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ツォンは、『ファイナルファンタジーVII』シリーズにおける神羅カンパニーのタークスの主任として、その存在感と決断力で物語全体に深い影響を与えるキャラクターです。
彼は、直接操作できる主人公ではないものの、数多くのシーンで登場し、エアリスやクラウドたちとの関わりを通じて、プレイヤーに強烈な印象を残しています。
基本情報とプロフィール

ツォン(Tseng)は、神羅カンパニー総務部調査課《タークス》の主任として登場するキャラクターです。
年齢や身長、血液型といった詳細なプロフィールは公式には明かされていませんが、ファンの間では30歳前後ではないかと推測されています。
身長も公表されていませんが、クラウドやレノたちより高めの180cm前後と推測されます。
物静かでクールな性格であり、一人称は「私」。タークスメンバーをまとめ上げ常に冷静に指示を出す、理知的なリーダーとして描かれています。
神羅カンパニーの社内では、各種極秘任務に従事するタークスの長として高い信頼を得ており、レノやルード、イリーナなど個性豊かな部下たちをプロの集団としてまとめ上げる統率力を持ち、組織内での信用度も非常に高い人物です。
一見感情を表に出さない冷徹な印象ですが、任務を離れれば部下思いの一面ものぞかせます。また幼い頃から面識のあるエアリス・ゲインズブールには複雑な感情を抱いており、単なる任務対象以上の存在として意識しています(詳細は後述)。
公式設定で語られてはいないものの、出身地は不明で、ミッドガルのスラム育ちで古代種であるエアリスとは異なる背景を持つと考えられます。
なお、同僚から「ツォンさん」と呼ばれることもあり、階級的にも精神的にもタークスの支柱となる人物です。
ツォンの声優を担当するのは諏訪部順一さんです。諏訪部さんは低く渋い声質で知られる人気声優で、『黒子のバスケ』の青峰大輝役や『Fate/stay night [UBW]』のアーチャー役など多数の代表作があります。
ツォン役でもその落ち着いた演技によって、キャラクターの冷静さや知的な雰囲気が見事に表現されています。
実は『FFVII アドベントチルドレン(AC)』以降、日本語版ツォンの声優は諏訪部さんに一新されており、彼の起用によってツォンの魅力がさらに引き立ったとファンから高く評価されています。英語版では英語声優も起用されていますが、日本のファンにとって諏訪部版ツォンの印象は強く、「渋い声がツォンのクールさにマッチしている」との声が多いようです。
ゲーム本編(『FFVII』)での役割とエピソード

ツォンは『ファイナルファンタジーVII』(オリジナル版)本編を通じて、神羅の一員として物語の裏側で暗躍する存在です。
直接プレイヤーが操作するキャラクターではありませんが、随所でクラウドたち主人公一行と関わりを持ち、その行動は物語に重要な影響を及ぼします。
ミッドガル編において、ツォンが初めて姿を見せるのは七番街スラムでのプレート落下事件の前後です。
神羅によるアバランチ殲滅作戦が進行する中、エアリスがバレットの娘マリン(マーレン)を避難させようとした際にツォンが現れ、エアリスを確保します。
オリジナル版ではこの拉致シーンが直接描かれず「エアリスが神羅に連れ去られた」と語られるのみでしたが、ツォンがエアリスを拘束した張本人であることが示唆されています。
神羅ビル潜入時には、ツォンは捕えたエアリスを宝条博士に引き渡す任務にあたります。
クラウド達が神羅ビル最上階でエアリスを発見する場面では、ツォンがその場に居合わせ 、結果的にクラウドたちも拘束されることになりました。プレジデント神羅殺害事件後、混乱に乗じてクラウドたちは脱出しますが、この段階でツォンは一時姿を消します。
ミッドガル脱出後の大空洞までの旅路でも、ツォンは各所で暗躍します。例えばミスリルマイン(神羅の炭坑)でクラウド一行がタークスに遭遇するシーンでは、エアリスがパーティにいるか否かでツォンのセリフが変化します。
エアリスが同行していない場合、ツォンはクラウドにエアリスに「よろしく伝えておいてくれ」と伝言を残して立ち去ります。この台詞は、彼が単なる職務以上にエアリス個人を案じていることを示唆するものです。
一方エアリスがその場にいる場合、細かい台詞は異なりますが、直接的な戦闘は起こさず撤退します。ツォン自身、オリジナル版の『FFVII』本編では戦闘シーンが一切無く、常に一歩引いた立ち位置から暗躍するのが特徴です。
ディスク1後半の重要イベント「古代種の神殿」(通称:失われた都市の神殿)でもツォンは登場します。
宝条の指示で古代種(セトラ)の遺産を求め、神殿へと先行していたツォンでしたが、到着したクラウドたちが目にしたのはセフィロス(正確にはジェノバの化身)に胸を刺され重傷を負ったツォンの姿でした。
ツォンは神殿内部でセフィロスに奇襲され瀕死となり、クラウドたちに古代種の鍵「黒マテリア」を託すことなく力尽きます。
この時、エアリスは敵であるはずのツォンを案じて駆け寄り、その傷を見て涙を流しています 。エアリスにとって幼少から知る顔なじみのツォンが重傷を負ったことは大きな衝撃であり、ツォンもまた「もう会えなくなるが元気でな(元気でいてくれ)」という趣旨の言葉をエアリスに伝えていました。この神殿での出来事により、一時はツォンは死亡したとも受け取られました。ツォンの部下である新人タークスのイリーナ(イリーナ)は、その後クラウドたちに「ツォンの仇!」と詰め寄り、スノーボードで訪れた雪山のロッジで彼女がクラウドへ殴りかかってくるイベントも発生します。イリーナが仇討ちを図るほど、ツォンは部下思いで慕われていたことが窺えます。
結果的にツォンは神殿崩壊時の混乱で生死不明となり、本編中はそのまま姿を消します。
しかし、この出来事はストーリー上大きな意味を持ちました。タークスのリーダー不在により、以降の神羅の動きには狂いが生じ、またエアリスが神殿で使命を悟る契機にもなりました。ツォンの選択(エアリスを連れ戻す任務に徹しつつも、彼女への思いからか神殿では単独行動をとったこと)が、物語の流れに微妙な影響を与えていたと言えます。
他の関連作品での登場(『BC』『CC』『AC』など)

ツォンは『FFVII』本編以外のスピンオフや前日譚作品にも多数登場し、それぞれの時代で異なる姿を見せています。それらを年代順に追いながら、作品間での描写やキャラクター性の違いを見てみましょう。
『ビフォアクライシス ファイナルファンタジーVII』(Before Crisis FFVII) – この作品は『FFVII』本編より約6年前の世界を舞台に、タークスの活躍を描いたモバイルゲームです。
若き日のツォンも登場しており、当時タークスを率いていた元主任ヴェルドの副官(副主任)という立場でした。作中では若さゆえにまだ未熟さが残る面も描かれており、任務中に冷静さを欠く場面も見られます。
戦闘では拳銃を扱いますが、ゲーム内の性能的には同僚のレノの方が強いと評される場面もあったり、性格的にも人間臭い一面が強調されています。しかし物語が進むにつれ、数々の試練を経て成長していくツォンの姿が描かれました。
『BC』終盤では、当時の上司ヴェルドとその娘を神羅から救出するミッションで、ツォンは苦渋の決断を迫られます。任務遂行のため、やむなくヴェルド親子の死を偽装しつつ密かに救出するという作戦に関わり、その際にヴェルドから譲り受けた「フルケアのマテリア」が重要なキーアイテムとなりました。
このフルケア(完全回復魔法)を巡るイベントは、のちにツォン自身が絶体絶命の危機(=神殿での重傷)から生還する伏線ではないかともファンに推測されています。
『BC』の物語ラストで、神羅上層部との確執からタークスメンバーが激減した際、ツォンは「自分を含め3人だけになってもタークスを続ける」ことを決意します。
この決断と忠誠心が実を結び、結果的にタークスは存続。ツォンは後に正式に主任に昇格し、『FFVII』本編へと繋がっていきます。
『BC』時代のツォンは髪を後ろで束ねたロングヘアがトレードマークでしたが、物語終盤でアバランチ(バレットら)の一番魔晄炉襲撃に対処する頃、髪を下ろして現在のスタイルに変えています。

『クライシス コア ファイナルファンタジーVII』(CC FFVII) – 『FFVII』本編の7年前から本編直前までを描いた作品で、主にソルジャーのザックスが主人公です。
この作品にもツォンは登場し、役職は引き続きタークス副主任ですが、物語を通じて主人公ザックスの良き理解者的存在として描かれました。
冷静沈着な性格はそのままに、任務を共にこなす中でザックスとは友情にも似た信頼関係を築いていきます。
たとえば、ウータイ戦争後の調査任務や、逃亡した元ソルジャー(ジェネシス)に関する情報収集などでザックスと行動を共にし、お互いを助け合うシーンが見られます。
ツォンは任務でザックスと行動を共にする中、ザックスの恋人エアリスの存在も認識しており、陰ながら二人を気にかける描写もありました。
CCの中盤、ザックスが五年前のニブルヘイム事件後に神羅屋敷で被験体にされ行方不明になった際、ツォンは宝条博士に執拗に食い下がってザックスの安否を問い質していたことが劇中の記録で判明します。
また、エアリスからザックス宛の手紙を50通以上預かり、大切に保管していたのもツォンでした。
こうしたエピソードから、ツォンが几帳面で真面目な性格であること、そして友人(ザックス)想いの一面を持っていることが伺えます。通常業務では感情を表に出さないツォンですが、信頼する人物に対しては情に厚く尽力する姿が印象的です。
また、CCにはユニークな演出としてデジタル・マインド・ウェーブ(DMW)というスロット式のリミット技システムがあり、ツォンもスロット絵柄として登場します。
ツォンの絵柄が揃うと発動するリミット技は「エアストライク」(空中支援要請による爆撃)で、本人も登場し衛星軌道からの砲撃を指示する演出が見られます。戦闘能力を直接見せる機会が少なかったツォンですが、DMW演出によってタークスのリーダーらしい切れ者ぶりが描かれたと言えるでしょう。
なお、CCでもツォンのCVは諏訪部順一さんが担当し 、この作品からツォンに触れた新規ファンにもその渋い魅力が印象付けられました。

『ラストオーダー -FFVII-』(LO FFVII)では本編ニブルヘイム事件を描いたアニメ作品となっており、ここでもツォンは登場します。
時間軸的にはCCと重なる部分ですが、ロングヘアを後ろで軽く纏めたツォンが神羅軍を率いて登場し、神羅屋敷から脱走したザックスとクラウドの追跡を指揮します。
