【天外魔境 風雲カブキ伝】ゲームシステム徹底解説 PCエンジンSUPER CD-ROM² 1993年発売

広告/Amazon のアソシエイトとして、遊びゴコロは適格販売により収入を得ています。

【天外魔境 風雲カブキ伝】ゲームシステム徹底解説 PCエンジンSUPER CD-ROM² 1993年発売

1993年7月10日にハドソンからPCエンジン(SUPER CD-ROM²)用に発売された『天外魔境 風雲カブキ伝』は、シリーズ生みの親・広井王子氏が企画・監修を務め、前作『天外魔境II 卍MARU』の人気キャラクター「カブキ団十郎」を主人公に据えた外伝的RPGです。

本作は、舞台となる京都の古都風景とロンドンの異国情緒を大胆に融合させた世界観の中で、短期間開発でありながらも膨大な音声データや美麗なビジュアルシーンを実現。
PCエンジン末期を飾る名作として高く評価され、当時のゲーム表現に新たな可能性を示しました。

特に注目すべきは、「ゲーム内ミュージカル」という斬新な演出要素です。
ボスキャラクターがテーマソングを歌い上げながら登場するこの演出は、のちにセガサターンの名作『サクラ大戦』シリーズへと繋がる重要な布石となり、当時のプレイヤーに強い印象を残しました。

ストーリーと世界観の特徴

『天外魔境 風雲カブキ伝』は、前作『卍MARU』で火の一族の一員として戦いを終えたカブキ団十郎が、京の都で歌舞伎役者として華々しい日々を送るところから始まります。

ある夜、兄弟子オロチ丸からの緊急の知らせが舞い込む――かつて打倒したはずの邪教「大門教」が、影で密かに息を吹き返し、ジパング(日本)征服を目論んでいるというのです。

翌朝、京の街を歩くカブキは、愛する女歌舞伎衆が忽然と姿を消し、金閣寺が異形の西洋城へと変貌する光景に遭遇。怒りと驚愕がない交ぜとなった彼は、自らの流儀と誇りを賭け、「オレ様の女たちを取り戻す!」と叫び、再び剣を手に取ります。

  • 異文化融合の舞台演出:序盤は京の裏路地や舞台裏を巡り、和風の妖怪や裏社会と対峙。中盤以降は海を越えてロンドンへ移行し、メニュー表記や通貨、魔法システムがジパング仕様からロンドン仕様(HP/MPやポンド表記)へと変化し、プレイヤーに異国情緒を鮮烈に印象付けます。
  • 個性派キャラクターたちの共演:謎多き女歌舞伎役者・阿国は将軍の隠密であり、蒼き狼の末裔としての正体を秘める。英国出身の仮面の紳士・世阿弥は元ドルイド僧で、ガープに操られていた過去を持ち、救出後は忠義を尽くす盟友となる。さらにモンゴル力士プッシュ富士山は豪快な力技と義侠心で活躍し、旅の要と化します。
  • 深まるドラマ性と成長:大門教の四使徒は、かつては善良な人物が洗脳されているという共通の悲劇を背負い、倒される際には人間らしい後悔を滲ませます。仲間や敵との対話を通じて、カブキ本人も「見世物としての舞台」から「守るべき舞台」へと視点が変化し、真の英雄像と成長していきます。
  • 息を飲むミュージカル演出:ボス登場時には、カブキの歌舞伎とリンクさせた“ゲーム内ミュージカル”演出が炸裂。歌唱とダンスが融合した演出は、当時としては革新的であり、プレイヤーの心に強い印象を刻印します。
  • 笑いと熱狂のバランス:序盤のコミカルな宴会シーンや仲間同士の軽妙な掛け合いから、中盤以降のシリアスな展開、クライマックスの壮麗なフィナーレに至るまで、メリハリの利いた演出で最後まで飽きさせません。

京とロンドン、二つの異なる文化が交錯する舞台で、カブキ団十郎の自由奔放な個性と熱い信念がぶつかり合いながら、シリーズ随一のエンターテインメント性を誇るストーリー世界が描き出されます。

ゲームシステムと独自要素の詳細

『天外魔境 風雲カブキ伝』は、ジパング(京都)からロンドンへと舞台を移すことでUIやアイテム構成が劇的に変化し、その変化をインターフェースで強く感じさせる演出が魅力です。序盤は“体力・技・段・巻物・両”という和風漢字表記が使用されますが、ロンドン到着後には“HP・MP・LV・魔法・ポンド”の英語表記へとスムーズに切り替わります。

インターフェースとアイテム

初めてのロンドン編では、所持していた巻物が没収され、「魔法書」へと置き換えられ、装備可能数も12本から6本に制限されます。これにより限られたリソースの管理が求められ、プレイヤーはどの魔法を携行するかを熟慮しながら冒険を進めることになります。

