【卒業II 〜Neo Generation〜】PC-FX 1994年発売

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【卒業II 〜Neo Generation〜】PC-FX 1994年発売

『卒業II 〜Neo Generation〜』は、プレイヤーが女子校の教師となり、生徒たちを卒業まで導く育成シミュレーションゲームです。
もともとは1994年にPC-9800シリーズ(PC-98)向けに成人向けタイトルとして発売され、その後多数の家庭用ゲーム機に移植されました。
当時のPC-FX(ピーシーエフエックス、NECが1994年に発売した家庭用ゲーム機)版は、同日発売のPCエンジン(ピーシーエンジン、NECの16ビットゲーム機)版と共に1994年12月23日に登場し、PC-FX本体のローンチタイトルの一つとなります。
PC-FXはPCエンジンの後継機としてアニメ調の動画再生に特化した32ビット機で、市場では3DOやプレイステーション、セガサターンなど次世代機と競合していました。
しかしポリゴン描画機能を持たず、美少女キャラクターの映像表現やアニメ演出に重点を置いたマニア向け路線のハードであり、発売本数はわずか62本と短命に終わっています。このPC-FXの方向性を端的に示すタイトルの一つが『卒業II』でした。

開発・販売会社

『卒業II』シリーズのプロデューサーは前作『卒業 〜Graduation〜』に引き続き窪田正義氏が担当し、キャラクターデザインは漫画家のこばやしひよこ氏が手がけています。

PC-98版を発売したのは映像制作会社系のジャパンホームビデオ (JHV)で、開発にはゲーム制作会社のヘッドルームイメージワークステンキーなどが協力しました。PCエンジン版・PC-FX版からはゲームメーカーのリバーヒルソフトが販売を担当し、セガサターン版・PS版も同社から発売されています。

PC-FX版のタイトルはパッケージ上で『卒業II FX』と冠され、ハード固有の強化要素が追加されました。なお1995年11月発売の3DO版(北部通信工業から発売)は「SPECIAL」と題され、他機種にない新規オープニングアニメや追加イベント、独自のエンディングCGが収録された特別版でした。

1994年当時の市場

1990年代前半はPCを中心に美少女ゲーム(いわゆるギャルゲー)や恋愛アドベンチャーが勃興した時期です。
前作『卒業』は1992年にPC-98で登場し、学園もの育成SLGの先駆けとして注目されました。

同時期にはエルフの『同級生』シリーズなど恋愛シミュレーションのヒット作が成人向けPCゲーム市場を賑わせており、ソフ倫(ソフリン、コンピュータソフトウェア倫理機構)による業界自主規制が進み始めた時期でもあります。
『卒業II』も当初18禁指定を受けましたが、これは性的表現ではなく「未成年の飲酒・喫煙シーン」が原因で、業界初のケースとして話題になりました。

JHVはこの指定に反発しつつも結局ソフ倫を脱退できず、折衷案として新たに15禁相当の「R指定」が設けられ、本作は発売1か月後に18禁からR指定へ引き下げられました。こうした経緯はゲームの内容以上にレーティング制度の転換点として語られ、成人向けゲームの扱いが議論されるきっかけにもなりました。

一方、1994年5月のPC-98版発売と同日に、コンシューマー向け恋愛ゲームの金字塔『ときめきメモリアル』(PCエンジン版)が発売されており、ギャルゲーの主流は「卒業シリーズ」から「ときメモ」へ移り変わる転機でもありました。

『卒業II』はそうした時代において、教師視点の異色作として存在感を示しつつ、様々なプラットフォームへ展開されたことで多くのユーザーにプレイされました。PC-FX版は発売初期の目玉タイトルとしてPC-FXの特徴を活かし、美少女ゲームをコンシューマーで遊べる先駆けの一つとなっています。

ストーリーとキャラクター

あらすじの概要

舞台は東京都の私立清華女子高等学校
プレイヤーは新任教師として3年B組を受け持ち、クラス内の5人の問題児たちを指導します。目的はタイトル通り「全員卒業」させること。

彼女たちは素行や成績になんらかの問題を抱えており、放っておけば留年・退学の恐れがあります。教師である主人公(デフォルト名は設定なし。ゲーム開始時に姓名や誕生日、血液型、座右の銘を入力可能)の視点で、一人ひとりに適切なアドバイスと指導を与え、更生と成長に導くことが本作のストーリーです。

基本的なプロットは前作『卒業』を踏襲しつつ、キャラクターが総入れ替えされ新しい物語が展開します。
各ヒロインには個別のイベントやエンディングが用意されており、卒業後の進路やエピローグも様々です。

全員を無事卒業させるのが第一目標ですが、中には卒業式後に特別な後日談が見られるキャラクターも存在し、教育者としての達成感だけでなく「青春ドラマ」としての物語も味わえるようになっています(※家庭用移植版では恋愛要素はあくまで仄めかす程度に抑えられています)。

主要キャラクターと関係図

登場人物はクラス担任の「教師」である主人公(プレイヤー)と、彼が受け持つ5人の生徒が中心です。5人の女生徒はいずれも個性的ですが、同じクラスメイト同士として日常的に関わり合っており、友好関係や衝突など様々な人間模様を見せます。

例えば、生徒会長の石橋美佐子は品行方正で成績優秀な優等生ですが、融通が利かず堅物扱いされています。
彼女は周囲(特に奔放なクラスメイト)の言動に厳しく接するため、しばしば衝突の火種になります。

大阪出身の犬塚さおりはサイコロを常に持ち歩く生粋のギャンブラー気質で、勝負事に目がありません。
一方で母子家庭を支え家事全般をこなす家庭的な面もあり、石橋からは生活態度を咎められつつも、異なるタイプのリーダー格同士として影響を与え合う関係です。