LOではザックスに対し発砲命令を下すなど冷徹な指揮官としての側面が強調されましたが、これは事件を重く見た上層部の圧力下での行動ともとれ、ツォン自身も苦悩する表情を見せています。
LOでの外見は『BC』『CC』同様に髪を束ねていますが、軍服風のコートを羽織っている点が他作品と異なるビジュアルです。

『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』(FFVII AC) – 本編から2年後を舞台にしたCG映画作品でも、ツォンは重要な役割で再登場します。
本編終盤の神殿イベント以降消息不明だったツォンですが、実は一命を取り留めており、タークスに復帰していました。
AC冒頭では、ツォンと部下のイリーナが北の大空洞内部でジェノバの首(頭部)を発見しますが、セフィロスの意志を継ぐカダージュ一味の奇襲を受け拉致されてしまいます。
カダージュたちから激しい拷問を受けたものの、物語中盤でヴィンセント・ヴァレンタインに救出されました。終盤ではルーファウス神羅社長の護衛としてレノ・ルード・イリーナと共に再集結し、バハムート戦やメテオ後の混乱に対応します。
劇中、ツォン自身の台詞は少なめですが、ルーファウスがビルの屋上から落下する際にとっさに駆け寄り救命ネットを広げて彼を救うシーンが追加されており(AC完全版で描写)、依然として社長の右腕として健在であることが示されました。
このACでの登場により、ファンは「ツォン生存」の事実を知ることになりますが、実はノベライズ作品『On the Way to a Smile』において、ツォンはケット・シー(リーブ)やかつての上司ヴェルドら元タークスメンバーによって神殿から救出されたことが語られています。いずれにせよ、AC時点でもツォンはタークスの指揮官として復帰し、引き続きルーファウスの片腕として世界の裏側で暗躍し続けているのです。
このように、ツォンは『FFVII』コンピレーション作品全体を通じて一貫して登場しており、その時々で立場や役割こそ違えど、「タークスの要」として物語に欠かせない存在となっています。作品ごとに掘り下げられた人間関係(ザックスとの友情やヴェルドとの師弟関係など)によって、オリジナル版では見えにくかったツォンの内面が補完され、キャラクター像に厚みが増している点も見逃せません。
エアリス・ゲインズブールとの関係性

ツォンとヒロインの一人エアリス・ゲインズブールとの関係は、『FFVII』の物語において非常に興味深い側面を持っています。神羅の追っ手と古代種の少女という立場上は敵対関係にありながら、単なるそれだけでは割り切れない微妙な感情の結びつきが描かれているからです。
エアリスとツォンの出会いは、彼女がまだ7歳頃の幼少期に遡ります。エアリスの実母イファルナが亡くなった後、エアリスはエルミナ(エアリスの養母)に引き取られミッドガルのスラムで育ちますが、その幼い頃からツォンは神羅の命でエアリスの監視役を務めてきました。
ツォン自身、この長い付き合いの中でエアリスに対し単なる任務対象以上の感情を抱くようになっていたようです。ツォンは任務上は冷酷に振る舞いつつも「実際は任務の対象以上の複雑な感情を抱いている」状態であり、幼い頃から自分が見守ってきたエアリスに対して特別な思いがあったことが示唆されています。
任務遂行のため、過去にエアリスが余計な発言をしようとした際に思わず平手打ちしてしまったこともあるようですが、それも彼女の身を案じての苦渋の行動だったのかもしれません。
一方、エアリスの側もツォンを単なる敵とは思い切れない部分があります。幼い頃から顔見知りであったため、神羅に追われる身と理解しつつもツォン個人にはどこか信頼や親しみを感じていた節があります。
例えば、先述した古代種の神殿でツォンが重傷を負った場面では、エアリスは敵であるはずのツォンを見捨てず駆け寄って心配しています。その姿に対し、もし本当にツォンを憎むだけの「敵」としか思っていなかったなら涙は流さなかっただろう、とファンからも指摘されています。
また、ツォン自身も「もう会えなくなるが元気でな」という別れの言葉をエアリスに掛けており、互いに複雑な想いを抱き合った二人だったとも評されています。
エアリスにとってツォンは、最初に接触した神羅の人間であり、自身が「古代種」として狙われる運命を象徴する存在でした。
しかし同時に、幼少期から半ば友人/兄妹のような奇妙な縁で繋がった相手でもあります。実際にエアリスが「初恋の人はツォンだった」という設定があるわけではありませんが、その関係性は恋愛とも違う特別な情に近いものとして描かれています。
ツォンから見ても、エアリスは年の離れた妹のような存在として可愛く思っていた可能性が高いともファンから推測されています。
『CCFFVII』では、ツォンがエアリスの元に極秘に設置していた監視カメラが登場し、それをザックスが発見するというコミカルな一幕もありました。ザックスから「どこかの盗撮マニアだな」と呆れられる始末。このシーンは笑いを誘いますが、裏を返せばツォンがそれほどまでにエアリスを常に気にかけていたことの表れでもあります。公私の境界が曖昧になるほどに長年エアリスを見守ってきたツォンの姿には、職務というより「彼女の人生を見届けている」という情が滲んでいると指摘するファンの声もあります。