戦闘システムと戦術

戦闘はシリーズ初の横視点(サイドビュー)へ刷新され、キャラクターと敵が左右から向かい合う躍動感あるアニメーションが可能となりました。

一方で、通常攻撃や奥義の命中率が低く設定されており、以下のような戦術が推奨されます。

  • 雑魚戦:全体魔法での一掃が効率的
  • ボス戦:「エワズ」(連続攻撃)や「テイワズ」(攻撃力アップ)を使い、地道にHPを削る
  • 特殊奥義:世阿弥の「イサ」で凍結させれば必中、プッシュ富士山の「待った/横綱」で行動不能にできるが条件・コストに注意

独自演出要素

本作最大の見せ場は、ボス登場時に流れる“ゲーム内ミュージカル”演出です。永井一郎氏や山寺宏一氏ら豪華声優陣が歌い踊りながら登場し、その後に戦闘へと移る斬新な体験を提供します。

また、特定ボスにはHPを一定以下にすると「止め」コマンドが表示され、対応アイテムを使用することで劇的なラスト一撃演出が発動します。

その他の特徴

  • エンカウント率は高めで戦闘が頻発する
  • 戦闘画面への読み込みはやや長めだが、演出の迫力が compensates
  • BGM(田中公平氏)は「京を行く!」ロンドン曲「倫敦を駆ける!」など評価が高い

以上のように、本作は従来のJRPGの枠にとらわれない大胆な演出と、限られたリソースをどう使うかという戦略性の両立を図ったシステム設計が特徴です。

関連記事
【天外魔境 風雲カブキ伝】巻物・魔法一覧

グラフィック・音楽・操作性のクオリティ

本作はPCエンジンのハード性能を極限まで活かした演出面の充実が光ります。

CD-ROM媒体の大容量とアニメーション表示機能をフルに活用し、物語の随所に挿入されるビジュアルシーン(アニメカットシーン)は非常に豊富です。

ゲームを起動するといきなり物語の発端を描くアニメーションが流れ、主人公カブキ団十郎が登場してタイトルロゴを派手に蹴散らす演出でプレイヤーの心を掴みます(このオープニングでは一瞬“天外魔境III”と表示されたロゴをカブキが破り捨てるというメタ演出があり、本作がナンバリングではない番外編であることを強調するユーモアとなっています)。

以降も重要なイベントシーンではアニメーションによる演出がこれでもかと挿入され、当時の他RPGと比べても群を抜くド派手なビジュアル演出が楽しめるのが特徴です。

町やダンジョンでの会話シーンにもキャラクターごとの顔グラフィックやボイスが付与され、テキスト主体だった旧来RPGに比べて映像作品さながらの表現力を実現。「カブキ伝」というタイトル通り、演出的にもカブキ(歌舞伎)のごとく華やかさとインパクトを重視した作品と言えるでしょう。

音楽面でも、本作は極めて評価が高いポイントです。シリーズ前作まで音楽を担当していた久石譲氏に代わり、本作では田中公平氏が作曲を手掛けました。
田中氏はアニメ『ワンピース』や『サクラ大戦』シリーズの音楽で知られる作曲家であり、多彩なメロディとオーケストレーションに定評があります。

本作でもパーティ各メンバーの個別テーマ曲、ボス戦の緊迫感あふれる戦闘曲「敵を絶つ!!」、そして前述のミュージカルシーンで流れるボーカル曲に至るまで、バラエティ豊かな楽曲が用意されています。CD-ROMの音源(CD-DA)により音質もクリアで、和楽器風のフレーズとロック調サウンドが融合した和風ファンタジーらしいBGMはプレイヤーの冒険心を大いに盛り上げました。

また、声優陣にも当時としては破格の豪華さが挙げられます。主人公カブキ役に山口勝平さん、ヒロイン阿国役に女優の牧瀬里穂さんを起用し、中ボスである“四天王”役にも山寺宏一さんや神谷明さんなど著名な声優が名を連ねています。
キャラクター同士の掛け合いや戦闘中の掛け声なども随所で音声再生され、演技力の高さと相まって物語への没入感を高めています。

操作性に関しては、煩わしさを感じないオーソドックスなUIが整備されています。メニュー画面もシリーズ伝統のコマンド選択式で直感的に扱いやすく、戦闘速度もエフェクト表示を除けば比較的テンポよく進行します。
ただしランダムエンカウント率はやや高めで、フィールドやダンジョンでは数歩歩くと敵が出現することもあるため、近年のゲームに慣れたプレイヤーには繰り返し戦闘がやや煩わしく感じられるかもしれません。
とはいえ、当時のRPGでは標準的な頻度であり、戦闘演出が凝っているぶん退屈さを緩和する工夫はなされています。