また帰国子女のシンディ桜井は日系ブラジル人三世で、日本語が片言ながら底抜けに明るいムードメーカーです。規則にルーズで羽目を外しがちな彼女は、真面目な石橋とはしばしば対立しますが、その快活さでクラス全体を盛り上げる存在でもあります。

元気娘の谷由利佳は常にハイテンションなトラブルメーカーで、記憶力が極端に悪く勉強が苦手な反面、運動神経抜群です。
明るく騒がしい彼女はクラスのムードを攪拌する一方、失敗も多いため周囲(とくに石橋)に迷惑をかけることもしばしばです。

最後に、安田舞奈は芸術家の両親に箱入り娘として育てられた夢見がちな不思議少女です。おっとりしていますが実はコンピュータとオカルト趣味に傾倒し、一般常識に欠ける言動で周囲を唖然とさせることがあります。
彼女は超常現象めいたイベントを引き起こし、クラスメイトたちを巻き込むこともあります。

このように5人はそれぞれ問題児ではありますが、個々の資質や悩みは異なり、主人公は教師として一人ひとりに向き合い信頼関係を築く必要があります。

キャラクター声優誕生日(星座)血液型身長・サイズ(B/W/H)特徴・備考
石橋 美佐子南場千絵子10月21日(天秤座)O型161cm / B81 / W56 / H82 – 生徒会長を務める。品行方正で成績優秀。
– 目上の人には腰が低い一方、協調性に乏しく、生徒間では「堅物」扱いされる。
– 真面目すぎて問題児ではないという評価もある。
– キャラクターデザイン当初の姓は植木だったが、同時期にボツになった「石橋」姓のキャラクターがいたため、姓を「石橋」に変更した。
犬塚 さおり萩森侚子2月18日(水瓶座)O型163cm / B84 / W57 / H84 – 大阪生まれの生粋のギャンブラー気質で、常にサイコロを持ち歩く。
– 家事が苦手な母に代わって炊事・洗濯をこなす家庭的な一面もある。
– 前作の新井と同様の不良枠とも言えるが、問題行動は多くなく、体力が高いため学力も後半に伸びる傾向がある。
シンディ 桜井浦和めぐみ8月23日(乙女座)AB型169cm / B90 / W59 / H89 – 日系ブラジル人3世の帰国子女で、日本語が少し怪しいことがある。
– 前向きで行動力があるが、規律に関しては非常にルーズでハメを外すこともある。
– “アホの子”枠とも言えるが、帰国子女設定のため英語の点数は高い。
谷 由利佳鈴木砂織5月17日(牡牛座)O型156cm / B79 / W55 / H81 – 常にハイテンションで周囲を振り回すトラブルメーカー。
– 記憶力がネックで学力が伸び悩みやすいが、運動神経は良い。
– 家はフランス料理店で、生まれたばかりの妹・絵利佳がいる。
– キャラクターデザイン当初は「運動神経が良い安田舞香(安田舞奈の双子の姉)」と「小柄で泣き虫の谷絵利佳」がいたが、生徒数を減らすことになり、この二人の特徴を取り入れたキャラクターとして谷由利佳が作られた。妹の名前“絵利佳”はそのまま妹キャラとして残っている。
安田 舞奈中島千里6月4日(双子座)B型164cm / B85 / W56 / H84 – 芸術家の両親を持つ箱入り娘で、空想癖が強い。
– おっとりした外見に反して趣味はコンピュータとオカルトで、一般常識に欠ける部分もある。
– 前作の中本と同様の“よわよわ”枠で体力は低いが、回復しやすいためそれほど問題にならないという評価もある。
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クラス以外の人物として、本作オリジナルキャラクターの校長先生が登場します。清華女子高の校長で、シナリオ上は狂言回し的な立ち位置です。ゲーム中、主人公の前に時折現れて助言を与えたり、物語の節目で演出上の語り手となったりします。

校長はフルボイスで喋り、声優は岸野幸正氏(後にゲーム『真・三國無双』シリーズの曹操役などで有名)が担当しています。
なお主人公(教師)はプレイヤーキャラクターのため台詞はなく、個性付けはされていません(名前やプロフィールはプレイヤー設定)。
そのため生徒たちとの関係性もプレイヤーの選択によって変化します。生徒から向けられる感情には「好意(友情・愛情)」「敬意(尊敬)」の2軸があり、先生として信頼はされるが異性としては意識されていない、あるいはその逆といった状態も起こり得ます。

例えば厳しく指導すれば成績向上に繋がり敬意は上がるものの、反発されて好意(好かれ度)は下がる場合があります。
逆に親身に優しく接すると好意度は上がりますが、生徒になめられてしまい教師としての威厳(敬意)が損なわれることもあります。

このように教師と生徒という立場ゆえの緊張関係と信頼関係の両面をパラメータで表現している点が本作ストーリーの肝となっています。

ストーリーのテーマと見どころ

本作のテーマは一言で言えば「教育者の奮闘と生徒の成長」です。

プレイヤーは教師という立場で、生徒たちの問題行動を是正しつつ彼女らの長所を伸ばし、将来の進路を一緒に考えていきます。

各キャラクターには家庭環境や将来の夢などバックボーンが設定されており、イベントを通じてそれぞれのドラマが展開します。
例えば犬塚さおりのギャンブル好きは父親の不在による心の隙を埋めるため、といった背景が示唆され、彼女が更生して夢に向かうエピソードは感動を呼びます。