物語終盤、エアリスは悲劇的な最期を遂げますが、その際ツォンは現場に居合わせませんでした(ツォンは神殿で負傷し退場済み)。その後の『AC』では、ツォンはエアリスの死に直接言及することはありません。しかし、小説『On the Way to a Smile』では、ツォンが部下たちから「7番街でのエアリスへの態度は偽悪的(悪ぶっていただけ)だった」とからかわれる描写があり 、ツォン自身もエアリスへの接し方について内心葛藤があったことが伺えます。偽悪的な態度とは、つまり「本心では善人でありながら悪人のフリをする様子」を指しますが、まさにツォンがエアリスに対して取ってきたスタンスそのものと言えるでしょう。
総じて、ツォンとエアリスの関係は敵対と友情(あるいは擬似的な兄妹愛)の狭間に位置する複雑なものでした。それゆえにファンの想像力を刺激し、ゲーム中では語られないエピソードや感情の機微を補完する二次創作も数多く生まれています。ツォンの冷静さの裏にある人間味、エアリスの優しさの裏にある戸惑い——この二人の関係性は、『FFVII』の物語に深みを与える重要な要素の一つとなっています。
タークス内での立ち位置と他メンバーとの関係

ツォンはタークスのリーダーとして、個性豊かな部下たちを率いています。彼自身の真面目で冷静沈着な性格は、自由奔放で癖の強いメンバーを纏める上で不可欠な要素となっており、良くも悪くも苦労人のリーダーとして描かれています。
タークスの主なメンバーには、軽口でマイペースなレノ、寡黙で実直なルード、新米で少しドジなイリーナなどがいます。それぞれが強烈な個性を持つ中、ツォンは信頼と威厳でチームを統率しています。
例えば、レノが仕事中に不真面目に見える態度を取った際にはツォンが厳しく叱責することもありますが、根底では互いに信頼関係が築かれており、任務遂行時には抜群のチームワークを発揮します。
ツォンは部下に対して基本的に寛容であり、多少の型破りな行動もプロとして信頼して任せる度量があります。これは、彼自身が長年タークスとして現場を経験し、メンバーそれぞれの力量や人間性を理解しているからこそできる芸当でしょう。

特にイリーナとの関係には注目すべきものがあります。イリーナは『FFVII』本編でタークスに配属された新人女性で、真面目で一生懸命な性格ですが少々空回りしがちな面があります。彼女は上司であるツォンに対して**明らかな好意(憧れ)を寄せており、作中でもそれが示唆されるシーンがいくつかあります。
例えば、ウータイでの任務中にイリーナがツォンと二人きりになった際に照れている描写や、上述したようにツォンが負傷した際に激情をあらわにしてクラウドたちに殴りかかった件など、彼女のツォンへの想いが感じられます。
ツォン自身もイリーナの気持ちに全く気付いていないわけではなさそうですが、公私を分ける性格ゆえか特に劇中で色恋沙汰になることはありません。
それでも、部下から慕われている上司としてツォンが描かれていることは間違いなく、イリーナにとっては頼れる憧れの先輩といった存在でしょう。
レノとルードとは、ツォンは長年の同僚でもあります。レノは砕けた言動が目立つ一方で仕事の腕は確か、ルードは寡黙ながら誠実でタフというバランスの取れたコンビです。ツォンはこの二人を信頼しきっており、危険な任務ほどあえて彼らに任せる場面も見られます。
例えば、『FFVII AC』ではジェノバ細胞を巡る戦いでレノとルードを単独でカダージュ一味と戦わせたり(結果的に二人は健闘し生還)、『FFVII リメイク』では神羅ビルでの対応を一任する場面などが描かれています。ツォンにとってレノとルードは共に数々の死地を潜り抜けてきた戦友であり、言葉少なでも深い信頼で結ばれている間柄です。
また、ツォンは上司への忠誠も厚く、新社長ルーファウス・神羅に対しては特に強い忠義心を見せています。元々タークス存続のため奔走してくれたルーファウスには恩を感じており、プレジデント神羅亡き後にルーファウスが社長に就任すると、その右腕として暗躍するようになります。
『FFVII リメイク』以降では、ツォンがルーファウス直轄の密命を受けて動く描写も追加され、タークス主任の立場を超えて社長補佐のような役割も担っていることが強調されています。実際『AC』では、ルーファウスの極秘行動(ジェノバの頭部確保作戦)にもツォンは同行し、命がけで彼を支えています。
こうしたツォンの部下からの信頼と上司への忠誠ぶりは、神羅カンパニー内でも屈指のものです。皮肉にも、その有能さゆえにプレジデント神羅からは疎まれたタークスが解散危機に陥った際もありましたが、ツォンは粘り強く組織を繋ぎ止めました。一度は人員が激減したタークスを立て直し、少数精鋭のプロ集団として維持できたのは、ツォンのリーダーシップがあってこそと言えるでしょう。部下からは慕われ、上司からは信頼される──ツォンは組織人として理想的な立ち位置を確立していたのです。
キャラクターの魅力とファンからの評価

ツォンというキャラクターの魅力は、一言で言えば「寡黙な中に秘めた熱さ」にあります。
表向きは冷徹で仕事一筋のエリートに見える彼ですが、前述のようにエアリスやザックスへの情、部下思いな面など人間味あふれる内面を持ち合わせています。このギャップがツォンの大きな魅力となっており、プレイヤーに強い印象を与えています。
まず、ルックス面でも人気のポイントがあります。黒のロングヘアをオールバック気味にまとめた整った顔立ちの青年で、常にダークスーツに身を包む姿は知的でミステリアスです。
いわゆる「イケメン」の部類に入り、実際ゲーム中でも神羅ビル受付嬢のスカーレットが「ツォンは有能でハンサムだ」と評するセリフが存在するほどです。
クールビューティーな外見に諏訪部順一さんの渋い声が加わり、大人の色気すら感じさせるキャラクター像は、多くのファンを惹きつけました。「敵キャラだけど好き」「タークスメンバーで一番カッコいい」という声もファンコミュニティでは根強く見られます。
性格面では、普段は冷静沈着ながら内に情熱を秘めている点が魅力です。
ツォンは決して感情を爆発させるタイプではありませんが、仲間を守るためならば自ら汚れ役を買って出る覚悟も持っています。
『BC』のエピソードで、組織を守るため敢えて冷淡に振る舞い仲間には憎まれ役を演じていたことは前述の通りです。
その一方で、独りになってでもタークスを続けようと決意する熱さも持ち合わせており 、この不器用なまでの忠義心と責任感は見ていて胸を打たれるものがあります。
ファンの間でも「報われないけど健気」「実は一番アツい男」といった評価があり、物語の表舞台でスポットライトを浴びることは少なくとも、裏で確かな仕事を成し遂げるツォンに対する支持は少なくありません。
実際、ツォンは物語中では「いないと困るのに報われにくいキャラ」などと揶揄されることもあります。『FFVII』本編ではディスク1の終盤でセフィロスに倒され、生死不明という不遇な扱いを受けたため、ある意味「報われない」立ち位置でした。
しかし、その後の作品や設定資料で掘り下げられた彼の背景や信念を知ると、実直で芯の通った人物であることが分かります。むしろ「しっかりと作り込まれたキャラクター」として評価する声もあり、縁の下の力持ち的な存在感がファンの共感を呼んでいます。
ファンからの人気度としては、主人公側のキャラクターほどの絶対数こそ多くないものの、固定ファンの熱量は高い印象があります。
特に日本のファンコミュニティでは、ツォンを主役に据えた二次創作(小説やイラスト)が一定の支持を得ています。エアリスとの関係性にスポットを当てた創作や、同僚のイリーナとのロマンスを描くもの、あるいはタークスの日常をコミカルに描いたものなど、その題材は様々です。
TwitterやPixivなどで「#ツォン」「#FF7タークス」などのタグを追うと、多数のファンアートが見つかります。黒スーツ姿でクールにキメたツォンは絵になるため、スタイリッシュなイラストも多く見受けられますし、逆にお茶目な表情を想像したギャグ作品も少なくありません。
キャラクターグッズの展開も、主要キャラほど多くはないもののリメイク版発売以降は増えてきました。アクリルスタンドやトレーディングカードなどにツォンがラインナップされており、公式側も一定の人気と需要を認識しているようです。さらに『FFVII G-BIKE』やカードゲームなど派生商品にも登場し、メディアミックスでも存在感を示しました。近年リリース予定のモバイルゲーム『FFVII エバークライシス』でもツォンが登場予定であり、改めて脚光を浴びる可能性があります。(BRING ARTS ツォン「ファイナルファンタジーVII」フィギュア)
総合すると、ツォンの魅力は「冷静なエリートと人情家の二面性」「影で物語を支える縁の下の力持ち」「スタイリッシュな大人の男性像」といった要素に集約できます。
これらが合わさり、ファンにとって唯一無二の存在感を放つキャラクターとなっています。派手さはなくとも深みのあるツォンという人物像は、『FFVII』という作品世界にリアリティと奥行きを与える重要なピースであり、今後の展開でもその魅力を増し続けることでしょう。
リメイク版での変更点や新たな描写

2020年に発売された『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下『FFVII リメイク』)では、ツォンの描写にもいくつかオリジナル版からの変更・追加がなされています。
リメイク版はミッドガル脱出までの物語を大幅に掘り下げた構成となっており、それに伴いツォンの登場シーンやキャラクター描写も増えています。
大きな変更点の一つは、七番街プレート崩落前後のエピソードです。オリジナル版では曖昧だったエアリス拉致の経緯が、リメイク版では具体的に描かれました。
エアリスがマリン(バレットの娘)をエルミナの家に送り届けた後、ツォンがその場に現れます。ここでエアリスは「自分が神羅に戻る(出頭する)代わりにマリンを助けてほしい」とツォンに提案し、ツォンはそれを受け入れます。
結果として、ツォンはエアリスを任意同行させる形で神羅ビルへ連れ帰り、マリンをエルミナの元から安全な場所(伍番街スラムの秘密隠れ家)へと避難させました。この追加シーンにより、ツォンはエアリスとの交渉ができる冷静さと紳士的な一面を見せています。マリンという幼い子供の保護を優先した判断からは、ツォンの人間味や柔軟さが感じられ、オリジナル版での強引な拉致の印象が和らげられています。
また、七番街プレート支柱での対峙シーンにも細かな違いがあります。リメイク版ではクラウド達が支柱内部でレノ&ルードと戦闘した後、崩落寸前の中でエアリスがマリン救出に奔走する描写が追加されました。その際、ツォンは上空のヘリからエアリスに無線通信で呼びかけ、落ち着いて行動するよう促しています。
崩落後、クラウドが廃墟となった七番街でツォンの乗ったヘリを目撃し追跡する場面もありますが、そこでは直接の戦闘には至りません。
ツォンはクラウドに対し「これ以上のかくれんぼは終わりだ」と告げ、去っていきます。このように、リメイク版ではツォンがクラウドたちと対面して言葉を交わすシーンが追加され、存在感が強化されています。オリジナル版では顔を合わせなかった状況で会話が発生している点は、キャラクター同士の関係性に新たな厚みを持たせました。
性格描写の変化としては、リメイク版のツォンはオリジナル版に比べて若干マイルドかつ寛容な印象があります。先述のようにエアリスとの取引に応じたり、マリンを気遣ったりする姿は、冷徹なエリートというよりは状況を見極め柔軟に対処する理知的な人柄を感じさせます。
これはオリジナル版でも内包されていた要素ではありますが、リメイクにおける描写でより前面に出たと言えるでしょう。
一方で、任務においては非情な決断も辞さない厳格さは健在であり、必要とあればエアリスを平手打ちするほどの覚悟(実際リメイク版では平手打ちシーンは直接描かれていませんが、厳しい態度は垣間見えます)を持っています。冷静さと人間味のバランスが、リメイク版ツォンではより丁寧に表現されているのです。
さらに、リメイク版のグラフィック強化によってビジュアル面の印象も大きく向上しました。
モデリングの精細さにより表情の機微が伝わりやすくなり、例えばエアリスと対峙した際の目線の動きや一瞬見せる哀しげな表情など、細かな演技が感じ取れます。
これは声優・諏訪部順一さんの演技とも相まって、ツォンという人物像にリアリティを持たせています。ファンからも「リメイク版のツォンは優しくなったように感じる」「表情が柔らかい」といった感想が聞かれ、印象の変化が語られています。
物語上の役割としては、リメイク版パート1(ミッドガル脱出編)終了時点では、オリジナル版同様に一時退場する形になっています。
続編『FFVII リバース』では、原作では描かれなかったツォンとクラウドたちの直接対決などが実装されています。
リメイク版で明確に示唆されたツォンの立ち位置として、ルーファウス新社長の片腕という役割があります。ミッドガル脱出後、社長に就任したルーファウスの下でツォンが右腕として動いていることがセリフで触れられており 、原作では裏設定に留まっていた部分が表に出ています。
これは続編での神羅側の動きに絡んで重要になってくる伏線でしょう。おそらくツォンはルーファウスと共に北の大空洞(原作ラストダンジョン)にも赴くのではないかと予想されます(実は原作の没データにもツォンが大空洞で同行するプランがあったとされます。
総じて、『FFVII リメイク』でのツォンは、出番と描写が増えたことでキャラクター像がよりクリアに、そして魅力的に再構築されました。物語の改変が所々で起きるリメイク作品においても、ツォンの基本的な人格や立ち位置は尊重されつつブラッシュアップされている印象です。今後のリメイクプロジェクトでも、ツォンがどのように活躍し物語に関与していくのか、ファンから大きな注目が寄せられています。
声優情報とキャラクターへの影響
ツォンのキャラクターボイスを担当する声優・諏訪部順一さんについても触れておきましょう。諏訪部順一さんは業界でも人気・実力ともにトップクラスの声優で、その低く艶のある声質からクールな二枚目役や渋い男性役を数多く演じてきました。
諏訪部さんの代表作としては、先にも述べたように『Fate/stay night』のアーチャー役や、スポーツアニメ『黒子のバスケ』の青峰大輝役、さらに『僕のヒーローアカデミア』の相澤消太(イレイザー・ヘッド)役や『呪術廻戦』の両面宿儺役などが挙げられます。
いずれもクールで存在感のあるキャラクターばかりで、諏訪部さんの声が持つ説得力と色気がキャラの魅力を引き出しています。近年では『ユーリ!!! on ICE』のヴィクトル・ニキフォロフ役も話題となり、幅広い世代のファンから支持を受けています。
ツォン役としての諏訪部さんの演技は、まさに当たり役と言えるものです。もともとPS1時代の『FFVII』本編にはボイスが無く、2005年の『FFVII AC』で初めてツォンに声が付与されました(※当初は声優・鈴木省吾さんが担当)。
しかし『CCFFVII』やリメイク版では諏訪部順一さんが新たに起用され、以降ツォン=諏訪部ボイスが定着しました。諏訪部さんの落ち着いた語り口やセリフ回しによって、ツォンの知的で冷静な雰囲気がより一層際立っています。特に感情を抑えた場面での抑揚の少ない声から、エアリスに語りかける際にふと滲む優しさまで、繊細な演技が光ります。
ファンからも「声がキャラにマッチしている」という評価が高く、「諏訪部ツォン」の人気は非常に高いです。例えばリメイク版発売時には「ツォンの声が色っぽすぎる」「諏訪部さんのおかげでツォンがさらに好きになった」といった声がSNS上に多数見られました。
また、諏訪部さん自身もFFシリーズのファンとして知られており、ツォン役に対する愛着をイベント等で語っています。こうした声優とキャラクターの相乗効果も、ツォンの魅力を支える要因の一つでしょう。
まとめると、諏訪部順一さんという実力派声優の起用はツォンというキャラクターに大きな恩恵を与えました。彼の声と演技によってツォンの魅力は倍増し、ファンの記憶に残るキャラクターとなったと言えます。声はキャラクターの命とも言われますが、ツォンの場合まさにその通りで、今や諏訪部ボイス無しに語れない存在となりました。
キャラクターデザインとビジュアルの変遷

ツォンのキャラクターデザインは、一見するとシリーズ通して大きな変化はないように思えます。黒いスーツに白いシャツとネクタイというビジネスライクな出で立ちで、長い黒髪を持つ東洋風の美男子──これが基本スタイルです。しかし、実際には登場作品の時代や設定に応じて細部のデザインが変えられており、成長や心境の変化がビジュアルにも表現されています。
初登場となるオリジナル版『FFVII』では、低ポリゴンながら公式イラストなどでツォンの姿が示されました。肩より下まで伸びたストレートの黒髪を下ろし、前髪をきっちりオールバックにしています。
黒のスーツは神羅タークスの制服でもあり、ツォンも例に漏れず着用しています。
このスーツ姿は以後の作品でも踏襲され、彼のトレードマークとなりました。冷静沈着な性格を表すかのようにネクタイもきっちり締め、装飾品などは付けないシンプルな装いです。身長はクラウドたちより頭一つ高く、立ち姿も背筋が伸びて端正。オリジナル版では3頭身ほどのデフォルメキャラでしたが、公式絵を見る限りスマートで知的な青年というイメージが造形からも伝わります。

前日譚の『BCFFVII』や『CCFFVII』では、年代的にツォンが若いこともあって髪型に変化が付けられました。具体的には、髪を後ろで束ねるポニーテールスタイルになっており、少し幼さ・初々しさを感じさせます。後ろ髪を纏めて額をしっかり出すことで表情がよく見えるデザインで、これは任務中の真剣な顔つきを描くのに適していました。
『BC』特別章のビジュアルでは、スーツ姿に加え革製のホルスターやベルトなど実戦的な小物も装備しており、当時の荒削りな雰囲気を醸し出しています。『CC』でも基本的な服装はスーツですが、海辺の任務シーンでは日差しにネクタイを緩めるなど細かな差分も描かれました。

また、『CC』及び派生作品で雪山に赴くシーンでは、氷点下の環境にも関わらずお構いなしにスーツ姿だったため「異様すぎる」とネタにされるほどでした(ただし同行者もノースリーブだったりするので、逆にツォンが一番まともというツッコミもあります)。
いずれにせよ、若き日のツォン=髪を結んでいるというビジュアル上のわかりやすい特徴があり、ファンの間でも年齢を見分けるポイントになっています。
興味深いのは、『FFVII』本編(ミッドガルでの任務)に入る直前に髪をほどいたとされる点です 。『BC』の終盤でバレットら初代アバランチが壱番魔晄炉襲撃を起こした際、ツォンは髪を下ろして現場に臨んだと語られています。
以降、本編時のツォンはロングヘアをそのまま垂らした姿となり、こちらが我々に馴染み深い姿となりました。この変化には明確な公式説明はありませんが、任務への決意表明や上司ヴェルドとの決別など、象徴的な意味合いが込められているのかもしれません。
服装については基本スーツ姿に大きな変更はありませんが、小物や細部で差異があります。例えば、タークスメンバー共通で付けている襟章バッジの形状や、ACでのコート着用、リメイク版でのイヤーピースの有無などです。ACではツォンは黒のロングコートを羽織っており、防寒と威厳を兼ね備えた出で立ちでした。
リメイク版ではスーツの質感やシワまで精緻に再現され、よりリアルな存在感を持っています。キャラクターデザインは野村哲也氏らが担当していますが、タークスの統一デザインの中でツォンには「リーダーとしての端正さと影のある雰囲気」が与えられたと語られています(開発スタッフインタビューより)。その意図通り、ツォンのビジュアルは直立不動の姿勢や隙のない身だしなみなど、リーダーらしさを端々に感じさせるものとなっています。
興味深い点として、ツォンの容姿や名前からは東洋人(アジア系)のイメージが連想されます。
実際、ファンの間では「ウータイ(東洋風の国)出身では?」との憶測もありましたが、公式には出身地不明のままです。ただ、リメイク版ではウォールマーケットのマダムMなど他に明確に東洋テイストの人物が登場したため、ツォンも「明確にアジア系の顔立ちをしたキャラ」として位置づけられた感があります。
モデル的には中国や日本の血を引くような端正な顔つきで、これはタークスメンバーで唯一の特徴となっています(レノやルードは欧米系の風貌)。おそらく意図的な差別化でしょう。野村氏のデザインワークスでも、髪型や目元の描き方でそれぞれの民族風特徴を出していると語られており、ツォンは切れ長の目や黒髪ストレートなど典型的な東洋人の特徴を付与されています。
全体として、ツォンのデザインは「シンプルさの中に個性を宿す」巧みなものです。黒スーツという没個性的な衣装でありながら、髪型や表情でしっかり彼のキャラクター性が表現されています。年月を経てもデザインの根幹は崩さず、細部で変化をつけることで成長や環境の変化を示す——こうした地味ながら練られたデザインの変遷が、ツォンというキャラクターを長年に渡り我々の記憶に残し続けているのです。
物語全体におけるツォンの役割と影響
最後に、ツォンというキャラクターが『FFVII』の物語全体において果たす役割と、その影響についてまとめます。彼は主人公ではなく、どちらかといえば敵側組織の幹部という立ち位置ですが、物語の裏舞台で重要な決断を下し、時にストーリーを動かすキーパーソンとなっています。
まず、『FFVII』序盤においてツォンがエアリスを神羅に連れ帰ったことは、物語の大きな転換点となりました。エアリスが神羅に捕まったことで、クラウド達は彼女を救出するために初めて神羅ビル(ミッドガル中心部)へ乗り込み、そこでセフィロスによるプレジデント殺害やジェノバの存在など一連の事件を目の当たりにします。もしツォンがあの場でエアリスを確保していなければ、彼女はそのままアバランチと共に逃亡生活を送ったかもしれず、クラウド達が神羅の闇に触れるタイミングも大きく変わっていたでしょう。つまり、ツォンの決断(エアリスを連行する)が物語の方向性を決定付けたとも言えるのです。
中盤の古代種の神殿での出来事もまた然りです。ツォンは神羅の命令で黒マテリアを求め神殿に向かいましたが、結果的にセフィロスに倒されてしまいます。
これにより、神羅側は黒マテリア争奪戦から一時脱落し、代わりにクラウド達が黒マテリアを入手する運びとなりました。しかしそれがクラウドの精神操作(セフィロスの策略)に繋がり、最終的にセフィロス復活を許してしまいます。
ツォンがもし負傷せずに黒マテリアを神羅が確保していたら、また違った展開になっていた可能性があります。例えば、神羅が黒マテリアを独占していたらメテオ発動が阻止できたかもしれませんし、逆に別の形でセフィロスに奪われたかもしれません。いずれにせよ、ツォンの戦線離脱はストーリー展開に直接的な影響を与え、結果としてメテオ破滅の危機へと繋がっていきました。
さらにツォン不在となった後のタークスの動向も、物語に微妙な変化をもたらしています。
ツォンに代わって実質的にレノやルードが現場指揮を執るようになり、彼らはミッドガル脱出後もクラウド達の前に立ちはだかります。
しかし、ツォンほどの執念はなく、任務と私情の狭間でコミカルな失敗をする(例えばイリーナがクラウドに仕返ししようとして転んでしまう)など、どこか憎めない描かれ方をしています 。
これは、もしツォンが健在であればよりシリアスな対立になっていたであろう場面が、幾分か緩和されたとも考えられます。
実際、ゲーム終盤ではタークスはクラウド達との直接対決を回避する選択肢も取り(プレイヤーの行動次第では遭遇戦を避けることが可能)、それはトップ不在ゆえの判断の揺らぎとも言われます。ツォンという柱が抜けたことで、タークスの行動原理にも影響が出たというわけです。
『AC』まで視野を広げると、ツォンの生存と復帰がルーファウスの再起に大いに貢献しています。メテオ後の世界で、ルーファウスはごく少数の腹心(ツォン達タークス)だけを頼りに行動していました。ジェノバの首を追い求めたルーファウスの計画は、ツォンとイリーナがカダージュに捕らわれてしまったことで一時暗礁に乗り上げますが、最後はツォンらが再合流し彼を護りました。
仮にツォンが死亡していたら、ルーファウスはあそこまで大胆な計画を実行できなかったでしょうし、生き延びることも難しかったかもしれません。ツォンの存在が、神羅の生き残り勢力を支える鍵となったのです。
また、ツォンは「神羅にも情のある人間がいる」ことを象徴するキャラクターでもあります。完全悪として描かれがちな神羅陣営において、ツォンの描写はある種のバランスをもたらしています。エアリスやザックスへの思い、部下への優しさなどを垣間見せることで、敵側にもドラマが生まれました。これは物語全体の厚みにつながっており、勧善懲悪の単純な構図ではない『FFVII』の魅力に貢献しています。
もし神羅側がハイデッカーや宝条のような非情な人物ばかりだったら、作品の印象は大きく異なるでしょう。ツォンやレノたちタークスの存在が、敵にも人間らしさがあるという多面性を物語にもたらし、それが結果的にプレイヤーの感情移入やストーリーの深みを増すことに繋がっています。
さらに、ツォンは本来交わらないキャラクター同士を繋ぐ媒介役ともなっています。
例えば、ヴィンセント(元タークス)との接点は直接は描かれませんが、『AC』でヴィンセントがツォンとイリーナを救出するシーンは、かつて神羅に所属した者同士の不思議な縁を感じさせます。
また、小説『The Kids Are Alright』(邦訳「タークス 真昼の悪夢」)では、ツォンが新米私立探偵エヴァンと接触し事件解決に協力するエピソードが描かれています。こうしたクロスオーバー的な展開にもツォンは登場し、物語世界を広げる役割を担っています。
以上のように、ツォンは表立っては語られない部分で『FFVII』の物語に多大な影響を与えています。彼の行動や決断一つひとつが、結果的に星の運命を左右する出来事に繋がっている点は注目に値します。ツォン自身も、自らの立場や信念に悩み葛藤しながらも最善と思う選択をしており、その積み重ねが物語を陰から動かしてきました。まさに「縁の下の力持ち」として、『FFVII』という大河ストーリーの一翼を担っているのです。
ツォンというキャラクターを詳細に見てきましたが、彼は単なる脇役以上の存在感と重要性を持つ人物であることがお分かりいただけたでしょう。神羅カンパニーという巨大組織の中で信念を貫き、時に苦悩しながらも己の務めを果たす姿は、多くのプレイヤーの心に残るものでした。今後のリメイクプロジェクトや派生作品でも、ツォンがどのように描かれていくのか期待が高まります。その静かなる活躍に引き続き注目していきたいところです。