総じて、『風雲カブキ伝』のグラフィック・音楽・インターフェース面は、PCエンジンの性能を知り尽くした開発チームによる丁寧かつ意欲的な作り込みが光ります。とりわけ演出と音楽の完成度は高く、発売当時「まるでアニメを見るようだ」と評されたほどでした。現在プレイしても色褪せない魅力を持つのは、こうした基礎クオリティの高さによるところが大きいでしょう。

created by Rinker
¥7,965 (2025/06/19 19:32:27時点 Amazon調べ-詳細)

シリーズ内での位置付けと進化ポイント

Amazonより画像引用

『風雲カブキ伝』は「天外魔境」シリーズの中で異色のスピンオフとして位置付けられますが、同時にPCエンジンで展開された三部作の一角を成す重要作品でもあります。

以下の表はPCエンジンで発売された天外魔境シリーズ作品を比較したものです。

タイトル発売日媒体
天外魔境 ZIRIA1989年 CD-ROM²世界初のCD-ROM RPG。フロントビュー戦闘、坂本龍一プロデュースの音楽。演出面で画期的。
天外魔境II 卍MARU1992年 SUPER CD-ROM²前作比で大幅ボリュームアップ。イベント頻発で超大作化。久石譲らによる重厚な音楽。
天外魔境 風雲カブキ伝1993年 SUPER CD-ROM²人気キャラ主人公の番外編。サイドビュー戦闘やミュージカルなど新要素。田中公平の軽快な音楽。

(※PCエンジンではこの後、派生作品として格闘ゲーム『カブキ一刀涼談』(1995年)が発売されています。ナンバリング新作『天外魔境III NAMIDA』は長らく発売されず、2005年にPlayStation 2で発売されました。)

上記のように、本作『カブキ伝』はシリーズの実験作として新機軸を打ち出しつつも、天外魔境らしい世界観と演出の伝統はしっかり受け継いでいます。

例えば戦闘のサイドビュー化はシリーズ進化の一つですが、その後1995年発売の『天外魔境ZERO』(スーパーファミコン)では再びフロントビュー戦闘に回帰しており、必ずしも標準とはなりませんでした。

しかし「RPGにミュージカルを導入する」というアイデアは本作のみならず後年のゲーム業界にも影響を与えます。それが前述した『サクラ大戦』シリーズの成功はその代表例で、広井王子氏と田中公平氏のコンビが本作で得た知見を活かし、「歌うゲーム」の魅力を大きく開花させたと言えるでしょう。

発売当時の評価と現在の視点

発売当時、『風雲カブキ伝』は各ゲーム誌で概ね高い評価を得ました。

ゲーム誌『ファミコン通信』(現ファミ通)のクロスレビューでは9/8/9/7の合計33点(40点満点中)を獲得し、ゴールド殿堂入りを果たしています。

レビュアーのコメントでも「伏線と思われる仕掛けが絡み合い、気が抜けない展開」「ビジュアルシーンの見せ方は素晴らしく感動もの」「街の様子や会話が丁寧でお茶目に作ってある」と演出面・シナリオ面の工夫が高く評価されました。

一方で「シリーズ初体験の人だと主人公(カブキ)のハチャメチャぶりに振り回されて疲れるかも」という指摘や、戦闘システムに関して「前作に比べ地味」「エンカウント率の高さが残念」といった意見も見られ、斬新な部分ゆえの好き嫌いもあったようです。

他のPCエンジン専門誌でも、たとえば月刊PCエンジン誌で91点/100点、電撃PCエンジン誌で71.6点/100点、PC Engine FAN誌で25.1点/30点というレビュー点数が記録されており、評価には若干の幅があるものの概ね良作と受け止められていました。

総じて「前作ほどのボリュームはないが演出の派手さと安定した完成度で楽しめる」という声が多かったようです。

現代の視点から振り返ると、『風雲カブキ伝』はPCエンジンの名作RPGの一つとしてレトロゲームファンに語り継がれています。

派手なミュージカル演出や個性的な主人公は現在でも唯一無二の存在感を放っており、「他のゲームにはない体験ができるRPG」として再評価する動きも見られます。

反面、当時感じられた戦闘シーンの地味さや高エンカウントといった問題点は、続くシリーズ作品や他ハードのRPGで改善されていった部分でもあります。

プレイ時間こそ前作より短めながら、テンポの良い物語進行と充実したビジュアル・音楽により密度の濃いゲーム体験を提供しています。「天外魔境」シリーズのファンはもちろん、レトロRPG初心者にも比較的遊びやすい調整が施されているため、今なお色褪せないエンターテインメント性を持つ作品と言えるでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA