を入れようとしていたことが、本作の開発規模を示しています。
坂本龍一が音楽へ参加した経緯
本作では、坂本龍一が音楽プロデュースへ参加し、メインテーマを含む3曲を作曲しています。著名な音楽家が家庭用RPGへ参加したことは、当時としても大きな特徴でした。
坂本龍一がハドソンの東京オフィスを訪れた際、ゲーム音楽へ関心を持っていたことから、将来的に楽曲を依頼する話が進んだとされています。
当時のファミコン音源では、坂本龍一が考える音楽を十分に再現することが難しい状況でした。しかし、CD-ROMであれば録音した音源をそのまま再生できるため、家庭用ゲームでも生音に近い楽曲を使用できます。
このCD-ROMの特徴が、坂本龍一の参加につながりました。映画『ラストエンペラー』が広く知られる前から話が進んでいたこともあり、本作へ楽曲が提供されたと伝えられています。
一部では高額なギャラに関する話もありますが、正確な金額を確認できない場合は、記事内で断定しない方が安全です。
架空の原作『FAR EAST OF EDEN』
本作の原作として表記されているのは、P.H.チャダによる『FAR EAST OF EDEN』です。設定上は、海外の研究者が東洋について記した書物という形になっています。
しかし、P.H.チャダという人物や『FAR EAST OF EDEN』という原作は実在しません。本作の世界観を作るために用意された、架空の著者と書籍です。
海外の研究者が誤解を交えながら日本を紹介したという形式を取ることで、実際の日本とは異なるジパングの文化や歴史を自然に見せています。
武将、妖怪、宗教、ピラミッド、宣教師など、時代や地域の異なる要素が混在していても、外国人から見た間違った日本という設定によって、作品独自の世界として成立しています。
架空の原作まで用意したことは、ゲームの外側にまで世界観を広げるメタ的な演出です。後に小説版も発売されましたが、それは架空の原作をそのまま出版したものではなく、ゲームと共通する原案を使って制作された作品です。
自来也を「ジライア」と読む理由
自来也という名前は、一般的には「じらいや」と読まれます。しかし、本作では主人公の名前を「ジライア」としています。
この読み方は、ローマ字表記にしたときの見た目を重視して、「ZIRIA」というつづりを採用したことに由来するとされています。
日本語として一般的な「ジライヤ」ではなく、「ジライア」としたことで、作品名の『天外魔境 ZIRIA』と主人公の名前を強く結び付けています。
英字だけを見ると別の読み方も考えられますが、ゲーム内では一貫して「ジライア」と呼ばれています。作品名を検索する際にも、「ジライヤ」ではなく「ジライア」が正式な表記です。
開発中のアクション版データが残されていた
開発途中で制作されていたアクション戦闘版は、製品版で使用されなかったため、本来は破棄される予定だったとされています。
しかし、後になってレッドカンパニー側に開発途中のデータが残っていたことが分かりました。現在発売されている製品版とは異なる戦闘や画面を確認できる、貴重なプロトタイプです。
一方で、製品版の完成データは失われたとされる話もあります。そのため、削除されたイベントを追加した完全版を作りたくても、簡単には実現できなかったといわれています。
ただし、データの保管状況や発見の経緯は、開発者の発言や資料によって説明が異なる可能性があります。記事では「残されていたとされる」「失われたといわれている」といった表現に抑えるのが適切です。
隠し要素「名作昔話じらいあ」
PCエンジン版には、通常のプレイでは見つけにくい隠し要素も用意されています。その一つが「名作昔話じらいあ」というミニコントです。
マルチタップの接続部分3へコントロールパッドを接続し、タイトル画面が表示されているときにRUNボタンを押すと、特別な映像が始まるとされています。
ゲーム本編の攻略へ直接関係する要素ではありませんが、音声や映像を使った遊び心のある隠しイベントです。
実機の接続環境を利用した操作なので、PSP版やゲームアーカイブス版など、移植作品で同じ方法が使えるとは限りません。記事へ掲載する場合は、PCエンジン版の隠し要素として紹介するのが安全です。
発売されなかった関連ゲーム企画
1990年には、OVA『天外魔境 自来也おぼろ変』が発売されました。ゲーム版と同じ世界観や人物を使いながら、映像作品として独自の物語を描いています。
当時の会報では、OVAと同じ『自来也おぼろ変』の名称を使ったアクションゲームが制作中と紹介されたこともあったとされています。
しかし、このアクションゲームは発売されませんでした。開発中止となった時期や、どの程度まで制作が進んでいたのかは明確ではありません。
『天外魔境』は映画、アニメ、ゲーム、小説など、複数のメディアを前提として生まれた企画です。そのため、本編以外にもさまざまな展開が検討されていたことが分かります。
本作の経験が『天外魔境II 卍MARU』へ生かされた
『天外魔境 ZIRIA』では、ロードの多さ、戦闘テンポ、厳しい全滅条件など、初期のCD-ROM²作品ならではの問題も残されました。
一方で、音声付きイベント、アニメーション、CD音源、長編シナリオなど、後のシリーズへつながる基本的な方向性も確立しています。
本作で得られた技術や反省点をもとに制作されたのが、正統続編の『天外魔境II 卍MARU』です。前作の世界観や演出を引き継ぎながら、ゲームバランスや操作性、物語の見せ方が強化されました。
『天外魔境II 卍MARU』が高く評価された背景には、第1作である『ZIRIA』の試行錯誤があります。新しい媒体へ挑戦した経験が、シリーズ全体の完成度を高める土台となりました。
何度もの作り直しから生まれたシリーズの原点
『天外魔境 ZIRIA』は、実写映画、アニメ、アクションRPG、コマンド式RPGという複数の段階を経て完成しました。
開発途中で作られた要素のすべてが製品版へ収録されたわけではありません。シナリオ、戦闘、キャラクターデザインなどを何度も変更しながら、家庭用RPGとして遊べる形へまとめられています。
結果として、ゲームシステムにはオーソドックスなコマンド式を採用しながら、映像、音声、音楽、架空の原作、独特な世界観によって、ほかのRPGにはない個性を持つ作品となりました。
開発の難航や削除された要素は、本作の弱点だけを示すものではありません。新しいハードと媒体を使い、これまでにない規模のRPGを作ろうとした試行錯誤の結果でもあります。
PCエンジン版とXbox 360版を比較すると、1989年に完成した製品版と、開発初期の原案を取り入れて再構築した作品の両方を確認できます。異なる二つの『ZIRIA』が存在することも、本作の開発史を知るうえで興味深い点です。
『天外魔境 ZIRIA』の関連作品・小説・OVA
『天外魔境 ZIRIA』は、PCエンジン用RPGだけで完結した企画ではありません。ゲームブック、小説、OVA、ムックなど、複数のメディアで関連作品が展開されました。
もともと『天外魔境』は、実写映画やアニメを想定した企画として始まり、後に家庭用ゲームへ形を変えた作品です。そのため、ゲーム発売後に映像作品や書籍が追加されたというよりも、企画の初期段階から複数のメディアへ広げられる世界観を持っていました。
特に小説版は、ゲームの物語を文章へ置き換えただけのノベライズではありません。ゲーム版と小説版には共通する原案がありますが、それぞれ異なる形で物語を再構成しています。ゲーム制作の過程で削除された人物や設定が小説で詳しく描かれる一方、ゲーム版とは異なる名前や展開も含まれています。
OVA『天外魔境 自来也おぼろ変』も、ゲームの映像をそのままアニメ化した作品ではなく、ジライア、ツナデ、オロチ丸などのキャラクターを使った独自の映像作品です。ゲームとは異なる『天外魔境』を楽しめることが、関連作品の特徴となっています。
『天外魔境 ZIRIA』の主な関連作品一覧
| 作品名 | 種類 | 発売日 | 主な内容 |
| 天外魔境 魔城の聖戦 | ゲームブック | 1989年10月12日 | 読者の選択によって物語を進める書籍 |
| 天外魔境 FAR EAST OF EDEN | 小説 | 1989年11月1日 | 共通する原案をもとに描かれた小説第1巻 |
| 天外魔境 自来也おぼろ変 上之巻 | OVA | 1990年7月27日 | ジライアたちを描いたオリジナルアニメ |
| 天外魔境 自来也おぼろ変 下之巻 | OVA | 1990年8月24日 | 上之巻に続くOVA後編 |
| 天外魔境 ビデオ&ゲーム大集成 | ムック | 1990年10月20日 | OVAの紹介や設定、制作秘話などを収録 |
| 天外魔境(2)大門招来編 上の巻 | 小説 | 1991年5月1日 | 大門教との戦いを描く小説第2巻 |
| 天外魔境(3)大門招来編 下の巻 | 小説 | 1991年11月1日 | 小説版の物語を締めくくる第3巻 |
ゲーム本編と直接関係する作品だけでも、発売から約2年の間に複数の書籍や映像作品が登場しています。当時から『天外魔境』が、ゲームだけではなく世界観やキャラクターを広く展開する作品として扱われていたことが分かります。
ゲームブック『天外魔境 魔城の聖戦』
『天外魔境 魔城の聖戦』は、1989年10月12日に双葉社から発売されたゲームブックです。著者は樋口明雄で、PCエンジン版の発売から約3か月半後に登場しました。
ゲームブックは、文章を最初から最後まで順番に読む一般的な小説とは異なります。物語の途中で選択肢が示され、読者が選んだ行動に応じて指定されたページへ移動しながら進めます。
テレビゲームを所有していなくても、書籍を使って冒険や戦闘を疑似体験できることが特徴です。ゲーム版の攻略本とは異なり、読者自身が主人公の行動を選びながら物語を進める関連作品となっています。
ゲーム版と同じ情報を確認するための資料ではなく、選択式の読み物として楽しむ作品です。そのため、PCエンジン版のストーリーを正確に追いたい場合は、ゲーム本編と分けて考える必要があります。
小説『天外魔境 FAR EAST OF EDEN』
小説版の第1巻『天外魔境 FAR EAST OF EDEN』は、1989年11月1日に角川書店から発売されました。著者は作中で原作者とされるP.H.チャダ、編訳はあだちひろし、編集はレッドカンパニーと表記されています。
P.H.チャダは実在する作家ではなく、『天外魔境』の世界観を成立させるために用意された架空の人物です。外国人研究者の著書を日本語へ翻訳したという形式を取ることで、現実とは異なるジパングの歴史や文化を紹介しています。
作品名に使われている『FAR EAST OF EDEN』も、ゲーム版で架空の原作として示されている書名です。小説では、この設定を利用しながら、ゲームとは異なる方法でジパングの物語を描いています。
小説版はゲーム版を文章化しただけではありません。共通する原案をもとに制作されており、ゲームの容量や進行上の都合で削られた人物、出来事、設定なども描かれています。
一方で、ゲーム版と名前や役割が異なるキャラクターもいます。たとえば、ゲーム版のタマモ姫は小説版では玉藻の前、ダンジョウは仁木弾正、ヤシャ姫は蛇姫、ムテキオーは鬼道仙という名前で描かれています。
後にXbox 360版で使用された名前や設定の一部が小説版にも見られるため、PCエンジン版で変更される前の原案を知る手掛かりにもなっています。
小説版は全3巻で展開
小説版は『天外魔境 FAR EAST OF EDEN』だけで終わらず、全3巻で展開されました。
- 第1巻『天外魔境 FAR EAST OF EDEN』:1989年11月1日発売
- 第2巻『天外魔境(2)大門招来編 上の巻』:1991年5月1日発売
- 第3巻『天外魔境(3)大門招来編 下の巻』:1991年11月1日発売
第2巻と第3巻では「大門招来編」として、大門教に関係する物語が上巻と下巻に分けて描かれます。ゲーム版では地域ごとに十三人衆を倒しながら進みますが、小説では文章作品に合った形で人物や事件が描写されています。
ゲームでは、町の人から情報を集め、フィールドやダンジョンを移動しながら物語を体験します。小説では移動や戦闘操作がない代わりに、登場人物の感情、過去、会話、事件の背景などを文章で詳しく描けます。
そのため、ゲーム版では短く扱われた人物にも、異なる役割や詳しい背景が与えられています。PCエンジン版だけでは説明の少なかった設定を知りたい場合に、小説版は興味深い関連作品です。
ゲーム版と小説版はどちらが原作なのか
『天外魔境 ZIRIA』では、ゲーム画面やスタッフ表記にP.H.チャダの『FAR EAST OF EDEN』が原作として記載されています。しかし、実際にゲームより前から存在した海外小説をゲーム化したわけではありません。
ゲーム版と小説版には、もとになる共通の企画と原案が存在します。それぞれが同じ設定を使いながら、ゲームと書籍に適した形へ別々に作られました。
したがって、ゲーム版を小説化した作品とも、小説版をゲーム化した作品とも言い切れません。同じ世界観から生まれたメディアミックス作品として考えるのが適切です。
ゲーム版では、プレイヤーがジライアを操作して町やダンジョンを進む必要があります。そのため、目的地やボス、道具、成長など、RPGとして遊びやすい構成が優先されています。