他にも谷由利佳には幼い妹がおり家業を手伝う一面が描かれる、
舞奈はオカルト騒ぎをきっかけに自分の殻を破る等、青春群像劇としての見どころが豊富です。

プレイヤーの指導次第で生徒の卒業後の進路が変わるマルチエンディング方式になっており、大学進学・専門学校・就職・留学・家業継承など結末は様々です。

全員を希望の進路に送り出せたときは教師としての大きな達成感が味わえます。また一部の生徒とは卒業式後のイベントが用意されており、好感度次第では別れ際に意味深な言葉を掛けられることも…。教師と生徒という禁断の関係を想起させる演出ですが、家庭用版では直接的な恋愛成就の描写はなく、あくまで師弟の絆を強調した爽やかな後日談に留まっています。

しかしプレイヤーの想像力次第で様々な余韻を楽しめるため、コアなファンの間では「誰がお気に入りの教え子だったか」という話題で盛り上がることもあるようです。
教育者の視点でドラマを見守り支える立ち位置に徹するシナリオは珍しく、恋愛主体の他のギャルゲーとは一線を画す本作ならではのテーマ性と言えるでしょう。

ゲームシステムと演出

基本システム

『卒業II』のゲーム進行は、大きく分けて「平日の授業パート」と「週末の指導パート」の二本立てです。

プレイヤー(教師)は月曜から金曜まで時間割に沿って授業を行いつつ、担任クラスの運営に当たります。各生徒には英語・国語・数学の3教科の学力パラメータがあり、曜日ごとにどの教科を教えるかカリキュラムを組むことで成績を伸ばしていきます。

授業中には教室内のちびキャラ(SDキャラ)で生徒たちの様子がアニメ表示され、サボったり寝ている生徒は画面上でも確認できます。

またプレイヤーは教科指導の他に生活指導も並行して行い、生徒の問題行動をチェックします。平日の放課後や隙間時間には個別に呼び出して注意したり、職員会議イベントなど学校運営上のイベントも発生します。こうした日々の積み重ねを経て週末(土日)を迎えると、週末指導パートに移行します。

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週末は自由行動の時間ですが、本作では教師・生徒ともに完全な休みにはなりません。土日に各生徒が「友人と外出」「自宅で勉強」「部活」など好きに過ごそうとすると、担任である主人公にその予定が報告されます。プレイヤー(教師)はそれを見て気に入らなければ呼び出しをかけ、該当の生徒を学校へ登校させることもできます。

例えば不真面目な生徒が週末に遊び歩こうとしている場合、「補習」と称して学校に来させ勉強や運動をさせることが可能です。
実際、教師には休日返上で補習を行うか、あるいは外で見回りをするかといった選択肢が与えられます。
学校内で生徒と面談し進路相談に乗ることもできますし、逆に校外(繁華街など)を巡回して非行を未然に防ぐこともできます。

校外パトロール中に遊びに出ている生徒に遭遇した場合はデートのようなイベントに発展することもあり、食事に誘って高級な料理を奢れば生徒の好感度(好意)が上がり、さらに疲労(HP)も回復します。
ただし成績向上を目指すなら生徒を遊びに連れ出すのは得策ではなく、自宅に連れ込む(!)ような行動は御法度です。教師として厳しく指導するか、人間的な魅力で懐柔するか、この週末でのアプローチが生徒の更生と成績に大きく影響します。

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パラメータと分岐

ゲーム内では多数のパラメータが管理されています。
学力3科目のほか、前述した好意・敬意、さらに品位(品行方正さ)や魅力(女子力)、向学心(勉学意欲)、精神(メンタルヘルス)、体力(HP)などが数値化され、生徒ごとに刻々と変動します。

これらは互いにトレードオフの関係にあり、一方を伸ばすと他方が下がる場合があるためバランスが重要です。
例えば平日の授業では、黒板左に表示される「指導方針」を優しく・普通・厳しくに設定できますが、厳しくすると学力の上昇率は高まる代わりに向学心が下がりHP消耗も激しくなります。
優しく指導すれば逆に向学心は保てるが学力の伸びは鈍ります。

また教室内での席替えもシステム上の大きな要素です。各生徒は互いに仲良し度(相性)が設定されており、仲が悪い者同士を隣席にすると喧嘩が発生しやすくなり授業に支障が出ます。
逆に仲良し同士を近くに座らせすぎると気が緩んで勉強しなくなることもあります。
さらに前列の席は集中しやすい反面疲労が溜まりやすい、後列は集中力に欠けるが自由度が高い、といった位置効果もあります。
プレイヤーは定期的に席替えを行い、相性を見ながら最適な座席配置を考える必要があります。この席替えシステムは前作からの新要素であり、教育現場らしいリアルさを高める改善点として評価されました。

生徒のパラメータ管理を疎かにすると、様々なペナルティイベントが発生します。
例えば品位が低いままだと不良化(非行)イベントが起きて校則違反を犯し、発覚すると評価が下がります。
精神がゼロ近くまで減るとノイローゼ状態になり、勉強どころではなくなります。
好意か敬意が極端に低いと不信感を抱かれ、最悪の場合教師不信で生徒が家出してしまうこともあります。
恋愛状態(異性パラメータが高い状態)の生徒は、魅力が足りないと失恋してショックを受け成績に影響します。HPが切れると過労で倒れたり病気になったりもします。
逆に好意・敬意とも高い状態が続くと、生徒に色気(恋の自覚)が芽生え、ますます主人公を異性として意識するようになります。

このように複雑なパラメータとイベント分岐が絡み合い、一種の育成シミュレーションRPGのような様相を呈しています。
数値に表れない隠しパラメータも存在し、同じ育成方針でもプレイごとに微妙に行動結果が変化するため、キャラがマニュアル通りに動かず人間らしいと評価する声もあります。

一見攻略が難しそうですが、ゲーム中のユーザーインターフェースは親切で、科目選択画面の下に「この予定を入れると学力等がどう変化するか」がリアルタイム数値表示されるなど、プレイヤーの試行錯誤を助ける工夫があります。

シリーズ初登場の校長先生も、各タイミングで「○○をしてはどうかね」と有益なアドバイスをくれるため序盤の指針になることでしょう(ただし何度も現れるので後半は少々お節介に感じるかもしれません)。

総じて前作からシステムは格段に進化し複雑になりましたが、インターフェース改善のおかげで操作性はむしろ向上し遊びやすくなっています。

画面構成と演出手法

グラフィック面では、PC-FX版をはじめCD-ROM機種では美麗な2Dグラフィックと音声演出が特徴です。

オープニングではアニメさながらの手描き動画がふんだんに使われており、当時としては驚くほど滑らかにキャラクターが動くことで話題になりました。

プレイ画面では教師室や教室、校門前などの背景CGに、各キャラクターの立ち絵(バストアップのキャラ画像)が表示され、テキストウィンドウに会話や心情が表示される典型的なアドベンチャー形式です。

会話シーンではキャラの表情がコロコロ変わり、声優によるセリフ音声も主要キャラには用意されています(PC-98版のみ音声無しでテキストのみ)。
イベントCG(一枚絵)は前作に比べ増加しており、特にPC-FX版では数多く追加されました。PC-FX版では画面上のパラメータ表示を極力減らし、代わりに生徒の立ち絵表情やセリフの変化から現在の心理状態を推察させるよう演出が工夫されています。
これはプレイヤーに教師の勘を働かせてもらう狙いで、画面情報は少ないもののその分キャラのビジュアル表現に力が注がれています。

例えば犬塚さおりが不満げに腕組みしていれば「好意が下がっているかな?」、石橋美佐子が眉をひそめていれば「敬意が下がるような行動を取ったかも」と推理するわけです。こうした演出の方向性はPC-FX版独自のアレンジで、他機種では基本的に数値パラメータが画面表示されます。テキストの強調や色分けなどは控えめで、全体としてシンプルなUIですが、イベントシーンでは画面エフェクト(画面フラッシュや揺れ)や音響で緊迫感を出す演出も見られます。

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特殊要素

ゲーム中には多数のイベントが用意され、体育祭や文化祭、修学旅行など学園生活ならではの行事もシナリオに盛り込まれています。
これらの大型イベントはグラフィックや音楽も凝っており、本作の見せ場となっています。

またシステム面ではセーブ機能(各機種のバックアップメモリまたはメモリーカードに対応)を使って任意に進行を保存可能です。
PC-FX版では内蔵メモリにセーブできますが容量に限りがあるため、必要に応じて別売のメモリカードも利用できます。

難易度は総じて高めで、一度のプレイでは全員卒業は難しいため、周回プレイを前提に設計されています。

残念ながらCG鑑賞モードや音楽鑑賞モードといった周回向けのおまけ要素は収録されていません(サウンドテストはSS/PS版など一部機種で実装)。
ただしPC-FX版では特定条件でカラオケイベントが発生し、生徒たちが歌うキャラクターソングを鑑賞できます。この曲はCDにも収録されており、ゲーム中で聞ける機会は稀ですがファンには嬉しい演出でした。

BGMは『ルナ』シリーズなどで知られる岩垂徳行氏らの手によるもので、前作より全体的に明るめの曲調です。PC-98版は内蔵音源のFM音源で演奏されましたが、CD-ROM機の移植版では主題歌を含むボーカル曲が追加されています。

オープニングテーマ「卒業II攻略法」は前作「卒業攻略法」と同じメロディーを基に新しい歌詞を載せたもので、3年B組の5人組が歌う賑やかな楽曲です。このように音楽面でも前作ファンへのサービス精神が見られます。

実際にプレイした感覚としては、学園という限られた期間で5人全員を相手にする忙しさと、多彩なイベントによる賑やかさが両立したゲームです。

ストーリー重視の恋愛ADVとは異なり、パラメータ管理とスケジュール調整がゲーム性の中心になっているため、人によっては「難しい」と感じる部分もあります。
しかし各生徒の反応が数値だけでなく表情やイベントとして返ってくるため、愛情を持って育成を続けられる工夫が随所にあります。

教育的指導の場面ではテキストに専門用語や四字熟語が飛び出すこともあり、ゲームを通じて言葉を学んだというプレイヤーの声もあります(実際、主題歌の歌詞にも難しい四字熟語が盛り込まれており話題になりました)。

総じて、『卒業II』のゲームシステムと演出は**「ギャルゲー×育成SLG」**のバランスが巧みに取られており、プレイヤーは教師という立場で没入感を味わいながら、生徒たちの成長物語を自ら紡ぐことができるようになっています。

発売地域ごとの差異

『卒業II 〜Neo Generation〜』は日本国内でPCからコンシューマーまで幅広く展開されましたが、地域やプラットフォームにより仕様の差異表現の違いがいくつか存在します。以下に主なバージョンの違いをまとめます。

プラットフォーム (発売地域)発売日発売元レーティング主な仕様・変更点
PC-9800シリーズ (日本)1994年5月27日JHV18禁 (後にR指定) オリジナル版。登場人物は基本CG16色のPC画面。主要キャラに音声なし、テキスト主体。未成年の飲酒・喫煙シーン含み倫理審査で18禁指定。発売1か月後に15禁へ緩和。PC版ゆえ性的描写の暗示はあるが露骨な表現は控えめ。BGMはFM音源演奏。
PCエンジン SUPER CD-ROM² (日本)1994年12月23日リバーヒルソフト全年齢対象 初の家庭用移植。PC-98版ベースに、キャラデザイン刷新(よりアニメ調に)、主要キャラに声優ボイス追加。CD-ROMの大容量活用でイベントCGやBGM強化。未成年飲酒・喫煙など不良イベントはそのまま描写(当時コンシューマーに年齢規制なし)だが、文脈上の更生シナリオとして扱われる。要バックアップRAM(またはACカード)対応。
PC-FX (日本)1994年12月23日リバーヒルソフト全年齢対象 PC-FX版独自要素: タイトルを『卒業II FX』と銘打ち、画面UIを大幅アレンジ。パラメータ表示を簡略化し、生徒の表情変化などビジュアル面で心理を表現。校長先生キャラを新規追加し助言イベントを強化。イベントCGやアニメーションを多数追加し、PCエンジン版よりリッチな演出。声優ボイスはPCエンジン版と同じく主要キャラ対応。
セガサターン (日本)1995年8月11日リバーヒルソフトセガ18歳以上推奨 基本内容はPC-FX版に準拠しつつ、セガ独自の「18歳以上推奨」マークを表示(これは倫理的配慮で性的表現ではなく不良行為描写に対する目安)。PC-FX版相当のイベント・CGを収録し、操作系なども踏襲。標準でサウンドモード・おまけ要素をメニュー実装。
プレイステーション (日本)1995年10月27日リバーヒルソフト全年齢対象 内容は概ねPC-FX/SS版と同等。ただし問題となった不良イベントの一部が別の内容に差し替えられている(例:喫煙→ガムを噛む描写に変更等)。ソニーの審査に合わせ露骨な表現をマイルド化。セーブはメモリーカード対応。
3DO (日本)1995年11月22日北部通信工業16歳未満不適 タイトル名『卒業II Neo Generation SPECIAL』。3DO版独自追加: 新規制作のオープニングアニメ、各キャラの新イベント、他機種未収録の個別エンディングCGを追加収録。ハード性能に合わせ画像解像度など微調整。3DOのレーティングポリシーで16歳以上推奨に指定。
Windows 95 (日本)1996年3月ゲームバンク18禁相当 (実質15+?) PC版の移植。内容はほぼコンシューマー版準拠で全年齢向け(ソフ倫審査は受けず一般向け流通)。主要キャラにボイス搭載し、グラフィックも高解像度化。後に2004年にIRI社から復刻版も発売。
Windows 95 (北米)1997年 (英語版)ヘッドルーム・Mixx Ent.ESRB Teen相当 タイトル『Graduation』あるいは『Graduation II: Neo Generation』として北米PC市場向けに公式英語ローカライズ版が発売。登場人物名や設定が西洋風に変更され、英語音声吹き替え(一部は米国人声優による演技)が収録。性的要素はなくティーン向け学園SLGとして扱われた。

※上記のように、本作は幅広い機種で展開され、それぞれ微妙に仕様が異なります。特にコンシューマー版では倫理基準に合わせた調整が行われており、プレイステーション版のようにイベントの差し替えによる表現変更が存在します。

一方で3DO版のように独自コンテンツを追加した例もあり、全バージョンを遊び比べてみるとイベント数や難易度、演出に違いが感じられます。

例えばPC-FX版はパラメータ非表示ゆえに難易度が高いとされますが、プレイヤーに想像させるゲーム性を楽しむ向きもあります。

セーブデータの互換はないため、それぞれ一から攻略する必要がありますが、熱心なファンの中には全機種コンプリートを目指した人もいるようです。

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売上本数と評価比較

正確な販売本数の公表データはありませんが、PC-98版は前作のヒットを受けてまずまずの売上を記録し、コンシューマー各版もシリーズファンや美少女ゲーム愛好者を中心に一定の支持を得たと推測されます(各社から続編・関連作が出たことがその証左です)。

評価面では、発売当時のゲーム雑誌レビューにおいて平均的なスコアを受けています。例えば『ファミ通』クロスレビューではPCエンジン版が40点満点中23点(5,5,7,6のような内訳)とやや辛口で、「シミュレーション要素が人を選ぶ」「地味だが作業は面白い」といったコメントがありました。

一年後のセガサターン版では26点とやや上昇し、「丁寧な作りで遊びやすくなっている」「前作ファンには嬉しい改良」といった肯定的な意見も増えました。

プレイステーション版についても概ね同程度の評価だったと伝えられています(※PS版のファミ通レビュー詳細は未確認ですが、メディア移行による大差はない模様)。雑誌『電撃PCエンジン』や『電撃王』でも紹介記事が組まれ、「教師としての視点がユニーク」「前作ファンには安心して遊べる続編」と評されています。

また本作自体の売上よりも、ときめきメモリアル現象の陰で地道にシリーズ展開した点に業界的意義があり、メディアミックス(小説やドラマCD、フォトCDの発売)も行われて熱心なファン層を獲得しました。

年齢制限と修正点

上述の通りPC-98版は発売当初18禁でしたが性的描写はごく僅かで、本質は教育SLGであるため他機種では全年齢向けとして問題なく受け入れられました。

プレイステーション版での表現修正は、ソニーのポリシーに則り「未成年の飲酒・喫煙」が描かれるイベントを削った程度で、物語の骨子に影響はありません。

セガサターン版が18歳以上「推奨」なのは自己規制に近く、実際には購入制限なく販売されていました。

3DO版の16歳未満不適は海外市場も意識したレーティングと言えます。

なお北米英語版(Windows)はESRB:T (Teen)相当で発売され、こちらも教師と生徒が酒を酌み交わすようなシーンはカットされています。
その代わりキャラクター設定が「アメリカの高校に赴任した教師が問題児を指導する」というローカライズになっており、日系ブラジル人のシンディが「スペイン語混じりのラテン系少女」に変更されるなど独自の改変も見られます(英語音声も当時としては珍しい試みでした)。

最後に移植版ごとの容量について触れると、PC-98版はFD版に加えてCD-ROM版も存在し、後者には音楽CDトラックが付属しました。

PCエンジン版およびPC-FX版は当然CD-ROM1枚で、セガサターン/PS/3DOも各1枚組です。Windows版もCD-ROM1枚でした(北米版パッケージには「Windows 95 CD-ROM」と記載)。

容量上の都合で各版に収録しきれなかった要素は特に無く、むしろ先述のように後発のハードほど追加要素が増えて豪華になっています。

開発スタッフと制作秘話

主要スタッフ

『卒業II』の開発陣は前作から引き続き参加したメンバーと新規参加者が混在しています。

プロデューサーは窪田正義氏(ジャパンホームビデオ所属)で、彼は前作『卒業』や関連作品にも深く関わったシリーズの生みの親です。

シナリオ面のクレジットは明確でありませんが、当時JHVが手掛けた他のゲームやノベライズ展開から、社内スタッフと外部ライターの協同でシナリオ構築が行われたと考えられます。

キャラクターデザイン・原画はこばやしひよこ氏。前作から引き続き参加し、本作の5人のヒロイン像を形作りました。
デザイン面での制作秘話として、各キャラの名前はこばやし氏のアイデアで**「クレージーキャッツ」(ハナ肇とクレージーキャッツ)という昭和のコメディグループのメンバーに由来しています。

例えば石橋(石橋エータロー)、犬塚(犬塚弘)、桜井(桜井センリ)、谷(谷啓)、安田(安田伸)といった具合で、ユニークな姓にはそんな遊び心が隠されていました。しかし当初は別の姓だったキャラもおり、没案から一部名前が入れ替わったという設定資料上の裏話もあります。

音楽スタッフは前作ではPCエンジン版から参加した岩垂徳行氏や大熊謙一氏らツーファイブ(当時ゲーム音楽制作集団)が、今作では最初のPC-98版から楽曲を手掛けています。

岩垂氏は『グランディア』『逆転裁判』シリーズで知られる作曲家で、本作では主題歌「卒業II攻略法」や多数のBGMを担当しました。
ポップで前向きな曲調が多く、前作より明るい学園生活を演出しています。

主題歌の作詞は六月十三氏、歌唱はヒロイン5人組(声優陣)によるもので、南場千絵子さん(石橋役)や萩森侚子さん(犬塚役)など当時ベテランの声優が参加しました。
声優陣は他に浦和めぐみさん(シンディ役)、鈴木砂織さん(谷役)、中島千里さん(安田役)など。いずれも90年代にアニメ・ゲームで活躍した女性声優です。

キャスティングの舞台裏として、主要5人に関しては前作『卒業』の声優(当時はOVA版など)とは全員入れ替え、新規の人選となっています。校長先生役には前述の岸野幸正氏が抜擢され、重厚かつコミカルな演技でゲームを引き締めています。

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開発体制

前述の通り開発にはヘッドルームテンキーイメージワークスといったゲーム制作会社が協力しています。

これらの会社はPCエンジン版・PC-FX版の実装やグラフィック・プログラムを担当した下請け開発元です。
たとえばテンキーはPCエンジン版『卒業』やPC-FX『卒業II FX』など複数の移植を手掛けており、後に『メルティランサー』シリーズなどで名を知られるようになります。

開発期間はPC-98版が約1年弱と思われます。
前作『卒業』から2年しか経たないスパンでの発売でしたが、その間にシステム刷新やキャラ刷新を行った点は当時としてはハイペースでした。
複数機種への移植展開も同時進行で企画されており、PCエンジン版とPC-FX版はほぼ同時発売を実現しています。

特にPC-FX版はハード発売と同時ということで、NECホームエレクトロニクス側からのサポートや調整もあったと推測されます。
制作予算チーム規模の明確な数値は公開されていませんが、同時期の平均的PCゲームよりリッチな内容からして、前作のヒットで得た利益をかなり投入して開発された可能性があります。

背景には当時JHVが家庭用ゲーム市場への参入を図っており、『卒業II』をその旗艦タイトルとして位置付けていた事情もあるでしょう。

制作秘話・インタビュー情報

公式の開発者インタビュー記事は多くありませんが、後年のゲーム雑誌企画や4Gamerなどでいくつか裏話が紹介されています。

シナリオ面では「先生が主人公という設定ゆえに倫理表現で苦労した」という旨のコメントがありました。
特に恋愛関係の扱いは微妙で、当初PC-98版では一部18禁CGも検討されたそうですが、「卒業」というテーマにそぐわないとして見送られた経緯があったとのことです(結果的に前述の不良描写で18禁になったのは皮肉な話です)。

ゲームシステム面では「前作では生徒が勝手にディスコ通いしたりして手を焼いたので、今作では教師が週末に介入できるようにした」と語られています。
実際、週末指導を入れたことで「ずっと先生に監視されて生徒は大変(笑)」という自虐的なコメントも開発者は残しています。
しかしそれにより「より学校らしいリアリティが出せた」と手応えを感じたとも述べています。

また、広報戦略として本作はアニメ雑誌やラジオとも連動した展開が行われました。
電撃G’sマガジンでは声優インタビューや読者参加企画が掲載され、キャラ人気投票では犬塚さおりが1位を獲得したとのことです。

ドラマCD制作時のエピソードとして、犬塚役の萩森さんが関西弁のセリフに苦労し録り直しが多発したなど、舞台裏の微笑ましい話も伝えられています。

音楽制作では主題歌のレコーディングで5人の声優がスタジオに揃い、本物の「3年B組合唱団」さながらに和気あいあいと収録が進んだそうです。

こばやしひよこ氏によると「前作はキャラが強すぎたので、今作では少しマイルドな性格付けにした」とのことで、個性が平均化した反面リアルな学園クラスらしさが出たと述懐しています。実際プレイヤーからも「前作ほど破天荒ではないが身近に感じる」という声が寄せられたとのことです。

関連作品とシリーズ展開

本作の成功を受け、『卒業II』は様々なメディアミックスが展開されました。

ノベライズ(電撃文庫など)では各ヒロインにスポットを当てたストーリーが描かれ、ドラマCDも発売されています。

ゲーム音楽のサントラCDやヴォイスコレクションCDも日本コロムビアからリリースされました。
これらの制作秘話として、ドラマCD脚本ではゲーム中描かれなかった「その後の物語」やヒロイン同士の掛け合いが膨らまされており、キャストもアドリブを交えつつ楽しく収録したといいます。

開発スタッフは続編『卒業III 〜Wedding Bell〜』にも引き続き参加し、本作のヒロインたちもゲスト的に登場します(成長して先生になった安田舞奈などが描かれる)。

シリーズ全体を通して、企画立案者の窪田氏は「卒業とは人生の一区切りであり始まり。ゲームを通じてプレイヤーの皆さんにも何かを持ち帰ってほしい」とコメントしています。教育をテーマにしたゲーム制作は異色でしたが、それだけに情熱を持って作り込まれ、多くのプレイヤーの心に残る作品となったのです。

当時の評価とその後の影響

発売当時の評価

『卒業II』は専門誌やユーザーから賛否織り交ぜた評価を受けました。
まず雑誌レビューでは、前述のファミ通クロスレビューで平均5~6点台とやや低めのスコアでした。

レビュアーからは「作業的な育成シミュレーションだが、キャラは可愛い」「教師になりきる設定は新鮮」といった声が出ています。
特に指摘されたのは「数値管理が複雑」「イベント探しが大変」といった難易度面の厳しさでした。

しかし一方で「やり込みがいがある」「卒業させてあげられた時の達成感が良い」とゲーム性を評価する意見もあります。

電撃PCエンジン誌(1995年2月号)ではシステム改良点が詳しく紹介され、「席替えや個別指導の導入でより現実の学園に近づいた」という肯定的な記事が掲載されました。

総じて、雑誌メディアの評価は「前作の正統進化だが目新しさは薄い」「良くも悪くも堅実な続編」といった内容に落ち着いています。

特筆すべきは、本作が一般コンシューマー向け美少女ゲームの草分けと位置づけられたことです。

ファミ通など大手ゲーム誌で美少女ゲームが取り上げられる機会は当時まだ少なかったのですが、『卒業II』は家庭用機で展開されたことで紙面でも扱われ、市場の拡大に寄与しました。

プレイヤーやファンの声

発売当時から現在に至るまで、本作はレトロゲームファンの間で根強い支持があります。ユーザー口コミでは「先生として生徒に感情移入してしまい、つい夜遅くまでプレイした」といった熱中エピソードや、「石橋さんに敬意を持ってもらおうと必死になった」などパラメータに一喜一憂した思い出が語られています。

また「ギャルゲーなのに恋愛が主体ではないという点が逆に新鮮だった」という声もありました。恋愛要素控えめとはいえ、お気に入りの生徒と心を通わせる展開に胸を熱くしたというプレイヤーも多かったようです。

インターネット上のレトロゲームレビューでも、本作の緻密なゲームデザインやクセの強いキャラクター造形が振り返られています。
「自由度が高く試行錯誤が楽しい育成ゲーム」「反抗期の女子高生相手に奮闘する疑似体験がユニーク」といった評価が見られ、高難度シミュレーションとして今なおチャレンジするゲーマーもいるようです。

エミュレーターの発達によりPC-FX版など入手困難なバージョンもプレイ環境が整い、近年になってから動画配信サイトで実況プレイが行われるケースも出てきました。
VTuberが本作を取り上げ「先生になって卒業させるぞ!」と実況した配信は数万の視聴を集め、レトロゲーファンのみならず若年層にもその存在が再認識されています。

シリーズ第1作との関連・影響

本作は前作『卒業 〜Graduation〜』の直接の続編であり、基本コンセプトは「担任教師が5人の女生徒を卒業まで導く」という共通点があります。

ただ前作が持つインパクト(不良少女グループを相手にする破天荒な設定)に比べると、今作はやや落ち着いた印象であることから「前作の二番煎じ」との指摘も当時なされました。

しかし前作から導入された「育成シミュレーション+美少女キャラ」というゲーム性は本作で洗練され、のちの作品へ確実に影響を与えました。
事実、同じ路線の作品として翌1995年には光栄から『慶応遊撃隊活劇編』という教師ものギャルゲーが発売されたり、他社も学園もの育成ゲームを企画した形跡があります。

直接の続編『卒業III 〜Wedding Bell〜』(1997)では本作ヒロインの妹世代が登場し、「卒業II」の存在がシリーズ内でしっかり位置づけられました。

また、前述の通りときめきメモリアルが本作発売と同日に生まれ大ヒットしたことは象徴的で、美少女ゲームの主流がPCからコンシューマーへ移行する端緒となりました。

本作はその過渡期にあって、地味ながらもコンシューマー市場に橋頭堡を築いた作品と評価できます。以降、家庭用ゲーム機向けにも多くのギャルゲー・恋愛SLGが発売されるようになり、本作もその流れの一翼を担った歴史的タイトルとして語られます。

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プレミア価格・コレクション性

2020年代の現在、レトロゲーム市場ではPC-FX本体やソフトがコレクターズアイテム化しています。
ただし『卒業II』に関しては生産数が比較的多かったこともあり、中古市場価格はそれほど高騰していません。

PCエンジン版は流通量が多く、近年でも数百円〜千円程度で購入可能とのデータがあります。
PC-FX版もPC-FX全盛期に大量出荷されたためか、中古相場は数千円程度とプレミアにはなっていません(※一部未開封品などは高値の場合あり)。

むしろWindows英語版(Graduation)や3DO版SPECIALといったレアな派生版の方がコレクター間で珍重される傾向があります。
例えば北米版『Graduation』はMixx Entertainmentから少数リリースされたのみであり、中古流通が極めて少ないため海外オークションで高額になることもあります。

また『卒業II』の関連グッズとして発売当時テレホンカードポスターなど販促品が作られており、これらは現在レアアイテム化しています。

総じて、『卒業II』はシリーズファン向けアイテムとして一定の需要はありますが、ゲーム内容が広く評価されているゆえに「誰もが高値で欲しがる」というより、「知る人ぞ知る通好みの一作」として穏やかな人気を保っている状況です。

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まとめと考察

『卒業II 〜Neo Generation〜』は、美少女ゲーム草創期において異色の存在感を放ったタイトルでした。

PC-FXという特殊なプラットフォームで強化された映像演出、教師という他に類を見ない主人公設定、そして硬派な育成シミュレーション要素と萌えキャラの融合。
これらは当時としても挑戦的な試みであり、本作がPC-FXや他の移植先で果たした役割は決して小さくありません。

PC-FXタイトルとして見ると、同ハードのコンセプト「アニメを見るようにゲームを遊ぶ」に沿った佳作であり、ローンチタイトルの一つとしてPC-FXの方向性を示した意義深い作品でした。

ライブアニメーション的なオープニングや豊富なイベントCGは、PC-FXならではのリッチな表現力を引き出しています。

また家庭用ゲーム機で美少女ゲームを遊べる時代の幕開けを象徴する作品でもあり、コンシューマーゲームの多様化に貢献しました。

現代の視点からプレイすると、本作には確かに古さも感じられます。
UIや操作系は現在のゲームと比べると不便な点(メッセージスキップ無し、既読スキップ無しなど)があり、グラフィックもドット絵特有の味わいはあるものの解像度や色数の制限から粗さが目立つ部分もあります。

しかし一方で、キャラクター描写の丁寧さゲーム性の奥深さは色褪せていません。
5人の生徒たちはステレオタイプに留まらない細かな設定がなされており、プレイヤーの行動次第で見せる表情が変化します。

隠しパラメータによって同じプレイでも展開が変わるなど、周回プレイへの耐久性も備えています。
これは現在主流の恋愛アドベンチャーゲーム(一本道のシナリオ重視型)とは異なる遊び応えであり、「ゲーム」としての完成度はむしろ高いと言えます。

現代では教師と生徒の恋愛というテーマはセンシティブで描きづらい面がありますが、本作は基本的に教育と成長を主軸に置いているため、今遊んでも不快な印象は受けにくいでしょう。
むしろ「生徒たちを見守り導く」ヒューマンドラマとして、年齢を重ねたプレイヤーほど感情移入できる部分があるかもしれません。当時高校生だったファンが大人になり再プレイすると、教師の目線で改めて物語に深みを感じるという意見もあります。

リメイクや移植の可能性

2025年現在、『卒業II』のリメイクや公式な再移植の話は出ていません。
しかしシリーズ全体としてはプロジェクトEGGでの配信(PC-98版)や、関連商品としてデジタルミュージアム的な展開があってもおかしくないタイトルです。

ファンからは「現代向けに遊びやすくして復刻してほしい」「スマホアプリで復活しないか」といった要望も散見されます。

特にUI改良や難易度調整を行えば、システムの面白さは今なお通用するため、新規ユーザーにも受け入れられる可能性があります。

また教師シミュレーションというニッチジャンルゆえに競合が少なく、うまく現代風アレンジすればオンリーワンの作品として再評価される余地もあるでしょう。例えば3Dキャラでのリメイクや、逆に当時風ドット絵のリマスター版など、様々な形で蘇らせることが考えられます。

一方で、仮にリメイクとなると前提となる世界観(1990年代の女子高の雰囲気)をどうするかという問題もあります。
携帯電話のない時代背景、バブル期直後の空気感、不良文化など、当時ならではの要素が多分に含まれており、それらも含めてレトロゲームの味と捉えられています。

そのためファンの中には「下手に今風に変えるより、当時のままが良い」という声もあるでしょう。現状ではエミュレーターや中古ソフトでプレイ可能な環境は整いつつあるため、オリジナル版をじっくり遊び込んで欲しいという意見もあります。

総括

『卒業II 〜Neo Generation〜』は、ギャルゲー黎明期の歴史的作品として評価できます。

前作と共に「ギャルゲーを語る上で外せない」一本であり、教育者という立場で美少女ゲームを成立させたユニークな例です。

PC-FXというマニアックなハードで洗練を極め、他機種へ広がったその歩みは、ゲーム業界の多様化を象徴しています。

現代でもプレイする価値は十分にあり、むしろ今だからこそ味わえるノスタルジーと新鮮さが共存する作品と言えるでしょう。

プレイヤーそれぞれが自分なりの「卒業式」を迎えられるこのゲームは、ゲーム内の生徒たちだけでなく、遊んだ人自身の思い出として心に刻まれる一生の宝物のような一本です。

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