小説版では、操作やゲームバランスを考える必要がないため、人物関係や物語の背景をより詳しく描けます。この違いによって、同じ名前の人物でも行動や設定が変わる場合があります。
OVA『天外魔境 自来也おぼろ変』
『天外魔境 自来也おぼろ変』は、1990年に発売されたOVAです。上之巻は1990年7月27日、下之巻は同年8月24日に発売されました。発売元はタカラで、全2巻の映像作品として展開されています。
OVAは、PCエンジン版のプレイ映像やイベントをそのまま収録したものではありません。ジライア、ツナデ、オロチ丸、雲切、邪神斎など、ゲームで知られる人物を使いながら、アニメ作品として独自の物語を描いています。
ゲームの企画が成立する前に、一度はアニメ作品としての制作が検討されていました。そのため、OVA化はゲームの人気を利用した展開であると同時に、初期企画で目指していた映像作品を別の形で実現したものともいえます。
キャラクターデザインと場面設定は、ゲーム版でも美術面に関わった辻野寅次郎が担当しています。ゲームとOVAで媒体は異なりますが、キャラクターの基本的な雰囲気は受け継がれています。
OVA版の主要キャラクターと声優
| キャラクター | OVA版声優 | 備考 |
| 自来也 | 岩田光央 | ゲーム版から同じ声優が担当 |
| 大蛇丸 | 塩沢兼人 | PCエンジン版と同じ声優 |
| 綱手 | 江森浩子 | PCエンジン版とは異なる配役 |
| 雪姫 | 佐久間レイ | OVA版に登場するキャラクター |
| 雲切り | 永井一郎 | ジライアたちに関わる人物 |
| 邪神斎 | 加藤精三 | ゲーム版から同じ声優が担当 |
ジライア役の岩田光央、大蛇丸役の塩沢兼人、邪神斎役の加藤精三は、PCエンジン版と同じ役を担当しています。一方、綱手役はPCエンジン版の渡辺菜生子から江森浩子へ変更されました。
江森浩子は、後にXbox 360版でも綱手を担当しています。そのため、綱手の声はPCエンジン版と、OVA・Xbox 360版で異なります。
OVAには雪姫、大膳、月丸など、ゲーム本編とは異なる登場人物も含まれています。キャラクター構成からも、PCエンジン版の物語をそのまま映像化した作品ではないことが分かります。
OVA版の主題歌と挿入歌
OVA版には、主題歌「FAR EAST OF EDEN」と挿入歌「天外魔境 ZIRIA」が使用されています。
- 主題歌「FAR EAST OF EDEN」:作詞は広井王子、作曲は田中公平、編曲は岩崎文紀、歌はギャロップ
- 挿入歌「天外魔境 ZIRIA」:作詞は広井王子、作曲・編曲は岩崎文紀、歌は岩田光央withギャロップ
ギャロップは伊倉一恵、神代知衣、坂本千夏によるユニットです。また、挿入歌ではジライア役の岩田光央が歌唱に参加しています。
PCエンジン版の音楽では坂本龍一や小久保隆などが参加していましたが、OVA版では田中公平や岩崎文紀が音楽を担当しています。ゲームとOVAでは異なる音楽スタッフが、それぞれの媒体に合わせた楽曲を制作しました。
OVA版を収録したDVD
『天外魔境 自来也おぼろ変』は、当初VHSで上之巻と下之巻が発売されました。その後、PlayStation 2用ソフト『天外魔境III NAMIDA』の限定版にあたる「宝箱(デラックスパック)」の特典DVDにも収録されています。
VHS版を再生できる環境が減る中で、DVDとして収録されたことにより、後年のシリーズファンもOVAを視聴しやすくなりました。
ただし、DVDは一般販売された単体商品ではなく、限定版に付属する特典の一つです。現在探す場合は、ソフト本体だけでなく特典DVDがそろっているかを確認する必要があります。
ムック『天外魔境 ビデオ&ゲーム大集成』
『天外魔境 ビデオ&ゲーム大集成』は、1990年10月20日に角川書店から発売されたムックです。
OVA『天外魔境 自来也おぼろ変』の紹介を中心に、天外魔境の設定や制作の裏話などが掲載されています。ゲーム攻略だけを目的とした書籍ではなく、映像作品とゲームを含めた世界観を紹介する資料です。
ゲーム版とOVA版の違い、キャラクターの設定、作品が生まれるまでの背景などに興味がある場合に役立ちます。現在では確認しにくい当時の企画や制作者の考えを知る資料としても価値があります。
ゲーム本編だけを遊んだ場合には分かりにくい制作事情も扱われているため、『ZIRIA』がどのようなメディアミックスを目指していたのかを知る手掛かりになります。
関連サウンドトラック
『天外魔境 ZIRIA』やOVAに関係する楽曲は、複数の音楽商品にも収録されました。
- 『天外魔境 自来也おぼろ変 映像的電子蓄音盤』:1990年8月21日発売のOVA版サウンドトラック
- 『天外魔境 ヒストリー・パーフェクト・グラフィティ』:OVAや後続作品から選ばれた楽曲を収録
- 『ハドソンCD-ROM²音楽全集』:ハドソンのCD-ROM²作品の楽曲とともに、坂本龍一が作曲した本作の3曲を収録
ゲーム版とOVA版では音楽スタッフが異なるため、同じ『天外魔境』でも楽曲の雰囲気には違いがあります。
PCエンジン版のCD音源に注目する場合はゲーム関連の収録CD、OVAの主題歌や劇伴を聞きたい場合は『映像的電子蓄音盤』が関連する商品となります。
ゲームとは異なる『ZIRIA』を楽しめる関連作品
『天外魔境 ZIRIA』の関連作品は、ゲーム本編の内容をそのまま別媒体へ移したものばかりではありません。
- ゲームブックでは、読者の選択によって進む冒険を体験できる
- 小説版では、人物や物語の背景が文章で詳しく描かれる
- OVAでは、ゲームと異なる物語をアニメーションで楽しめる
- ムックでは、設定や制作の裏側を確認できる
- サウンドトラックでは、ゲーム版やOVA版の音楽を作品単体で楽しめる
PCエンジン版を遊んだ後に小説版を読むと、同じ名前の人物が異なる設定で登場することがあります。さらにXbox 360版を遊ぶと、小説や原案に近い名称や設定が取り入れられていることにも気付けます。
ゲーム、小説、OVA、Xbox 360版のどれか一つが唯一の正解というわけではありません。共通する世界観と原案から、異なる『天外魔境 ZIRIA』が制作されています。
シリーズの物語や設定を深く知りたい場合は、PCエンジン版だけでなく、小説版やOVAにも触れることで、キャラクターやジパングの世界を別の角度から楽しめます。
『天外魔境 ZIRIA』は現在でも楽しめるのか
『天外魔境 ZIRIA』は1989年に発売された作品であり、現在のRPGと比べると、移動や戦闘のテンポ、ロード、操作方法などに古さを感じる部分があります。特にPCエンジン版は、敵との遭遇率が高く、戦闘アニメーションにも時間がかかるため、短時間で物語を進めたい人には遊びにくく感じられるかもしれません。
その一方で、日本をモデルにした架空の国「ジパング」、ガマ・ナメクジ・ヘビの三すくみを持つ火の一族、個性の強い大門教十三人衆など、本作ならではの魅力は現在でも失われていません。王道的なコマンド式RPGが好きな人や、PCエンジン CD-ROM²時代の作品に興味がある人であれば、十分に楽しめる内容です。
また、『天外魔境 ZIRIA』にはPCエンジン版だけでなく、PSPへの収録版やXbox 360のフルリメイク版なども存在します。作品ごとに遊びやすさや物語が異なるため、どの要素を重視するかによって選ぶ作品が変わります。
PCエンジン版はレトロRPGが好きな人向け
PCエンジン版は、天外魔境シリーズの原点をそのまま体験したい人に向いています。2Dグラフィック、正面から敵を見る戦闘画面、キャラクターごとの特殊コマンド、仲間一人の戦闘不能で全滅する厳しい仕様など、1989年版ならではの内容を楽しめます。
ゲームシステムは、町で情報を集め、フィールドを歩き、段を上げながらダンジョンを攻略するオーソドックスな形式です。操作そのものは複雑ではないため、昔のコマンド式RPGに慣れていれば、基本的な遊び方に迷うことは少ないでしょう。
一方で、現在のRPGに多い目的地の表示、戦闘速度の変更、どこでもセーブ、難易度選択などは用意されていません。次に行く場所が分からない場合は町の人の話を聞き直し、怪しい場所を自分で調べる必要があります。
現在のゲームのように、常に次の目的地へ案内してくれる作品ではありません。自分で情報を集め、マップを覚えながら進むことを楽しめる人ほど、本作の冒険へ入り込みやすくなります。
高い難易度を楽しめる人に向いている
PCエンジン版は、準備不足のまま進むと全滅しやすい作品です。仲間が一人でも戦闘不能になると敗北となり、所持金も半分になります。
そのため、強敵へ何度も挑戦して行動を覚えるというより、先に段を上げ、回復道具を用意し、お金を預けてからダンジョンへ入ることが重要です。
終盤のダンジョンは長く、敵との戦闘も頻繁に発生します。一度で最後まで進もうとせず、途中まで進んで段を上げ、町へ戻って回復してから再挑戦する方法が向いています。
現在のRPGと比べると不便ですが、十分な準備によって少しずつ攻略しやすくなるため、成長を実感しやすい作品でもあります。難しいダンジョンやボスを、自分なりの準備で突破したときの達成感は大きいでしょう。
独特な和風ファンタジーは現在でも魅力
『天外魔境 ZIRIA』の大きな魅力は、現実の日本とは異なる「ジパング」の世界です。日本の地名、歴史上の人物、妖怪、神獣、宣教師、ピラミッドなど、本来なら異なる時代や文化に属する要素が同じ世界に存在しています。
一般的な和風RPGでは、戦国時代や江戸時代の雰囲気をもとに、歴史や文化を整えて世界を作ることが多くあります。本作では、外国人が想像した間違った日本という考え方を利用し、あえて不自然な要素を混ぜています。
そのため、同じ和風RPGでも、ほかの作品では見られない奇妙さがあります。恐ろしい怪物が登場した直後に言葉遊びや冗談が入り、歴史上の人物を思わせる剣豪の近くに異国風の建物が存在するなど、何が出てくるか分からない面白さがあります。
グラフィックや操作方法は古くても、この世界観は現在の作品と比べても個性的です。和風ファンタジーや、少し変わったレトロゲームが好きな人には大きな魅力となります。
音声やアニメーションの歴史を体験できる
現在では、多くのRPGにキャラクターボイスやアニメーションムービーが使われています。しかし、1989年当時は、家庭用ゲームの登場人物が声を出して動くこと自体が珍しい表現でした。
『天外魔境 ZIRIA』を現在遊ぶ場合、映像の滑らかさや音声の量だけを見れば、最近の作品より見劣りします。一方で、CD-ROMを使うことで家庭用RPGの表現がどのように変わり始めたのかを体験できます。
声優による台詞、キャラクターが動くビジュアルシーン、CD音源による楽曲などは、後の大作RPGで一般的になっていった要素です。本作を遊ぶことで、その初期の形を確認できます。
単に古いRPGとして遊ぶだけでなく、ゲームの映像や音声が変化していった時代を知る作品として見ると、現在でも十分に価値があります。
Xbox 360版は物語を重視する人向け
PCエンジン版の操作や難易度が気になる場合は、Xbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』という選択肢があります。
Xbox 360版は、PCエンジン版の物語をそのまま再現した作品ではありません。開発途中で削除された原案や、後のシリーズで追加された設定を取り入れ、シナリオを大幅に作り直しています。
ジライアが積極的に話すようになり、月姫がメインヒロインとして描かれ、オロチ丸と蛇姫の関係も追加されています。敵側にも大門教へ協力する理由が与えられ、登場人物の背景を重視した物語となっています。
キャラクター同士の関係や、マサカドが破壊を行った理由などを詳しく知りたい場合は、Xbox 360版の方が向いています。
Xbox 360版は戦闘や敗北条件も遊びやすい
Xbox 360版では、PCエンジン版にあった厳しい敗北条件が見直されています。仲間一人が倒れただけでは全滅せず、ジライアが戦える状態であれば戦闘を続けられます。
敗北した場合に所持金が半分になるペナルティもなくなりました。そのため、強敵へ挑戦して負けても、PCエンジン版より立て直しやすくなっています。
戦闘には奥義、召喚、陣形、連携技などが追加され、3人の仲間を使った戦い方が広がりました。ツナデも巻物を使えるため、攻撃だけでなく回復や補助も担当できます。
基本はターン制のコマンド式なので、アクションゲームが苦手でも問題ありません。PCエンジン版の王道的な遊び方を残しながら、戦術や演出を増やした作品です。
Xbox 360版にはカメラの見づらさもある
Xbox 360版は遊びやすくなった部分が多い一方、3D化による問題もあります。特に移動中のカメラが主人公に近く、周囲の地形を確認しにくい場面があります。
建物から出た直後や、ダンジョン内で別のエリアへ移動した後に、進む方向を見失いやすいこともあります。2Dの見下ろし画面より立体感は増していますが、探索のしやすさではPCエンジン版の方が分かりやすい場合があります。
一部のキャラクターは、設定画とゲーム中の3Dモデルで印象が異なります。表情や顔の形に違和感を持つ可能性があり、見た目については好みが分かれやすい部分です。
物語や戦闘は遊びやすくなっていますが、3Dゲームとしての移動やカメラ操作が常に快適とは限りません。
PCエンジン版とXbox 360版は別作品として選ぶ
PCエンジン版とXbox 360版は、同じ物語を新旧のグラフィックで遊ぶ関係ではありません。基本となる人物や世界観は共通していますが、ストーリー、戦闘、設定、最終ボスなどが異なります。
| 重視する内容 | 向いている作品 |
| シリーズ第1作をそのまま体験したい | PCエンジン版 |
| 2DのレトロRPGを遊びたい | PCエンジン版 |
| 厳しい難易度を楽しみたい | PCエンジン版 |
| 人物の背景を詳しく知りたい | Xbox 360版 |
| 3D戦闘や連携技を楽しみたい | Xbox 360版 |
| 敗北時の負担を減らしたい | Xbox 360版 |
| 原案を取り入れた物語を知りたい | Xbox 360版 |
どちらが優れているかを単純に決めるよりも、目的に合わせて選ぶのがおすすめです。シリーズの歴史を知りたい場合はPCエンジン版、人物や物語を詳しく描いた作品を遊びたい場合はXbox 360版が向いています。
PSP版はシリーズ初期作品をまとめて遊べる
PSP用ソフト『PC Engine Best Collection 天外魔境コレクション』には、PCエンジン版『天外魔境 ZIRIA』が収録されています。
さらに、『天外魔境II 卍MARU』『天外魔境 風雲カブキ伝』『カブキ一刀涼談』も収録されており、シリーズ初期の作品をまとめて遊べます。
PCエンジン本体やCD-ROM²を用意せずにオリジナル版を体験できる点が利点です。携帯機なので、長いダンジョンや段上げを少しずつ進めやすくなっています。
ただし、PSP版もPCエンジン版をもとにした収録作品であり、ゲームバランスや基本システムはオリジナル版に準じます。Xbox 360版のように難易度や戦闘を大きく変更した作品ではありません。
実機で遊ぶ場合は必要な機器を確認
PCエンジン版を実機で遊ぶ場合は、ソフトだけでは起動できません。対応するPCエンジン本体、CD-ROM²または一体型本体、必要なシステムカードなどを用意する必要があります。
SUPER CD-ROM²版も存在しますが、通常版と対応環境が異なる場合があります。中古で購入する前に、持っている本体で起動できるかを確認することが大切です。
また、古いゲーム機やCD-ROMドライブは経年劣化している可能性があります。ソフトの状態だけでなく、本体の読み込み部分や接続機器も確認する必要があります。
オリジナルのハードで音声やロードを含めて体験したい人には実機が向いていますが、手軽さを重視する場合は、過去に発売された収録版や移植版の方が遊びやすいでしょう。
中古価格と配信状況には注意
『天外魔境 ZIRIA』は複数の機種で発売・配信されましたが、すべてを現在も新規購入できるとは限りません。
携帯電話向けアプリは、対応サービスや端末の終了によって遊ぶことが難しくなっています。ゲームアーカイブス版やXbox 360のダウンロード版についても、過去に配信されていたことと、現在新規購入できることは同じではありません。
PSP版やXbox 360版を探す場合は、中古品が中心になります。中古価格は在庫、付属品、ディスクの状態によって変動するため、記事内で紹介する場合は確認した年月を記載するのが安全です。
特にXbox 360版は、オリジナル版と内容が異なるフルリメイクであり、代わりになる作品が少ないため、中古市場で価格が上がることがあります。購入前に複数の店舗を比較し、無理に高額な商品を選ばないようにしましょう。
現在遊んでも楽しみやすい人
『天外魔境 ZIRIA』は、次のような人に向いています。
- 天外魔境シリーズの原点を知りたい人
- PCエンジン CD-ROM²を代表するRPGを遊びたい人
- コマンド式のレトロRPGが好きな人
- 和風ファンタジーや奇妙な世界観が好きな人
- 声優やアニメーションを使った初期のRPGに興味がある人
- 段上げや長いダンジョンをじっくり攻略したい人
- PCエンジン版とリメイク版の違いを比較したい人
反対に、ロードやランダムエンカウントが苦手な人、常に目的地を表示してほしい人、短時間で物語だけを進めたい人には、PCエンジン版は合わない可能性があります。
その場合は、人物描写や戦闘を作り直したXbox 360版を検討するか、当時のゲームであることを理解したうえで少しずつ進める方法がおすすめです。
古さを含めて楽しめるシリーズの原点
『天外魔境 ZIRIA』には、現在では不便に感じる仕様が残されています。ロード、高いエンカウント率、長いダンジョン、厳しい全滅条件など、快適さを重視した作品ではありません。
しかし、音声やアニメーションを取り入れたイベント、坂本龍一が参加した音楽、日本を大胆に作り替えたジパング、ジライアたち火の一族の物語など、本作でしか味わえない要素があります。
レトロゲームとして古さを我慢しながら遊ぶというより、当時のRPGが新しい表現へ挑戦した作品として向き合うと、魅力が分かりやすくなります。
シリーズの原点を知りたい人はPCエンジン版、人物や設定を深く描いた新しい物語を楽しみたい人はXbox 360版を選ぶことで、現在でも『天外魔境 ZIRIA』の世界を十分に楽しめるでしょう。
まとめ
『天外魔境 ZIRIA』は、1989年6月30日にPCエンジン CD-ROM²向けに発売された、天外魔境シリーズの第1作です。日本をもとにした架空の国「ジパング」を舞台に、ガマ族のジライア、ナメクジ族のツナデ、ヘビ族のオロチ丸が、大門教によるマサカド復活を阻止するために戦います。
戦闘や育成はコマンド式RPGの王道に近い一方、音声付きのイベント、アニメーションを取り入れたビジュアルシーン、CD音源による音楽など、当時としては新しい表現を数多く採用しています。坂本龍一が音楽プロデュースに参加し、メインテーマを含む3曲を作曲したことも、本作を象徴する要素です。
外国人が想像した誤った日本という発想から作られたジパングには、武将、仙人、神獣、妖怪、宣教師、ピラミッドなど、本来は異なる時代や文化に属する要素が共存しています。史実を再現する和風RPGではなく、奇妙さと華やかさを楽しむ作品です。
ジライアたちの前に立ちはだかる大門教十三人衆も、本作の大きな魅力です。残酷な悪事を働くゴーモンや水王丸、歴史上の人物を名乗る信玄、金に執着する南蛮屋、シリーズの名物キャラクターとなったマントーなど、敵ごとに異なる個性があります。
一方で、PCエンジン版にはロードの多さ、高いエンカウント率、戦闘テンポの遅さ、仲間一人の戦闘不能で全滅する厳しいルールなど、現在遊ぶと負担に感じやすい部分もあります。特に終盤のダンジョンは長いため、段上げ、回復道具、所持金の管理を行いながら慎重に進める必要があります。
それでも、準備を整えることで少しずつ攻略しやすくなり、強敵や長いダンジョンを突破したときには大きな達成感を得られます。現在の快適なRPGとは異なる、昔ながらの育成と探索を楽しめる作品です。
本作は、最初から家庭用RPGとして企画されたわけではありません。実写映画、アニメ、アクションRPGなど、複数の企画と作り直しを経て、最終的にコマンド式RPGとして完成しました。開発中に変更・削除された原案の一部は、小説版や2006年のXbox 360版へ引き継がれています。
Xbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』は、オリジナル版をそのまま3D化した移植ではなく、物語や戦闘を再構築したフルリメイクです。ジライアが積極的に話すようになり、月姫がメインヒロインとして描かれるなど、人物関係が強化されています。
戦闘には奥義、召喚、陣形、連携技が追加され、敗北条件や所持金のペナルティも緩和されました。ただし、カメラの見づらさや、一部の3Dモデルなど、リメイク版独自の気になる部分もあります。
PCエンジン版とXbox 360版は、どちらか一方が完全版という関係ではありません。シリーズの原点や1989年当時の演出を体験したい場合はPCエンジン版、原案を取り入れた物語や人物描写を楽しみたい場合はXbox 360版が向いています。
また、本作にはゲームブック、小説、OVA、ムック、サウンドトラックなど、多数の関連作品があります。ゲーム版と小説版、OVA版では物語や設定が異なるため、それぞれを比較することで、ジライアたちの世界を別の角度から楽しめます。
『天外魔境 ZIRIA』は、現在の基準では古さや遊びにくさがあるものの、家庭用RPGへ映像、音声、CD音源を取り入れた歴史的な作品です。天外魔境シリーズの始まりを知りたい人、和風ファンタジーやレトロRPGが好きな人には、現在でも触れる価値のある一本といえるでしょう。